Column

九州学院高等学校(熊本)

2011.03.04

光星学院高等学校

九州学院高等学校 2011年03月04日

左・山下翼選手、右・下田勇斗選手

今年の“九学”

 昨年が沖縄・興南、一昨年が長崎・清峰、さらにその前が沖縄尚学とここ3年連続で九州勢がセンバツを制している。
ある意味、今回のセンバツは九州勢にとって春の4連覇がかかっているということにもなる。そのセンバツに出場する九州勢の有力校・九州学院を紹介しよう。

 学校創立、そして創部100周年―。
その大きな節目となる今年、九州学院硬式野球部はそれを祝うかのようにセンバツ出場を決めた。昨夏の甲子園ベスト8のレギュラーが5人、さらにベンチ入りメンバーも含めれば8人が残るなど大舞台での経験値は高い。

 その半面、その甲子園で勝ち上がったことによって新チームの始動が遅れることを余儀なくされた。
新チーム結成後、短い準備期間の中、わずか8試合の練習試合をこなしただけでいきなり秋の熊本大会に臨んだ。さらに大会期間中には千葉国体もあり、主力メンバーや首脳陣もドタバタだった。そんな状況下でありながらも、熊本大会で準優勝すると続く九州大会では、昨春のセンバツから公式戦無敗を誇る興南を撃破し(2010年10月26日)、ベスト4に進出。準決勝では優勝した鹿児島実に惜敗(2010年10月28日)したもののその実力が評価され、甲子園夏春連続出場を決めた。

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萩原英之選手

 今年のチームは走攻守のバランスが取れており、総合力が高い。昨夏の大舞台で魅せた50メートル5秒8の山下翼を筆頭に上位から下位まで全員が走れるといっても過言ではない走力が最大の武器。まさに“スピード軍団”だ。

 センバツへの原動力となった1年生左腕・大塚尚仁を始め、昨秋の興南戦で好リリーフをみせた岩橋昂樹、さらに秘密兵器として1年生の伊藤奨太も控える。伊藤は130キロ後半のスピードを誇る右腕。昨秋の公式戦での登板経験はないが、この冬に急成長を遂げており、センバツでは鮮烈デビューを果たす可能性も十分にあり得る。

 そしてその投手陣を強気のリードで引っ張る坂井宏志朗の存在も大きい。旧チームから不動の司令塔で、その高い経験値だけでなく、部員をまとめあげるキャプテンシーにはナインはもとより首脳陣も厚い信頼を寄せる。

 昨夏、清原和博(PL学園)以来の1年生4番アーチを放った勝負根性溢れるスラッガー萩原英之を軸に攻撃陣は厚みがあり、打と足を絡めたコンビネーションが決まりだせば、春風に乗ってトーナメントを一気に駆け上がる可能性も十分あり得る。

 そのチームの指揮を執るのが、坂井宏安監督、53歳。98年から2000年にかけて夏の熊本大会三連覇を達成するなど幾度も同校を甲子園へと導いた名伯楽である。
 さらに参謀役である平井誠也部長の存在も大きい。熊本工大(現・崇城大)時代に主将を務めるなど4年間で3度の神宮出場を果たした強打の名外野手で大学を卒業した95年から同校のコーチに就任。その後、一旦は九州学院中学野球部(軟式)の監督として中学生の指導にあたったが、一昨年の全中(全国大会)終了後の09年9月から再び高校の指導者に復帰した。

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シート打撃

冬を越えて

 「カーンッ」
盆地に乾いた打球音が響き渡る。どの選手をみても一回り大きくなった上にパワーとスピードがついてきたことが一目でわかるような打球だ。
昨秋の九州大会終了後は、選手の疲労回復を第一に考え、全く練習試合を組まずに練習を行った。それでは、その長い冬の間どのような練習をしてきたのだろうか。

 「冬は『下半身の強化と柔軟』この二つを大きな課題にした」(坂井監督)

 まず、下半身強化としては、選手たちが「地獄のトレーニング」というクロスカントリー。

 グラウンド横にあるアップダウンの激しいコースで来る日も来る日も走り続けた。それに加え、タイヤやハードルを利用したトレーニングで徹底的に下半身を鍛え込んだ。柔軟はというと約20キロほどの丸太を抱えてのまた割り。それは柔軟の意味だけでなく同時に強靭な下半身の強化にもなっている。
そこで坂井監督にこの冬、特に伸びた選手は誰ですかと聞いてみた。

下田勇斗選手(2010年秋季九州地区大会)

 「下田が力強くなってきたね」。

2番でライトの下田勇斗である。1年秋から場数を踏んでおり、足が速く、小技ができる“いぶし銀的存在”の選手である。

 「タイヤ押しなどのトレーニングで自分でも下半身が大きくなったと思います。あと体重も3キロ増えたんですよ」(下田)

その下半身ができてきたことに加え、指揮官の指導でコツをつかんだ。

 「(バットを)振る瞬間にかかとをつけるという感覚がわかるようになってから打てるようになりました」(下田)

シート打撃をみていて、いい意味で下田の打球に目を疑った。芯でとらえた打球が左中間方向へグングンと伸びていく。昨秋からの大変身に「本当に下田?」と見違えるほどである。

 「(下田は)かなり力がついていますね。逆方向へも鋭い打球が飛ぶようになりました」とチームメイトもその成長に目を細める。

 50メートル6秒1という俊足を誇り、昨夏もスピード軍団に名を連ねたが、甲子園では4試合で盗塁ゼロ。しかし、自ら「盗めるようになった」というようにこの冬の走塁練習での盗塁のカンもつかんだ。さらに、一塁までの到達タイムやベースランニングのタイムも速くなっているのだからその成長はとどまるところを知らない。
いい意味で嫌らしい野球ができるところは玄人好みであるし、何事も颯爽にこなし、無駄に力の入っていないプレーは、誰が見ていても気持ちがいい。スケールアップした2番がどんなプレーをみせるか。“いぶし銀の演出家”にも是非注目したい。

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九州学院ナイン

いざセンバツへ

 センバツで予想されるスタメンは、
1・山下翼(中)
2・下田勇斗(右)
3・溝脇隼人(遊)
4・萩原英之(三)
5・岡山士朗(一)
6・坂井宏志朗(捕)
7・田村拓也(左)
8・大塚尚仁(投)
9・木山泰平(二)

坂井監督が「もともとの構想通り」というように昨秋、3番を打っていた山下が、センバツでは1番を予定している。

 「どうにかして塁に出て、走って走って。チームに勢いをつけることが役目です」(山下)。

 1番・山下が出て、足で撹乱し、さらに続く2番・下田が小技と走力を絡めてくるかと思えば、大技もある。それだけでもソワソワしてしまうようなプレッシャーが相手チームを襲う。
さらに3番・溝脇、4番・萩原・・・と相手チームは息つく間もない。

 「センバツではチームが勝つために打点を稼ぎたい」という4番・萩原。昨夏の甲子園弾で注目されたが、そのことについては「打点を稼ぐことが自分の役目ですが、打点を稼ぐ一つの手段としてホームランも」と密かに狙っているようにも感じられる。

田村拓也選手(2010年秋季九州地区大会)

 さらに昨夏のメンバー外で初めての大舞台に臨む外野手の田村拓也にセンバツではどういうプレーをしたいかを聞いた時、いい意味で意外な答えが返ってきた。

 「チームを引っ張っていきたい」

 外野から内野に声をかけるなど自分のできることでチームを引っ張っていく。そんな想いが以心伝心しているかのように同じく初の大舞台に臨む木山、岡山らも臆することはない。
昨秋、公式戦と練習試合を含めて18試合と、今チームとしての実戦経験は少ない。今春の練習試合解禁後も実戦は鳥栖とのダブルヘッダーを皮切りに佐賀工延岡学園だけ。

 そして関西入りしてからも大商大堺との試合くらいしか組まれていない。ちなみにダブルヘッダーといっても全試合でレギュラーメンバーが出るとは限らず、実質的には対外試合4試合だけに本番に臨むこととなる。
昨夏の甲子園を経験しているが、ある意味で未知なる可能性を秘めている九州学院がいよいよセンバツに乗り込む。

 「春は投手力といわれるが、いかにエラーを少なくするか。そこが大きなポイント」(坂井監督)。

その堅実な守備と脅威の走力、さらに昨秋に見せた対応能力を発揮することができれば“紫紺の大旗が再び九州へ”そんな可能性も十分あり得る。

(文=PN アストロ)

■ 九州学院 選抜特集ページ

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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