Column

県立所沢商業高等学校(埼玉)

2010.07.07

「野球部訪問」

第7回 県立所沢商業高等学校 
2010年07月07日

加盟校4132校。
全国の高野連の加盟校数である。(2009年5月時点)
様々な環境の下、全国でこれだけの高校で球児達が毎日白球を追いかけている。
「野球部訪問」は、全国津々浦々、様々な野球部を訪問。
頑張っている球児や指導者の高校野球への取り組みを紹介していく。
第6回は埼玉の所沢商業高等学校です。

夏静かに挑む4度目の戦い!

【所沢商業:集合写真】

埼玉県立所沢商業高等学校(若林章一校長)。埼玉・所沢市に1969年創設。
「資格を活かし未来を拓く商業高校」を掲げ、情報処理科、ビジネス会計科、国際流通科の3学科の共学校で生徒数720名。
県立校としていち早くコンピュータを導入しIT教育に力を入れている。
野球部は1971年創部、現在部員65名。わずか5年で甲子園出場を果たし、プロ野球界に11名もの選手を送り込んでいる県立の名門校。
高校野球の強さは地元でも有名であり、過去3度の甲子園出場実績がある。

3度目の出場(第65回全国高等学校野球選手権大会)で、桑田(元プロ野球・巨人)・清原(元プロ野球・西武/巨人/オリックス)
のPL学園の黄金世代と初戦で対戦している。

【甲子園戦歴】

1978年 第60回記念全国高校野球選手権大会 1回戦 所沢商 9 2 小城
1978年 第60回記念全国高校野球選手権大会 2回戦 仙台育英 4 1 所沢商
1983年 第65回記念全国高校野球選手権大会 1回戦 PL学園 6 2 所沢商

【練習試合】

最近は甲子園出場の機会は私立高校に奪われているが、2004年には夏大会では決勝戦まで勝ち進み、古豪復活の予兆が見られる。県大会でも上位の成績を残しており、公立高校の中では現在も実力校の一角にある。
埼玉県は大阪、神奈川、愛知、千葉、兵庫県に次いで参加校数の多い地区であり、決勝までの試合数が多く、梅雨時の天候が災いし、連戦のハードなスケジュールも多く見受けられる。

現在の高校野球は全国的に私立優位の状態が続いているが、埼玉県も同じ。
地理的に隣接する東京都の影響を受け、都内の私立高校に有力選手が進学し、結果として公立の高校が勝てないという現実もある。

特に東京に近い南西部の地域では私立高校が強く、都心から離れた北部地域の高校は公立の高校が健闘している。
埼玉大会は、単独では1995年の越谷西、東西別大会では1998年の滑川以来、公立高校の優勝はないが、春日部東(2001)、坂戸西(2002)、所沢商(2004)、鷲宮(2005)、上尾(2008・北埼玉)などが健闘し準優勝をするなど、現在も公立高校が存在感を示している。

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監督は、福地利彦。50歳。

【福地利彦監督(所沢商)】

監督は、福地利彦。50歳。
隣の狭山市出身で、小学生から部活動として野球をはじめ、地元名門の所沢商業野球部に入り才能を一揆に開花させた。
1978年の第60回記念全国高校野球選手権埼玉大会に優勝した時の主将兼エース。
甲子園の初戦に9-2と初勝利を飾り、念願の校歌を甲子園のグランドに響かせた。
卒業後、早稲田大学に進み、教師として2002年に母校の野球部監督に就任した。

【就任以来の成績】

2002年 84回大会 準々戦 浦和学院(優勝) 4 0 所沢商
  決勝 埼玉栄 7 6 所沢商
  3回戦 共栄 9 2 所沢商
2003年 85回大会 4回戦 春日部共栄(準優勝) 1 0 所沢商
  1回戦 羽生 6 4 所沢商
  3回戦 共栄 9 2 所沢商
2004年 86回大会 決勝戦 浦和学院(優勝) 6 2 所沢商
  準々戦 大宮西 3 0 所沢商
  準決勝 浦和学院 7 0 所沢商
2005年 87回大会 5回戦 浦和学院 7 1 所沢商
  地区代表戦 川越 3 2 所沢商
  3回戦 昌平 6 0 所沢商
2006年 88回大会 2回戦 川越東(延長11回) 8 7 所沢商
  準決勝戦 鷲宮 2 1 所沢商
  地区1回戦 大井 6 4 所沢商
2007年 89回大会 4回戦 川越東 8 7 所沢商
  地区代表戦 富士見 5 2 所沢商
    栄東 3 2 所沢商
2008年 90回大会 1回戦 狭山経済 8 7 所沢商
  1回戦 成徳大深谷 6 2 所沢商
  3回戦(延長10回) 川口青陵 5 4 所沢商
2009年 91回大会 3回戦 立教新座 6 0 所沢商
  3回戦 埼玉栄 6 1 所沢商
  地区1回戦 武蔵越生 3 0 所沢商
2010年 92回大会 1回戦 正智深谷 10 4 所沢商

        
        
        

【練習試合】

現役時代は、厳しく、時には鉄拳制裁も厭わない熱血監督に鍛えられ、持ち前の反骨精神で才能を伸ばした。
怒られる悔しさを人一倍抱いていた。「何時か必ず見返してやる・・」この想いが甲子園へ続く、連日の泥まみれの厳しい練習
を乗り越える原動力になった。
3年生の夏大会の直前に「責任と自覚を持たせる狙い=監督」と主将に選ばれ大会の臨んだ83校が参加した第60回埼玉大会。
決勝で、私学の強豪立教を4-2で破り2年ぶり2回目の甲子園出場を決めた。
甲子園では、初出場時の初戦敗退を見事リベンジ。佐賀県代表の小城高校を9-2で下し念願の甲子園行初勝利を果たした。

監督就任以来、準々決勝、4回戦と順調にチームを育て、次こそ優勝と意気込んで望んだ3年目の2004年の86回大会。
決勝戦の相手は当時県内無敵、甲子園常連の浦和学院
連戦連投のエースに疲労の影が見えた隙を付かれ序盤で6-0と先行された。7回に反撃2点を返したが、力尽きた。4回以降無得点に抑え、打線も8安打と健闘を見せた戦い観客から大きな声援が沸いた。
表彰式後に、悔し涙を乗り越えた選手が優勝した浦学ナインと笑顔で記念写真に収まる光景は、決勝戦でも滅多に見られない姿だった。
翌年も5回戦で浦和学院に敗退。以降4回戦を最高に低迷期を迎えた。

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食事に空手

【絶対完食!!】

練習の合間に「おにぎり」。選手達は、大きな「おにぎり」の山に手を伸ばす。2004年夏の県大会決勝で、強豪私学の浦和学院に敗れて以来、毎日繰り返されてきた。

気温30度を超える猛暑の中160校以上が参加する激戦区の埼玉県大会。準決勝を圧勝しながら、7試合目の決勝戦で力尽きた経験から、「夏を戦い抜くスタミナと体力」と考えた。

「何もしなければ、私学との差は広がるだけ。できることは何でもやる」。

独学と工夫を重ね、栄養士のアドバイスも受け、結論は「米でしっかりカロリーを取る」。年末には、校内の合宿所に選手の親を招き、3泊4日の「食育合宿」を行い、栄養士から食事の重要性を受け、家庭での食事作りも指導した。合宿中、選手はコメを中心とした食事で、通常の3倍近い1日6000キロ・カロリーをとった。
その後一冬を越し、何人もの選手の体付きが変わり、パワーアップした。

さらに、空手を練習に取り入れた。空手は「股関節の使い方が守備にも打撃にも通じる」と考えた。選手達は、「空手と野球」に戸惑いながらも、半年間で走塁タイムを短縮し、打球の飛距離も伸ばした。
この伝統は今も続き、父母(父母会長・小高博司)は、試合のたびに白飯は2合以上も入るお弁当を持たせ、
蓋には完食をチェックするシールを貼り、残さず食べる事を進め、選手を食の面でも応援している。

さらに伝統校の強みか、同校には“後援会”として応援してくれる熱心な地元ファンがいる。

「もう一度甲子園で所沢商を応援したい」と、グラウンドの草むしりやフェンスの修繕など、裏方として支援している。時には厳しい指摘もあるが、野球部を愛し大切の想う熱い気持ちが伝わってくる。

ワクワク

【練習試合】

地元出身者○中心のチーム作りが基本の所沢商業には厳しい環境が続いている。 

今の子供は怒られる事に慣れていない。「何を!」と反発する子が少ない。
自分の時代と違い、悔しさを表に出さない生徒達に悩んだ。 大人しく素直な子が多いが、真の意志の疎通が出来ないと、戸惑いもあったが、
「勝つ事の喜びを味あわせたい。意気に感じる感動を体験させたい」。想いは続いていた。

今年になり、「目標は優勝だが、まずは自分たちが納得できる結果を出そう」。との意識に微妙に変ってきた。
久しぶりに野球が楽しく、ワクワクすると監督が言う。

5月の連休後あたりから、良い意味での開き直りが出てきた。欲を出さずに出来ることを確実に試合に出そう。
各自が自分が練習で習得した技術をそのまま素直に試合で出せれば結果に繋がる。
野球は我慢が大切、皆が協力して成り立つスポーツ。自分の力をチームに活かすことが最高の結果を生むことになる。

【胴上げをする所沢商業ナイン】

先日の練習試合。終盤1点リードされた場面、2死2-3塁のチャンス。投球は打者の足元に
バウンドしボールが逸れた。死球かと思ったが主審のコールは無し、これを見た三塁走者は一気にホームへ滑り込んだ。 

結果は、判定死球で走者は戻されたが、インプレーと判断し果敢にホームを狙った姿勢は大切にしたい。
日ごろの練習で身についた成果が垣間見えた。 

まだまだチームとしての力不足は否めないが、前向きに戦う気持ちが出てきたことは期待できる。

納得

【県立所沢商業高等学校】

3年の学年主任も兼ねる監督は、卒業生のいる会社訪問の祭に、「野球部の生徒は礼儀、挨拶、忍耐力」など褒められると
笑顔を見せる。

4月に新任した校長は、自転車通学の生徒の中に、立ち止まりスタンドを立て正対して挨拶をする生徒に驚いたと言う。後で解ったが、その生徒達は皆野球部員だった。

 伝統校の良さを受け継いでいる子供達。かけがいの無い仲間と野球が出来るのは残り1ヶ月余りの3年生。
大人しい素直な良い子だけでは勝てないのが高校野球。
熱い中の厳しい練習に耐えた成果を自分自身が納得できる結果に結びつけて欲しい。
(文中敬称略)


この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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