滋賀県の高校野球では、昨年のセンバツで準優勝した近江の活躍が目立っている。それに触発されるかのように、他校もレベルを上げ、今夏は混戦が予想される。
その中で甲子園初出場の期待がかかるのが立命館守山だ。創部は2016年と歴史は浅いが、社会人の新日鐵住金かずさマジック(現・日本製鉄かずさマジック)のコーチとして2013年の日本選手権優勝を経験している秋武祥仁監督の下で着実に力を付け、2019年秋に近畿大会に初出場。夏の滋賀大会では一昨年から2年連続準優勝と甲子園まであと1歩のところまで来ている。
完全下校は午後7時 練習の質を徹底的に求める

有名大学の付属校であり、近年の戦績を考えると、恵まれた環境で練習しているのではないかと想像する人も多いだろう。だが、現実として立命館守山は野球部のグラウンドがない。学校のすぐ近くにある守山市民球場で練習できる日もあるが、使えるのは週に3回ほど。それ以外の日は学校にある4か所の打撃練習場を使った打撃練習やトレーニング、ランニングといった練習が中心となる。
また、完全下校が午後7時と決められていることもあり、平日の練習時間は約2時間。「他の高校よりは練習時間が短いので、その分、質の高い練習を追い求めてやっています」と主将の小畑 颯諒内野手(3年)が言うように他の強豪校よりも制約が多い中で結果を残してきた。秋武監督は練習の質が上がったことが戦績の向上に繋がっていると話す。
「環境はこれ以上良くしていきたいと思いますけど、与えられた環境と時間の中でどれだけ質の高いものができるのかというのは、創部当初からの課題として取り組んでいること。その質が確実に上がっているなという感じはします」
近年の好成績により、中学時代に実績のある選手の入部も増えてきた。「チーム内の競争は初めて近畿大会に行った時より比べ物にならないくらい高まっている」と秋武監督は選手層に厚みが増してきたことを実感している。
特に力があるのが2年生。杉本 倫太郎投手は最速140キロの速球を投げる本格派右腕。秋以降は滋賀県を代表する投手になっているだろう。
4番として打線の中心を担う田中 暖人内野手は中学時代に大阪桐蔭(大阪)の徳丸 快晴外野手(2年)らとともにカル・リプケンワールドシリーズU-12日本代表に選ばれた実績を持つ。鋭いライナーを打てる右打者で、安定して結果を残している。
3年生にも実力者が揃う。昨年からエースナンバーを背負う加藤 優芽投手は球速があるタイプではないが、回転数の多い直球を投げ、フライアウトを量産する。
主将の小畑は堅実な守備が持ち味の内野手。春は遊撃手で出場していたが、現在は二塁手にコンバートされている。
熊井 啓太内野手も昨年からレギュラーとして公式戦に出場していた。秋は捕手を務め、春は3番三塁手としてチームの中核を担った。
さらに春までのレギュラーに加え、1年生も数人がレギュラー争いに加わるなど、「夏にはスタメンで使えそうな選手もいる」と秋武監督は1年生の起用を示唆。夏は今までと違ったメンバーになっているかもしれない。
近年は安定して上位に進みながらもあと1歩が遠い。何か打開策を考えたいと思ってもおかしくないが、「何かを大きくやり方を変えて最後の1つをというわけではなくて、これまで積み上げてきたもので勝負したいなと思っています」と秋武監督はこれまでの方針を変えることなく甲子園を目指している。