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中日ドラ1が誕生した下町の公立校・都立葛飾野 三刀流で都立校初の甲子園勝利をつかむ

2023.03.09

 春季高校野球東京都大会と1次予選の組み合わせ抽選会が行われ、東京の各校の組み合わせが決まった。3月11日からは1次予選がスタートし、早くも4月からの都大会を目指す熱い戦いが繰り広げられる。

 下町の葛飾区亀有に学校を構える都立葛飾野も上位進出を目指し、選手たちは仕上げに入っているところだ。

最大目標は文武生活三刀流で都立校初の甲子園勝利

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ミーティングをする都立葛飾野

 都立葛飾野は、2021年のドラフト会議で、中日からドラフト1位指名を受けたブライト 健太外野手が過ごした学校である。現在の3年生が、当時1年生の冬場に挨拶に来たときは「身体が大きかった」など先輩の迫力が凄まじかったことを、印象に挙げる。同時に、高校時代のエピソードを聞き、いかに自主練習が重要なのか再確認したという。

 都立葛飾野にとって自主練習の時間は重要な要素だ。学校での練習は18時頃には終えて片付けとなる。練習時間に制限があり、かつグラウンドも練習をするには十分な広さではあるものの、試合をやるにはやや変則的な作りをしているため、基本的には相手校に出向くことがほとんどだ。

 練習環境に制限があるからこそ、選手自身が考えて野球に取り組む必要がある。事実、2022年は夏の東東京大会でベスト16入りした。出場校が多い東東京で、ベスト16は一定の成果が出ていると評価していいが、指揮官・才野監督は「考えて野球ができるようになった」ことを大きな要因に挙げており、練習の質を高める重要性を再認識した。

 質を高めるため、都立葛飾野では一貫した目標を立てられている。

文武生活三刀流で都立校初の甲子園勝利

 至る所に掲示物が張られていたが、必ず目標には、「文武生活三刀流で都立校初の甲子園勝利」が書き込まれていた。

 決して簡単な目標ではないが、選手たちは本気だ。取材日の練習中、選手たちが円陣を組むと、「目標はどこですか」という問いかけに対し、「甲子園」と返答するシーンが見受けられた。

 その後の練習でも合間では「それじゃあ甲子園でも勝てないぞ」と指摘する声も出ていた。チームを率いる主将・倉持 柊真内野手(3年)によると、日々の練習で欠かさずにやっていることだという。

 「秋の大会を終えてから、ただ声を出すのではなく、内容を求めるようにしました。今日も、甲子園というキーワードを練習中に出しましたが、これを毎日やることで、常に意識を持って取り組めます」

 練習時間、場所に限りがあるからこそ、いかにモチベーションを保ってやるか。どの学校でも課題となることだが、都立葛飾野に限って言えば、夢舞台を常に意識することが、スイッチになっているようだ。

[page_break:雰囲気で圧倒するチームで下町から甲子園へ]

雰囲気で圧倒するチームで下町から甲子園へ

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都立葛飾野の練習模様

 選手たちに応えようと、指導者の体制も整備されている。指揮官である才野監督を筆頭に、多くの指導者がおり、練習メニューも豊富だ。中学時代に才能が開花した選手ばかりではない都立葛飾野にとって、モチベーションを高めることはもちろん、練習を通じて個々の能力を高めることは、目標達成において、絶対的に必要な条件だ。

 その点で見れば、選手たちはあらゆる練習を積むことでレベルアップに結び付けられ、メンタルと技術の両方が上手くバランスが取れているのではないか。

 特に今年の世代は、「元気よく、さらに叱咤激励を意識している」とメンタル面に強みを持った下町らしさをウリにしている。倉持主将はもちろん、最速130キロを計測するエース・明石 柚希投手(3年)や、巧打の内野手として活躍しつつ、ときにはマウンドにも登る古屋 葵内野手(3年)などが中心となって、チームを引っ張る。

 ただ秋は地区予選で聖パウロ学園の前に敗れた。ベスト16に入った先輩たちがやってきたことを継続してきたものの結果を残せず、私学の前に敗れた。予選で負けてしまったために、長い冬場になったが、「順調に冬場を過ごせたと思います」と倉持主将は手ごたえ十分。才野監督も、「伸びている世代なので、楽しみです」と春以降の巻き返しに期待している。

 「まずは全員で私立高、強豪の都立高に立ち向かって、ベスト16を超えたいです。そのためにも雰囲気で相手を圧倒できるようにしたいです」(倉持主将)

 最後に春以降の目標を掲げた倉持主将。春の予選の初戦は都立西と対戦する。一冬越えた都立葛飾野が、再び下町・亀有から甲子園を目指す戦いが始まる。

(取材=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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