Column

名将の就任で常勝軍団に近づく東洋大姫路 名門復活へ改革進む

2023.03.04

 近畿地区で注目を集めている高校の1つに東洋大姫路(兵庫)が挙げられるだろう。兵庫県を代表する名門校の1つで春8回、夏12回の甲子園出場経験があり、1977年夏には全国制覇を成し遂げている。

 話題となったのが、昨年の監督交代劇だ。昨春の甲子園を最後に原 樹理投手(ヤクルト)や甲斐野 央投手(ソフトバンク)らを育てた藤田 明彦監督が退任。4月からは2019年夏に履正社(大阪)を全国制覇に導いたOBの岡田龍生監督が就任した。

 前回の取材から1年。名将を招聘して常勝チームを目指す東洋大姫路の変化に迫った。

名将就任でチームは大きく変わり始めた

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岡田監督

 まず設備面から大きく変わっている。6月に室内練習場とトレーニングルームが完成。さらに寮生の食事を管理栄養士にサポートしてもらうなど、学校側の支援も手厚くなっている。

 夏は2011年を最後に甲子園から遠ざかっており、センバツも昨年が14年ぶりの出場と、近年はなかなか思うように結果を出せていないのが現状だった。「10年以上甲子園に出られないということは僕がいる時代ではちょっと考えられない」と岡田監督も1人のOBとして危機感を抱いていたようだ。

 そんな中で、まず取り組んだのが選手との会話である。履正社時代も練習中にコミュニケーションを積極的にとるようにしていたが、それを東洋大姫路でも実践したのだ。

 「どういう考えでプレーに取り組んでいるのか、直接話をしないとわからないので、そういう時間をできるだけとるようにしました」

 また、岡田監督の代名詞といえば、高速テンポのノックだ。履正社時代に比べれば少し遅くなったようだが、それでも約2秒に1本のペースでノックを打ち続けており、徐々に岡田色が浸透している様子が感じられた。

 さらに主将の小野 洋介内野手(3年)によると、練習内容にも変化があったという。

 「藤田監督は守り勝つチームなんですけど、岡田先生になってからバッティング練習が増えて、バッティング強化に力を入れ出しました。バッティングのゲージも増やして頂いて、そこからまずセンター方向に返すことであったり、方向性というのを大事にしながら打つように言われました」

 近年の東洋大姫路22876投手を擁した昨年のように投手を中心に守り勝つ野球が特徴的だったが、岡田監督が就任してからは履正社のように打ち勝てるチームを目指そうとしている。

[page_break:かつての東洋大姫路の強さを目指す]

かつての東洋大姫路の強さを目指す

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露本一惺

 昨年のチームは春こそ準優勝を果たしたが、夏は4回戦で兵庫滝川相手に1対2で敗戦。打力不足に泣く結果となった。

 当時のレギュラーはほとんどが3年生。センバツでベンチ入りしていた2年生も左腕投手の内海 誠揮投手(3年)しかおらず、新チームは経験値が少ない状態からのスタートとなった。

 秋の大会は西播地区予選を2試合連続完封勝利で突破。しかし、県大会では初戦で明石商に1対4で敗れ、センバツ出場は絶望的となった。

 「12安打を打っても1得点しか取れなかったので、得点力の低さに課題を感じました」と語る小野。安打数こそ少なくなかったが、効率良く得点することができなかった。

 冬場に力を入れてきたのが体づくりだ。「どちらかというと、そこまで体づくりをやっていた高校ではありませんでした。せっかく施設もできましたので、トレーニングや食事、こういうことに力を入れて、体を少しでも大きくしようということを考えてこの冬はやってきました」と岡田監督。良化した環境を生かして大幅なスケールアップを狙っている。「絶対的なレギュラーはほとんどいない」と岡田監督は話しており、春以降に大化けする選手が出てくるかもしれない。

 その中で主力選手として活躍が期待されているのが2年生の露本 一惺内野手。春から三塁手のレギュラーを獲得し、秋は3番捕手として活躍した。「総合力が高い。『これからチームの中心になって、引っ張るんや!』くらいの気持ちでやってほしいなという期待がありますね」と岡田監督も評価している。

 卒業後は上のレベルで野球がしたいと考えている露本は岡田監督の勧めもあり、夏の大会終了後から木製バットで打撃練習を行っている。「最初はバットが折れたりして、なかなか上手く扱えなかったですが、どんどんコツをつかんできて打てるようになってきました」と手応えを感じている様子。取材日のフリー打撃でも広角に鋭い打球を飛ばしており、早くも適応ができているようだ。

 意外にも高校通算本塁打はまだ0本だが、春以降に量産していきそうな予感を感じさせる。これから兵庫県を代表する打者になっていくだろう。

 「前任校とは色んな条件や環境も違うので、なんとか1年間かけてもう少しここをこう変えたらというところをちょっと修正して、やってきたような感じですね」と監督1年目を振り返る岡田監督。技量や選手の気質に違いを感じながらも指揮官が理想とするチームづくりを進めている。目指すは自身の高校時代のような強さを取り戻すことだ。

 「僕らの世代は3年に1回は必ず甲子園に出ているというような野球部だったので、そういうような状況までなんとか引き上げたいなと思いますね」

 岡田監督の改革の下、着実に力をつけている東洋大姫路。名門復活に情熱を燃やす名将と選手の戦いぶりが楽しみだ。

(取材=馬場 遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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