敦賀気比は5季連続の甲子園 野手陣は昨年の主力残り、上位進出狙える!
濵野孝教(敦賀気比)
昨秋の北信越大会で準優勝して、今春のセンバツに選出された敦賀気比(福井)は5季連続の甲子園出場となり、近年の北信越地区では突出した安定感を誇っている。2015年春に全国制覇を経験している強豪校の現チームに迫っていきたい。
昨年はセンバツで初戦敗退したが、夏の甲子園では2勝を挙げて16強入り。この時は濵野 孝教内野手、高見澤 郁魅内野手、友田 泰成外野手と3人の2年生野手がレギュラーとして出場していた。
新チームの軸となる選手こそいたが、上加世田 頼希投手と渡辺 優斗捕手のバッテリーが抜けたため、「不安の方が大きかった」と東哲平監督は新チーム結成時を振り返る。
そこで、東監督は1年秋から不動の1番打者として活躍していた経験を買って、濵野を主将に指名。バッテリーを中心に秋季大会前の練習試合で経験を積ませたかったが、新型コロナウイルスの影響でキャンセルが相次ぎ、思うように実戦をこなすことができなかった。
さらに秋の県大会も1、2回戦の対戦相手が出場辞退となり、初戦は準々決勝の福井工大福井戦。いきなり強豪校との対決となったが、8対0の7回コールド勝ちと強さを見せつけると、準決勝、決勝も投打がかみ合い、1位で北信越大会に進むことができた。
北信越大会で最大の試練となったのは、準々決勝の中越(新潟)戦だ。7回を終えた時点で3対8と5点を追いかける展開となったが、8回表に6点を奪って逆転に成功。9回表にも2点を加えて、11対8で勝利を収めた。
準決勝の松商学園(長野)戦ではエースの辻 晶太投手(2年)が完封。決勝では同県のライバルである北陸(福井)に延長13回タイブレークの末に1対2で敗れたが、センバツの出場をほぼ確実にすることができた。
辻晶太(敦賀気比)
「県大会もよく優勝してくれたし、北信越大会もチームが全く機能しなかったので、その中で何とか決勝まで行って、粘ってくれた」と東監督。秋の公式戦で苦労したのが攻撃面だ。秋のチーム打率は.254と強打の敦賀気比らしくない数字。1番・濵野が打率.188、4番・高見澤が打率.286と本来なら主軸として活躍が期待される選手が思うような結果を残せなかった。
「自分がキャプテンとして、チームの足を引っ張ってしまった」と濵野は悔やむが、他の選手が主将の不調をカバーできたという見方もできる。特に下位打線が好調で、8番の西口 友翔内野手(1年)はスタメンでチームトップの打率.438を記録した。
打撃が不調に終わった一方、安定していたのが守備力だ。「今年はそこそこ良い」と東監督は当初から自信を持っていた通り、秋の公式戦では7試合で1失策と堅守ぶりを発揮。取材日も遊撃手の伊藤 剛志内野手(2年)を筆頭にノックでハイレベルな守備を披露していた。
新チーム結成当初は不安があったという投手陣も辻がスリークォーターから最速139キロの直球と多彩な変化球を投げ、エースとして頼れる存在に成長。昨春の甲子園でベンチ入りしていた桶谷 司投手(2年)は肩のケガで出遅れていたが、右横手から力強い球を投げる投手で、「辻と同レベル、もしかしたら辻よりも力がある投手」と東監督は潜在能力を高く評価している。
他にも甲子園を経験している左腕の竹下 海斗投手(1年)や北信越大会で好リリーフを見せた田中 悠希矢投手(2年)が控えており、投手陣の層は厚いと言って良いだろう。
高見澤郁魅(敦賀気比)
持っている力を発揮すれば、上位進出も十分に狙える今年の敦賀気比。濵野はチームの特徴をこう捉えている。
「現時点では守備からリズムを作るチームだと思っています。投手陣が5点以内に抑えて、5点以上バッティングが取ってという理想の野球が北信越大会ではできなかったので、甲子園ではまず守り勝って、チャンスで一本というふうにチーム全体で意識してやっていきたいです」
秋の反省もあり、この冬は打撃力強化を目指している。取材日の午前中は野手が打撃練習とウエートトレーニングに分かれて練習を行っていた。マシン打撃やティー打撃を行う選手の後ろでは、素振りをしながらスイングスピードを計測する光景が見られたが、高見澤や5番の佐伯 大優内野手(2年)など、主力選手のスイングスピードは軒並み140キロを超えている。個々のスイングを見ていると、甲子園では強力な打線を構成しそうな雰囲気が漂っていた。
また、福井県敦賀市といえば、降雪量の多い地域ではあるが、今年は例年より雪が少ないため、天候の良い日はグラウンドで練習を行うことができているという。取材日も雪が積もっておらず、快晴だったことから、午後にはレインボールという悪天候時でも使用できる球を使用してノックを行っていた。
北陸地方の学校にとって、天気はセンバツに向けての調整を大きく左右する。その意味では今年は敦賀気比に追い風が吹いているのかもしれない。
3年連続のセンバツ出場を決めたとはいえ、チームには北信越大会決勝で北陸に敗れた悔しさが残っている。「北信越大会では悔しさのある成績だったので、春の甲子園ではこの冬の練習で成長した姿を見せつけて、必ず全国制覇したいと思います」と意気込む濵野。北陸勢で唯一の優勝を経験している敦賀気比が8年ぶりの全国制覇に挑む。
(取材=馬場 遼)