
昨年秋の明治神宮大会で2年連続準優勝を飾った広陵(広島)。2023年も高校野球界を牽引していくであろう名門校だが、昨年の夏の大会では3回戦で姿を消した。当時は大きな話題となり、チーム内にも大きな影響を及ぼした。
しかし、チームは敗戦をエネルギーに変えて、がむしゃらに秋季大会へ進んでいった。
原動力となった投手陣の粘り
内海 優太外野手(3年)などの3年生たちの協力もあって、「良い練習ができた」と中井監督も納得できる準備期間をへて、秋季大会に突入した。
主将・小林 隼翔内野手(2年)、そして主砲・真鍋 慧内野手(2年)らが中心となって県大会を戦った。準決勝では広島新庄、そして決勝は広島商と、県内のライバルとの戦いを勝ち抜いて、中国大会まで駒を進めた。
練習試合負けなしだったチームにとって、順調だったように思うが「凄くマークされました」と中井監督は話し、決して余裕のある戦いではなかった。
「夏の教訓で、何が起きるかわからない感じがあって、考え過ぎてしまうところがありました。ですので、本来の県大会の勝ち上がりではありませんでした」
小林主将も「決して順調ではなかった」と話しており、持てる力は発揮できなかったという。練習試合のときは打線が好調だったが、公式戦ではなかなかヒットが出ない。連打が生まれないことで焦りも出たのではないかと振り返る。
それでも、エース・倉重 聡投手(2年)ら投手陣を中心とした守備の安定感があったから勝利を積み重ねられた。新チーム発足時に小林主将が話してきた「1点の重み」が浸透したこともあってか、県大会5試合で10失点という試合内容で、優勝に辿り着いた。
中国大会に入っても変わらなかった。投手陣が頑張りながら、打線は徐々に調子を上げた。そして準決勝・鳥取城北(鳥取)戦で「初回からバットが振れていて、しっかり打てていた」と調子を取り戻して決勝進出。決勝・光(山口)戦では、13安打13得点を記録して、中国王者に輝き、明治神宮大会の切符をつかんだ。
20年ぶりのセンバツ頂点、集大成の夏に向けて

中国王者として明治神宮大会に乗り込んだ。初戦は東京王者・東海大菅生(東京)が相手。甲子園への出場実績も豊富な強敵だったが、気持ちで引くことはなかった。
「レベルの高い戦いになるほど、丁寧とか綺麗によりも向かっていく気持ちで戦わなければ、簡単には勝たせてもらえません。その話を選手たちにはよくしていました」
試合は3回に先取点を奪うと、4回に一挙に4得点で主導権を握り、7回には真鍋の一発で決めた。ホームランを打った真鍋も「投打がかみ合った」と納得の勝利で4強入りすると、準決勝・北陸(福井)戦は、5対0で勝利。前半は苦しい試合運びだったが、投手陣の粘り強さで優勝に王手をかけた。
決勝は大阪桐蔭(大阪)が立ちふさがった。2021年決勝でも対戦した因縁の相手である。小林主将は「借りを返すつもりだった」とリベンジに燃えていた。アップから相手を呑み込む勢いで向かっていき、4回までに5点リードを奪った。
真鍋も「序盤は良い流れだった」と広陵ペースだった。
ただ5回に守備の乱れから追いつかれると、6回に勝ち越しを許し、追いつくことができず、2年連続で準優勝に終わった。
小林主将は「逆転を許してから、もう1度得点を奪えなかったことが課題です」と個の打力を課題に挙げたが、中井監督は準優勝という結果をプラスに捉えていた。
「自分たちの野球をやれば、全国でも戦える。自分たちの持てる力を発揮すれば、戦えることがわかりました。広陵の立ち位置も神宮大会を通じてわかったので、何が通じて、何が課題なのか。明確にできたことで、オフシーズンも頑張れていると思います」
現在は基礎体力や柔軟性を磨いているが、「夏に向けてチーム力を上げないといけない」と集大成の夏をピークにすることは忘れていない。
今春センバツ出場の可能性は大きい。選ばれれば明治神宮大会の準優勝という実績からも、当然優勝候補に挙げられるだろう。中井監督は「出場するならば、できることを全力でやって、甲子園を楽しみたい」と話す。
「協力してくれている3年生や周りの方への感謝の気持ちを忘れずにやっていきたい」と小林主将は最後に意気込みを口にした。
夏の悔しい敗戦を乗り越え、明治神宮大会準優勝まで上り詰めた広陵ナイン。センバツに出場となれば、2003年以来の優勝が目標となる。20年ぶりの日本一へ。3年生の思いもつまった「チーム広陵」で挑む。