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センバツ出場候補・北陸 敦賀気比OB監督の下、北信越の頂点掴む

2023.01.17

センバツ出場候補・北陸 敦賀気比OB監督の下、北信越の頂点掴む | 高校野球ドットコム
友廣 陸(北陸)

 この秋にブレークした高校の1つに北陸(福井)が挙げられる。福井県大会こそ3位だったが、北信越大会では県内のライバルである福井商敦賀気比を下して34年ぶりの頂点に立った。

 明治神宮大会でも初戦で四国地区代表の英明(香川)に逆転勝ちして4強入り。34年ぶりの出場が確実な今春の甲子園に期待を抱かせる戦いぶりだった。

 北陸が所在するのは福井県福井市。福井駅からえちぜん鉄道で5駅の田原町駅から歩いて数分の所に校舎とグラウンドがある。取材に訪れた1月5日は雪こそ積もっていなかったが、グラウンドには水たまりがあり、とても使用できる状態ではない。この時期の北陸地方ではよく見られる光景だ。

 室内練習場はあるものの2学年で43人の部員が1度に練習をするだけのスペースはない。そのため、取材日は午前と午後で練習するメンバーを分け、ティー打撃やウエートトレーニングなどを行っていた。

 「これも福井県の良いところ。みっちり体づくりや基本練習ができる時期だと思って、そこに全力を注ぎたいと思っています」と話してくれたのは林 孝臣監督。敦賀気比出身で1999年に同期の内海 哲也(元巨人、西武)とともに明治神宮大会で準優勝した実績を持つ。立正大卒業後は母校の敦賀気比でコーチを務めていたが、縁あって2019年秋から北陸の監督に転身した。

 昨夏の福井大会は準優勝。この時から主力として活躍していたのがエースの友廣 陸(2年)と正捕手の平田 海智(2年)だ。友廣は185センチの長身から最速142キロの速球を投げ込む本格派右腕。現チームでは4番も任される強打者で、北信越を代表する二刀流だ。平田は洞察力に優れた強肩捕手で、旧チームから中軸を打っている。

 バッテリーの2人が計算できる一方で、新チームでは野手が総入れ替えとなり、「正直、バッテリーが何とか抑えてという風にしか思っていなかった」と村田監督。新チーム結成当初は明治神宮大会まで勝ち進む青写真は描けていなかった。

 ところがふたを開けてみると、秋季大会前の練習試合では7勝1分けの好成績。「点差が開いても諦めずに何とか同点に追いついたり、1点差で逃げ切って勝つというゲームも多かったので、意外と負けづらいチームなのかなというのはありました」と手応えを感じて秋の大会に挑んだ。

 福井県大会では順調に4強まで勝ち上がったが、準決勝で福井商に2対9の7回コールド負け。まさかの大敗に「やはり力がないのか」といった雰囲気になったそうだが、「勝って驕らず、負けて挫けず、腐らずということは常に言っていたので、それをもう1回、選手たちには伝えて、可能性がある限り一生懸命やろうという話をしました」と林監督は選手をもう1度奮い立たせた。その結果、翌日に行われた啓新との3位決定戦は7対2と快勝し、辛くも北信越大会の出場権を獲得した。

 北信越大会では1回戦で新湊(富山)を10対1の7回コールドで下すと、準々決勝で友廣が日本航空石川(石川)を5安打完封。「日本航空石川さんとの戦いが彼らには自信になったのかなと思います」(林監督)と勢いのつく勝利となった。

 準決勝では友廣がまたも好投を見せ、福井商に4対3でリベンジすると、決勝の敦賀気比戦では1年生投手の竹田 海士投手と鳴海 凱斗投手が奮起。2人で10回途中までを1失点で持ちこたえて友廣にバトンを繋いだ。疲れが残る中でも友廣は力を発揮し、延長13回タイブレークの末に2対1で勝利。福井の盟主を破って北信越の頂点に立った。


センバツ出場候補・北陸 敦賀気比OB監督の下、北信越の頂点掴む | 高校野球ドットコム
水野 伸星(北陸)

 明治神宮大会でも快進撃は続く。初戦の英明戦は1点を追う8回裏に相手の失策で追いつくと、小矢 宙歌外野手(1年)のスクイズが決勝点となり、4対3で勝利。準決勝では中国地区代表の広島広陵(広島)に0対5で敗れたが、5回まで0対0で食い下がり、実力は十分に発揮した。

 「全国の舞台で一番やってはいけないことは後手後手になるというか、弱気になること。大舞台でも強気でどんどん攻めていこうということは言っていましたけど、それは普段通りにできました。いつも通りやれば勝てるという自信になったと思います」

 明治神宮大会での戦いをこう振り返った林監督。収穫の多い大会となった一方で、4強入りした他のチームと比較して体つきが違うと痛感した。出場が確実なセンバツはもちろんのこと、夏の大会を見据えて、この冬は体力強化と打力アップを図っている。

 打線の中心となるのも友廣と平田のバッテリーだ。「ピッチャーの方が好きです」と話す友廣だが、パンチ力があり、不動の4番に座っている。3番の平田は「ここぞの場面で1本が出なかった」と思うような活躍ができなかった秋からの巻き返しを誓う。

 チャンスメーカーとして期待されているのがリードオフマンの水野 伸星外野手(1年)だ。福井県大会では控えだったが、代打で結果を残したことで北信越大会から1番に定着。秋の公式戦では.450の高打率をマークした。「筋力を付けて、打球をもっと飛ばせるようになって、長打も打てる1番バッターになりたいです」と春に向けて更なるレベルアップを目指し、新2年生屈指の巧打者として注目を集めそうだ。

 彼らを束ねるのが笹井 多輝主将(2年)。選手としては控えに回っているが、「チームのテンションが下がっている時に鼓舞して引っ張ってくれる」と林監督は彼のキャプテンシーを高く評価している。バッテリーの2人がプレーで引っ張り、笹井が全体を引き締めるという体制が上手く機能しているようだ。

 「まだ決まっていないですが、センバツに出られるという思いで楽しく冬の練習を頑張れています」と笹井が話すように厳しい冬の練習もチーム一丸となって前向きに取り組んでいる。林監督の思惑通りに強化が進めば、上位進出も十分に狙えるだろう。

 センバツに向けて盛り上がる北陸だが、林監督には高校時代の苦い思い出がある。2年生の秋で明治神宮大会準優勝を経験して翌春のセンバツ出場権を獲得。優勝候補の一角として期待されたが、チームメートの不祥事で出場辞退に追い込まれてしまった。この時の教訓は指導者として生きていく中で何事にも代えがたい経験となっている。

 「当時は言葉に出ないくらいのショックでしたけど、今、こういう形で指導させて頂いて、『そういうことも現実にあったんだよ』ということを子どもに伝えられるのは貴重な体験だったと思います」

 林監督にとっては23年ぶりとなる甲子園。「やるからには負けたくありません。優勝目指して頑張ります」と意気込んでいる。ついに訪れようとしている晴れ舞台。かつての阪急ブレーブスとそっくりなユニホームを身にまとった勇敢な選手たちはどんな戦いを見せてくれるだろうか。

(記事=馬場 遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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