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大阪桐蔭、履正社を追いかける実力校・関西創価 甲子園を経験した新指揮官のもとで2季連続4強

2022.12.10

大阪桐蔭、履正社を追いかける実力校・関西創価 甲子園を経験した新指揮官のもとで2季連続4強 | 高校野球ドットコム
関西創価の練習に密着

 大阪桐蔭履正社など強豪が集う大阪府において、今年府大会、夏秋と2季連続で4強入りを果たしているのが関西創価だ。

 2001年春には野間口 貴彦投手(元巨人)を擁して甲子園初出場ながら4強入り。その後は甲子園から遠ざかっているが、近年も度々上位に顔を出している。

充実した施設、甲子園出場のOBが監督就任

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小野哲平監督

 学校が所在するのは大阪府交野市。学校の敷地内に専用グラウンドがあり、秋と春は府大会の試合会場にもなっている。専用グラウンドまでのバス移動や校内の狭いグラウンドでの練習を強いられている高校が大阪府には多いことを考えると、比較的恵まれた環境であると言っていいだろう。

 さらに多くの選手が生活している寮の設備も充実している。5年程前に完成した金星寮にはトレーニングルームや雨天練習場に加え、図書室や交代浴が可能な浴場も完備。室内は綺麗に保たれており、「綺麗で設備も整っていて、本当に良い寮だと思います」と主将の柴田 俊太外野手(2年)は胸を張る。

 チームを率いるのは今年6月に就任したOBの小野 哲平監督。甲子園に出場した時の二塁手のレギュラーで、卒業後は創価大でプレーを続けた。その後、鹿屋体育大で教員免許を取得した後、鹿屋中央のコーチに就任。2014年夏には副部長として甲子園出場に貢献した。3年前から母校に戻り、2度目の甲子園出場を目指して指導に励んでいる。

 チームのスローガンは「人間野球」。赴任当初、昔に比べて選手の内面的なパワーが不足していると感じた小野監督は、人間臭いチームを作ることを選手に求めたという。

「一喜一憂することを良しとされない高校野球ではありますけど、勝った時には喜んで、負けた時には悔しがるというところからスタートしました」

 小野監督の指導が浸透しているのか、練習中では互いに声を出して励まし合いながらトレーニングに取り組む選手たちの姿が目立った。

 小野監督の公式戦初采配となった夏の大阪大会は1回戦で強豪の大阪産大附を5対1で下すと、その後も順調に勝ち進んでベスト4進出。準決勝では履正社に敗れたが、2対3と接戦を繰り広げた。

「選手の力を見て、ベスト4は何としても行かせてあげないといけないと思っていたので、自分の中でも選手を見ていくバロメーターになったような気がします」と夏の大会を振り返る小野監督。3年生が引退しても投手陣の柱である中西 蓮大投手(2年)と柴田が残っており、新チームに対する期待値は高かった。

 中西は曲がりの大きい変化球で緩急を使った投球が武器の右腕。柴田は左投手だが、緩急を武器とする点では中西と似ている部分がある。夏までのチームは打ち勝つ野球を目指していたが、新チームはバッテリー中心に3対2や2対1で守り勝つスタイルで勝ち進むことを目指していた。

[page_break:秋は準決勝で大阪桐蔭にコールド負け]

秋は準決勝で大阪桐蔭にコールド負け

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円陣を組む関西創価ナイン

 実際に秋の大阪府大会では投手戦を勝ち抜いた。5回戦、準々決勝は上宮太子金光大阪と手強い相手との対戦が続く中で中西が好投を見せ、2試合とも1対0で勝利。夏に続いて4強入りを果たし、近畿大会出場に王手をかけた。

 準決勝の相手は大阪桐蔭。柴田が先発マウンドに上がったが、「僕たちとの差を痛感した」(柴田)と2対10の7回コールド負けと力の差を見せつけられてしまう。

 3日後には箕面学園との3位決定戦を控えていたが、「自分たちの持っているものが出せないまま相手の力に圧倒されて、押された感じのまま3位決定戦に臨んでしまったような雰囲気はありました」(小野監督)と上手く切り替えることができずに0対2の完封負けを喫してしまった。

 夏の4強メンバーが数人残っていたことで、学校、保護者、選手が秋の近畿大会出場に期待していた。それだけにあと1歩で近畿大会を逃したショックは大きく、大半の部員が号泣していたという。

 気持ちを切り替え、その後は強豪と練習試合を重ねるも敗戦することが多かった。だが、「まだ力不足の中でベスト4に行けたというのがわかったという意味では、もっと力を付けないといけないと自分と向き合える時間になった気はします」と小野監督はプラスに捉えている。

 秋の戦いを踏まえ、この冬はパワーアップとスピードアップをテーマに取り組んでいる。取材日の練習でもベンチ前にウエートトレーニングの器具を置くなどして、メニューの合間にトレーニングができるように工夫がなされていた。

 打撃練習では木製バットを使用するなど、課題である打力強化に取り組んでいる。その一方で、「バント、エンドランといった小技も強化していきながら、緻密な野球で勝っていくチーム作りをしていきたい」と小野監督はスモールベースボールで大阪を勝ち抜く考えがあるようだ。

 得点力不足に悩んだ秋だが、野手陣のレベルも決して低くはない。1番の野口 柊也外野手(2年)や、4番の藤本 敦也内野手(2年)は快打を連発。3番・遊撃手の北川 快生内野手(2年)も攻守にハイレベルなプレーを見せており、「チームの顔。頼りになる」と同僚からの評価は高い。「この秋は個人的に良くなかった。この冬に練習しまくって、夏は甲子園に行きます」と春以降の巻き返しに意欲を見せており、甲子園に行くためのキーパーソンになるだろう。

 夏は小野監督が高校3年生だった2001年春以来の甲子園を目指す。「甲子園だけは緊張せずに野球が楽しいと思えた場所だったので、そういうところで選手にもプレーさせてあげたい」と小野監督は教え子にも自分と同じ思いをさせてあげたいと指導に力を入れている。

 大阪府を勝ち抜くためには大阪桐蔭履正社などの強豪校に勝つ必要があるが、「大阪桐蔭履正社も同じ高校生なので、気持ちの面で絶対に勝つというところを意識しながらやっていきたいです」と柴田が話すように選手たちのモチベーションは高い。夏、秋の経験を糧に2023年は大阪の主役へと駆け上がるつもりだ。

(記事=馬場 遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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