兵庫県有数の進学校・小野にとっての強豪私学の存在は目指す理想のチーム像
小野・藤井 卓
兵庫県の21世紀枠の推薦校に選出された小野は、県内でも有数の進学校で、平日練習はおよそ1時間半程度ながらも、秋は県大会8強入りを達成した。夏に安定した強さを発揮してきた小野が、効率的な練習方法で秋から結果を出してきたことが評価されて、県の21世紀枠推薦校に選ばれた。
効率的!小野式・打撃練習を紹介
効率的な練習ができるのは、学校で使用しているタブレット端末の活用が大きい。県の取り組みで、公立校に導入されたことで、指揮官の北垣監督がチームに活用し始めたことがきっかけだ。
それまではグラウンドに来てから練習メニューを発表していたが、今では昼休みの段階でわかる。学校生活の合間で練習をイメージでき「スムーズに練習ができる」と選手たちが話すように1時間半程度の練習を無駄にすることなく、取り組めている。
練習の中身にもこだわっている。トレーナーの指導も受けて、個人が成長できるようなメニューでグループを編成。技術練習もひと工夫している。
取材日は打撃練習だったが、球拾いを素早くできるようにバックネットに向けて打つだけではなく、ホームベース付近には置きティーを設置していた。
もちろん打撃投手がいるので、打者は基本的に前からくる球を打つ。どこにでもある打撃練習だが、時折わざと投げないで腕を振るだけというときがある。このとき、打者は事前に置いていた置きティーを打つ。
変化球への対応力、下半身で我慢してひと呼吸を置いて打つ。秋の大会準々決勝・社との試合では「低めの変化球に手が出てしまった」という北垣監督のなかで感じた課題を繰り返すまいと、打撃練習から工夫をした。
「最初はタイミングを外されて、しっかり打つことができなかった」と導入当初は選手たちの中でも苦戦したようだが、練習を重ねることにきっちり我慢して打てているという。実際に選手たちの練習を見ていても、我慢して強くスイングができており、少しずつでも効果が出ていることは分かった。
小野にとっての不易流行とは
強豪私学、同じ公立でも力のある学校と対戦すると、打力で差をつけられてしまうという。選手個々のスイングそのものに差が生まれるからだ。
どうしても練習場所、時間が制限されている以上、バッティング練習も思うようにできない。ただ北垣監督としては安定した守備力は前提としてあるうえで、「近畿の強豪校に打ち負けない。力負けしたくない」という思いが小野に赴任した時から常にあった。
今年は1年生夏から公式戦を経験してきた絶対的な支柱・市橋 慶祐捕手(2年)に、藤井 卓投手(2年)など数多くの投手が揃った。バッテリー中心に守備は計算が立つだけに、理想とするチームができる環境にはある。だからこそ、取材日に取り組んでいたトレーニングでの体づくりや、打撃練習など1つ1つメニューは目指すチーム、強豪私学に近づく意味でも大事なメニューだ。
北垣監督はもちろん、選手たちの潜在意識の中にあるのは強豪私学の存在。北垣監督は「不易流行」という言葉を使っていたが、小野は強豪私学に勝つことや、スクールカラーである真剣な生徒が多いことは変わらない。
ただ目標のために冒頭で書き記したタブレット端末の活用や、打撃練習の工夫など時代にあわせて変われたことが強さといってもいい。
その成果を発揮する場所が甲子園になるためには、12月9日に第一関門となる近畿地区の21世紀枠の推薦校に選ばれないといけない。甲子園という目標がリアルにイメージできるからこそ、日々の練習から得られる成果はより大きくなっている。
学校として初となる甲子園の舞台に立ち、さらに多くの収穫を得ることはできるか。12月9日の発表に注目だ。
(記事=田中 裕毅)