ソフトバンクが(愛知)のイヒネ イツア内野手(3年)を1位指名する方針であることを公表したとして大きく話題となっている。そのイヒネを育て上げたはいったいどんな学校なのか。その育成システムを追っていくと、令和の高校野球を先取りするようなチームだった。

 は2019年夏に初の甲子園出場。その年の中心選手だった大型遊撃手・澤野 聖悠内野手が楽天から育成4位で指名された。21年には速球派右腕の川嵜 陽仁投手が巨人から育成9位指名を受けた。2人とも育成選手だが、イヒネは初の本指名どころか1位指名が確定したことになる。

 は愛知県の小牧市に所在する。グラウンドは学校から離れた場所にあり、選手たちは自転車を漕いで、グラウンドに向かう。グラウンドは山の中にあるが、それまでの道のりはアップダウンが激しい道のりで、移動するだけでもトレーニングになり、選手たちは「良いアップになる」と語る。

 練習は、ショートダッシュなど短距離系のメニューでアジリティを鍛えるメニューが多い。アップが終わると、打撃練習組とフィジカル練習を行う選手に分かれるが、右翼奥に建てられたプレハブの施設にはウエートトレーニングができる器具が多く揃っていた。選手たちはベンチプレスやスクワットなど高負荷のトレーニングを年間通して励む。

 イヒネや他の3年生も、最初は持ち上げることに苦労したようだが、慣れていくと、ベンチプレスでも100キロ以上持ち上げる選手もいるという。さらにパワーアップするために補食も置かれている。

 こうしたトレーニングだけではなく、1キロの縄跳び、ジャベリックスロー、エルゴメーター、パルクール、ボックスジャンプなど多彩なメニューがあった。フィジカルアップが重要と考えたの矢幡監督はフィジカル強化のトレーニングメニューを先取りし、多くの速球投手、強打者を育てる武田(広島)のメニューを大きく参考にしたという。またラプソードもいち早く購入し、ピッチングデザインにもこだわった。

 愛知の高校は多く取材しているが、の方針は選手のフィジカル、テクニカル、器を大きくすることに振り切っている。イヒネも中学時代は足が速くても絶対的な力量を持った選手ではなかった。フィジカルを徹底的に強化しつつ、首脳陣の指導のもと、打撃技術を伸ばし、守備についても身体能力に頼らず、丁寧にプレーしていく姿勢が見られ、順調に伸びていった。

 どの学校も甲子園出場を狙っている。ただ、その過程の中でも、選手のフィジカル、テクニカルを大きく伸ばす誉のチーム方針は、中学生からしても魅力的に映るだろう。

 イヒネは近い将来、野球のパイオニア的な存在になるかもしれない。の今後の活動に注目だ。

(記事=河嶋 宗一