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昨年度は京大に47名合格!滋賀県一の進学校 データ班と「文武連動」の精神で甲子園狙う

2022.05.13

 滋賀県一の進学校として知られている膳所。昨年度は過年度生を含めて47名の京大合格者を輩出している。野球部は春4回、夏2回の甲子園出場経験があり、近年では2018年春に21世紀枠で出場したことが記憶に新しい。

 4年前にセンバツ出場した際に話題となったデータ班は当時より人数も増えてパワーアップしている。高いレベルの文武両道を実践する膳所の現在地に迫った。

21世紀枠出場で脚光浴びた「データ班」が進化

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データ班

 膳所では部活動を班活動と呼んでおり、野球班は学校の近隣にある第2グラウンドで練習を行っている。実戦練習が十分にできる広さがあり、雨天練習場も完備されている。公立校の中では比較的恵まれていると言えるだろう。

 膳所の代名詞となっているデータ班が発足したのは2017年4月。当時の上品 充朗監督(現教頭)は強豪校との能力差を埋めるべく、相手の打球を正面で捕れるようにすることでヒット性の打球をアウトにしたいという発想があった。だが、根拠となるものがないと、大胆な守備シフトを敷くことを躊躇してしまう。

 そこでデータ分析を専門とする部員を募集し、その年に2名が入部。秋はデータ分析をもとにした大胆なポジショニングが見事に機能して、8強入りを果たした。準々決勝で近江相手に1対3と善戦したことに加え、選手、マネージャー以外でも野球に携わる部員がいるという新たな試みが評価され、21世紀枠でセンバツに選出された。

 センバツでは初戦で日本航空石川に0対10の大敗を喫したが、中盤まではデータ通りの守備で失点を防ぐ場面が目立ち、観衆を湧かせた。この時に部長でベンチ入りし、この春に公式戦初采配を振るった清水 雄介監督は「生徒たちは楽しいと言っていました」と当時の選手の心情を代弁してくれた。

「どんどんパワー野球になっていますが、そうじゃない野球の形もあると思うんです。公立校でも甲子園に行って爪痕を残すじゃないですけど、何かを力を出す方法はあるんじゃないかと感じてくれるんじゃないかなと思います」

 それから4年。データ班の人数も15名に増え、大会期間中は手分けして県大会が行われている球場でデータ収集を行っている。そのデータをスマートフォンのアプリに落とし込んで、部員内で共有できるようにもなった。こうしたデータ班の働きに佐貫巧実主将(3年)もありがたみを実感している。

「データをもとに実際の試合でも守備位置を変更して、何個かアウトにできた打球もあったので、そういう点で凄く助かっています」

 データ班は他の班活動との掛け持ちが可能で、ボート班や山岳班に所属している班員もいる。班長の蒲生 麻琴さん(3年)もギター班に所属しているそうだ。野球一家に育ち、自身も野球好きだった蒲生さんは「データを集めて分析するというやり方をしたことがなかったので、新しい関わりが持てて、これから野球以外のことにも活用して行けるかなと思います」と充実した日々を送っている。

[page_break:理念は「文武連動」、京大志望の182センチ右腕にも期待]

理念は「文武連動」、京大志望の182センチ右腕にも期待

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野井 清吾

 データ野球で甲子園に出場して脚光を浴びた膳所だが、それがチームの強化に直結したわけではない。入学するためには難関な入試に合格する必要があり、有望選手が入学を希望しても叶わないということもあったそうだ。

 さらに一昨年からのコロナ禍で無観客試合になることも多く、収集できるデータも限られている。そうした中で昨秋は2018年夏以来の2勝を挙げた。清水監督は今年のチームの強みについて、「3年生は自分たちで考えられる子が多い」と話す。

 練習メニューの決定に関しても3年生から提案してきた内容に対して清水監督がアドバイスを送るという形をとっている。野球も勉強も自分で考えて努力できる人間が力を伸ばせると清水監督は考えているようだ。

「自分に任されることが増えた時に自分でどれだけできるかが大事なのは勉強も同じだと思うんですよね。学校の教員も授業でレベルの高いことをやりますが、その中でもさらに賢い子は自分で勉強する時間の使い方が凄く上手です。任された時間をどう使うかというのが、その子の本当の賢さなのかなと思いますね」

 膳所野球班には「文武連動」という考え方がある。野球が勉強に繋がることもあれば、その逆も然りということだ。「野球で細かいことをやることで、勉強でもケアレスミスが減ります。どちらも全力でしっかり取り組めるように普段の練習から、そして学校生活から意識して取り組んでいます」と佐貫は話す。勉強と部活動は二者択一で考えられがちだが、どちらも全力で頑張ることが双方の能力に繋がるという理念が膳所にはあるのだ。

 夏の大会に向けてキーマンとなるのがエースの野井 清吾(3年)。182センチの長身右腕で腕の長さを活かした投球が持ち味だ。「最近の膳所高校は大会の中で1勝、2勝で終わることが多いので、まずはベスト8まで軽く行ける実力を夏までにしっかりとつけていきたいと思います」と意気込む。彼は京大を志望しており、合格できれば関西学生リーグでも十分に活躍できる素材だ。

 「4年前に先輩方がセンバツに出られましたが、そこで勝つことができなかったので、チームとして甲子園1勝を目標に夏の大会を勝ち抜けるように練習に励んでいます」と話す佐貫。膳所は過去に6度の甲子園出場経験があるが、全て初戦で敗れている。センバツ準優勝校の近江など強豪私学が集う滋賀県を勝ち抜き、悲願の甲子園初勝利を目指す。

(取材=馬場 遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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