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昨秋、兵庫県初制覇を果たした社 メトロノーム、球速計測デバイスなどを導入し質を高める【後編】

2022.04.15

 2020年秋からはブレインストーミングを取り入れ、またこの冬からはSBT(スーパーブレイントレーニング)と呼ばれるメンタルトレーニングを取り入れるなど、独特な組織作りを行う

 昨秋の兵庫大会を初制覇し、練習でも様々な工夫を凝らしながら夏の甲子園初出場を目指している。今回は特有の練習法や注目選手を紹介していきたい。

メトロノームを使い時間感覚養う

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岩崎和久メンタルコーチの話を聞く選手たち

 取材日は朝にSBT講習を行ってから守備練習に入っていた。キャッチボール、ボール回しの後にノックに入ったが、その際に驚いたのが、「いちいちストップウォッチで測らなくても時間感覚が身につくので」(山本 巧監督)という理由でメトロノームを活用していたことだ。

 この日は、メトロノームは1秒ごとに音が鳴るように設定されていた。これを利用することによって、例えば内野ゴロに際に打者のインパクトから4秒以内で一塁に送球するなど、タイムを計らなくてもアウトにするための時間感覚を養えるのだ。

 ではこのような時間感覚を養うことにも力を入れており、素振りをする際にも球速に応じて投手のリリースから捕手のミットに入るまでの様々な球の時間感覚を設定し、スイングするように努めている。

 また、ノックを見ていて印象に残ったのが、ノックを打つテンポがとても早い。例えばシートノック形式で行う投内連係ノックでは、山本監督の認識では野手に球数を多く捕らせるための個人練習の感覚で打つという。そこで積み重ねたものをランナー付きケースノックで応用し、上手くいかなかった部分をまた個人練習やポジション別練習に差し戻し練習するというのがのやり方だ。

 その後に行われたベースランニングでも随所にこだわりが見られた。例えば一塁から二塁への盗塁を想定する場面ではスタートやスライディングはもちろん、相手捕手の送球が逸れた時に素早く立ち上がって再スタートを切る練習まで行っている。

 他にも三塁からギャンブルスタートをして、外野にライナーが飛んだ場面を想定して、すぐに帰塁してタッチアップでスタートする練習など、細かいところまで突き詰めたベースランニングをしている。激戦区兵庫県を勝ち抜くために細部まで手を緩めない姿勢が見てとれた。

 午後からは佐藤 照己トレーナーの指導によるトレーニングが実施された。佐藤さんは社会人野球のJFE西日本のトレーナーも務めており、3年ほど前から月2回のペースでにトレーニング指導を行っている。

「年々、意識・意欲が高くなっています」とアマチュア野球の最高峰に携わる佐藤さんが感心するほど、選手たちの取り組み意識は高い。指導者やトレーナーが檄を飛ばさなくても各々が自分のやるべきことをわかっており、選手自らが動ける組織作りが浸透した証拠であると言えるだろう。

[page_break:投手陣はエース争いに期待]

投手陣はエース争いに期待

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後藤剣士朗主将

 続けて今年のチームの戦力面について見ていきたい。主将を務めるのは二塁手の後藤 剣士朗(2年)。「積極的に打っていきながらも出塁率を求めてやっています」。状況に応じた打撃ができるリードオフマンだ。

 その後藤が守備の要として期待を寄せているのが、エースの芝本 琳平と4番捕手の笠井 康生(ともに2年)。芝本は最速143キロの本格派右腕で、インコースを強気に攻める投球が持ち味だ。「夏までに145キロを投げて、県を代表する投手になりたいと思っています」と意気込んでいる。

 笠井は長打力を武器とする左の強打者。捕手としても芝本ら豊富な投手陣を巧みにリードする。副主将と捕手のポジションリーダーも務めており、チームの核となる活躍が今後も期待される。

 投手では芝本以外にも力のある投手がいる。堀田 柊(2年)は近畿大会の近江戦で先発を任されるなど、芝本に並んで信頼感の高い投手。近江戦では初回に降板したが、春以降の巻き返しに期待したい。

 その近江戦で3回1失点と好投した吉田 和哉(2年)は140キロ前後の速球を投げ込む速球派右腕。オリックス吉田 凌を兄に持ち、潜在能力の高さはピカイチだ。秋は背番号11だったが、今後はエース争いに絡んでくるだろう。

[page_break:野手陣では近江戦3安打の遊撃手に注目]

野手陣では近江戦3安打の遊撃手に注目

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MAQの測定をする堀田柊

 また、では球速や回転数、回転軸などを計測できるミズノ社の「MA-Q」を投球練習に活用している。MA-Qとは専用センサーを内蔵した球を投げることで、スマートフォンの連動アプリを通じて投球データを管理できる代物だ。

 取材日には堀田と赤坂 将真(1年)がMA-Qで投球データを計測。「球がシュートしてしまうことを知ったので、これを生かして、回転の軸を真っすぐにできていけたらなと思います」(堀田)、「僕は今、回転数が課題。この球を投げて、回転数や回転軸などを知れて、良かったです」(赤坂)とそれぞれ感想を語った。

「自分のタイプが数値化されて、より練習が具体的になってくると思います」とMA-Q導入の効果について語る山本監督。こうしたアイテムを活用することで自分を知ることができ、自立した選手育成につながっていくことだろう。

 打撃でもグリップエンドに専用機器をセットしてアプリと連動させることでバットスピードやアッパースイング度などを計測できる「BLAST」を活用。今回の計測で特筆すべき数字を残したのが、昨秋の近畿大会では5番に座った勝股 優太(2年)だ。高校生平均が95キロと言われているバットスピードの数値で勝股は110キロ台を連発。今後の活躍に期待を抱かせてくれた。

「スイング軌道や自分のスイングスピードがわかるので、とても良いと思いました。このスイングスピードのまま試合でも振れてコンタクト力が上がれば、よりヒットも増えると思うので、それを意識して頑張っていきたいと思います」と計測の感想を語った勝股。春以降の打棒に要注目だ。

 野手では遊撃手の福谷 宇楽(2年)にも注目。攻守にハイレベルな選手で、昨秋の近畿大会・近江戦では3打数3安打1打点の活躍を見せている。

 私学に進学するのではなく、中学までは目立たなかった選手たちが細部にまで突き詰めた練習を実施。そして質の高い組織作りを融合して甲子園常連校を目指している。今年こそは夏の甲子園初出場となるだろうか。

(取材=馬場 遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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