2020年秋からはブレインストーミングを取り入れ、またこの冬からはSBT(スーパーブレイントレーニング)と呼ばれるメンタルトレーニングを取り入れるなど、独特な組織作りを行う社。
昨秋の兵庫大会を初制覇し、練習でも様々な工夫を凝らしながら夏の甲子園初出場を目指している。今回は社特有の練習法や注目選手を紹介していきたい。
メトロノームを使い時間感覚養う

岩崎和久メンタルコーチの話を聞く選手たち
取材日は朝にSBT講習を行ってから守備練習に入っていた。キャッチボール、ボール回しの後にノックに入ったが、その際に驚いたのが、「いちいちストップウォッチで測らなくても時間感覚が身につくので」(山本 巧監督)という理由でメトロノームを活用していたことだ。
この日は、メトロノームは1秒ごとに音が鳴るように設定されていた。これを利用することによって、例えば内野ゴロに際に打者のインパクトから4秒以内で一塁に送球するなど、タイムを計らなくてもアウトにするための時間感覚を養えるのだ。
社ではこのような時間感覚を養うことにも力を入れており、素振りをする際にも球速に応じて投手のリリースから捕手のミットに入るまでの様々な球の時間感覚を設定し、スイングするように努めている。
また、ノックを見ていて印象に残ったのが、ノックを打つテンポがとても早い。例えばシートノック形式で行う投内連係ノックでは、山本監督の認識では野手に球数を多く捕らせるための個人練習の感覚で打つという。そこで積み重ねたものをランナー付きケースノックで応用し、上手くいかなかった部分をまた個人練習やポジション別練習に差し戻し練習するというのが社のやり方だ。
その後に行われたベースランニングでも随所にこだわりが見られた。例えば一塁から二塁への盗塁を想定する場面ではスタートやスライディングはもちろん、相手捕手の送球が逸れた時に素早く立ち上がって再スタートを切る練習まで行っている。
他にも三塁からギャンブルスタートをして、外野にライナーが飛んだ場面を想定して、すぐに帰塁してタッチアップでスタートする練習など、細かいところまで突き詰めたベースランニングをしている。激戦区兵庫県を勝ち抜くために細部まで手を緩めない姿勢が見てとれた。
午後からは佐藤 照己トレーナーの指導によるトレーニングが実施された。佐藤さんは社会人野球のJFE西日本のトレーナーも務めており、3年ほど前から月2回のペースで社にトレーニング指導を行っている。
「年々、意識・意欲が高くなっています」とアマチュア野球の最高峰に携わる佐藤さんが感心するほど、選手たちの取り組み意識は高い。指導者やトレーナーが檄を飛ばさなくても各々が自分のやるべきことをわかっており、選手自らが動ける組織作りが浸透した証拠であると言えるだろう。