近畿大会初戦にあった3つの選択肢

後藤剣士朗主将
そして迎えた近畿大会初戦の日。当日は朝から不安定な天候となり、早朝に雨天順延が決定。山本監督は宿舎にてすぐさま3つの選択肢を選手たちに投げかけた。
学校に戻り練習。その後、再び宿舎に戻る。
(メリット→学校で練習。デメリット→バス移動往復4時間)
学校に戻り練習。その後。各々一旦帰宅し、翌朝、学校から皇子山球場に向かう。
(メリット→学校で練習・自宅や寮で睡眠。デメリット→翌朝(月曜日)の交通事情が不透明)
滋賀県内にとどまり、練習場所をお借りして練習。翌日は宿舎から球場へ向かう。
(メリット→宿舎を拠点に滋賀県内で練習させていただく。デメリット→2連泊となり体調面心配)
じつは、雨天順延が決定する直前、『その場合は…』ということで、滋賀短期大付・保木淳監督から連絡を頂き、滋賀県内で練習場所をあてがっていただけるという、普通ではあり得ないお話を頂いていた。すぐさまお世話になりたかったが、唯一、気になったのが選手の体調維持。あらかじめ、雨天をも想定しキャンセル料を承知の上で宿舎2連泊も押さえていたが、それだけが気がかりだった。
しかし、選手たちは最善を尽くすべく③を選択。意志ある1日を過ごすこととなり、このような場面に於いても高い組織力の片りんを見せていた。
助けて頂いた保木監督・水野 駿部長、また、安曇川高校・北大津高校の先生方への感謝の気持ちを持って初戦を迎えることとなる。
しかし、初戦の近江戦では10対11で敗戦。18年ぶりの甲子園出場はならなかった。
センバツを逃した悔しさは大きかったが、その翌日には朝から黙々と校内定期考査に向き合う選手たち。その姿に感銘を受けたテスト監督の先生たちは山本監督にその思いを告げている。
考査後のグラウンドでは、今まで以上に熱を入れ練習に打ち込む選手の姿があり、「勇気づけられます。悔しかったと思うんですが、立ち止まらずに行動する。誇りに思います」
「夏、秋でとても悔しい経験をして、今年の春、夏は負けたくない気持ちでいっぱいですので、チーム全体で勝ちに行こうと思います」と後藤 剣士朗主将(3年)は意気込む。夏の甲子園初出場に向けてチームは一体となっている。
言葉からは入りたくなかったという『ブレインストーミング』。そのワードや意味を正式に伝えたのはこの秋の敗戦後。新チーム全体でその取り組みがやや進行し、チームの成熟度がやや高まるタイミングを見計らっての計算だった。
そして、そのタイミングで岩崎和久コーチによる『SBT(スーパーブレイントレーニング)』を導入。更に強力な組織作りに取り組み始めた。
大脳生理学と心理学に基づき確立され、脳にアプローチすることで心の操作術を身に付けていく。ビジネス界でも注目されている手法で、それを技術の向上につなげていく。自立した人間の育成にも効果があり、選手が持つ能力を最大限に発揮することを目指している。
「野球の質で勝負できるようにしっかりと思考力と行動力を磨いて、チャレンジしていきたいと思います」
何度でも兵庫の頂点を目指していくつもりだ。
(取材=馬場 遼)