今年のセンバツ出場校の中でトップクラスの長打力を誇る打線といえば、明秀日立(茨城)だ。昨年秋の公式戦10試合で、同14試合だった花巻東(岩手)と同じ14本塁打を放った。なんと6選手が本塁打を記録した。
今センバツでは前評判通りの強打を発揮し、初戦では大会屈指の左腕・大野稼頭央投手(3年3年)擁する大島(鹿児島)に8対0で完勝し、ファンを驚かせた。今回はそんな明秀日立打線に迫っていく。
明秀日立の打撃理論は「球のラインに対してバットの軌道を入れること」。この理論は盛岡大附(岩手)、健大高崎(群馬)に広まり、どちらもホームランバッターが多く出ている。この理論の「師匠」は、明秀日立を率いる金沢監督である。
金沢監督が提唱する打撃理論のルーツは?

石川ケニー主将(明秀学園日立)
この理論に行き着いたのは、光星学院(現八戸学院光星=青森)の総監督時代だった。意外かもしれないが、坂本 勇人内野手(巨人)が所属していた時代は、まだその理論ではなかった。
「坂本は脇が大きく開くスイングをしていました。このスイングを矯正したのですが、全然打てなかった。それを壊さずに指導していたら、たまたま肘が空くことがバットを入れられる長所になったのではないかと思いますし、あのスイングだからこそ、天才的なインコース打ちができたと考えています」
総監督時代は、現場から離れる時間も多く、プロ野球のキャンプに赴いた。またいろんな球界の関係者と技術論など交わすようになって、今の打撃理論にいきついたという。当時はレベルスイング全盛の時代。最初は異端の声もあったが、金沢監督は自身の理論を信じ、選手たちに伝えた。
その結果、田村 龍弘捕手(ロッテ)、北條 史也内野手(阪神)らがいた12年の光星学院の強力打線を作り上げる要素になり、この理論に取り組んだ盛岡大付打線も12年の160キロ右腕・大谷 翔平投手(花巻東出身)を攻略する強力打線へ変貌し、甲子園出場。その後も安定して甲子園に出場するようになり、金沢監督の打撃理論は認められるようになった。