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センバツ有力の学校でトップクラスの強打を誇る明秀学園日立。徹底したフィジカル強化で大化け

2022.01.22

 今年のセンバツ出場が有力視されている明秀学園日立(茨城)は、金沢監督が提唱した独自の打撃理論で、DeNA・細川 成也外野手、巨人育成・増田 陸内野手の2人を筆頭に多くのスラッガーを育ててきた。金沢監督はその前提として、「強靭なフィジカルが必要」と語る。

 その真理にたどり着くために、明秀学園日立の高萩グラウンドを訪れた。

打球が飛ぶ経験でさらにウエイトトレーニングに励む

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ベンチプレスに励む選手たち(明秀学園日立)

 昨秋の県大会準々決勝、[stadium]ひたちなか球場[/stadium]で明秀学園日立の選手たちの体つきを見た時、かなり鍛えられていた印象を持った。胸筋、太もも周りが実に太かった。そして選手たちは強烈な本塁打を放ち、送球1つ1つも鋭く、秋の段階としては一段階上を行っているチームだった。

 明らかに体つきが他のチームと違っていたこともあり、体作りの秘訣を探ると、新チーム結成後から徹底して、ウエイトトレーニングを行っていた。最初から意識が高いわけではなかった。金沢監督に叱咤激励を受け、意識が変わり、体重が増えていった。パワーアップを実感し、よりウエイトトレーニングに対して懸命に励むようになっていったという。

 その背景を知るため、1月のトレーニング時期に取材を行った。

 練習最初に選手たちが行っていたのは30分間走。歩幅を合わせ、グラウンドの中を走り続ける。そして主力メンバーは[stadium]高萩グラウンド[/stadium]近くの高萩市衛星記念公園でダッシュや、重りを持って中距離走を行う。インターバルの間には腕立て伏せを行うなど、ここまでは「走り」と「体幹強化」を行う。

 公園でのトレーニングが終わった後、ウエイトトレーニングに取り組むが、オフ期間、シーズン期間で考え方が異なるという。オフ期間はベースアップ種目として、「スクワット」「ベンチプレス」「デッドリフト(背中、ハムストリングスなどを鍛える種目)」の3種目を中心に取り組む。体幹部の筋力をつけることを目的として、最大筋力アップを目指す。

 スクワットは足と太腿四頭筋、ベンチプレスは胸と上腕三頭筋、そしてデッドリフトで背中などを鍛えていく。

 シーズン中はフォワードランジ(片足を一歩前に踏み出すなどの筋力強化)といったスピード種目に励む。ただ取り組むのではなく、明確にどんな目的で筋肉を鍛えていくのか、どんな種目で鍛えていくのかが決まっていれば、フィジカルアップにつながりやすい。選手たちは休みなく、器具に向き合う。叫び声を挙げながら器具を持ち上げ、サポートする選手が励ます。体づくりへ真剣に向き合っている姿がそこにはあった。

 こうした光景が当たり前になるまでには、金沢監督の「叱咤」もあった。主将の石川 ケニー外野手(2年)は「ダラダラとやっていたと思いますし、椅子に座りこむことが多かった」と振り返る。しかし、目一杯取り組み始め、三日坊主で終わらなかったのは、体が大きくなったことで遠くへ飛ばせる実感があったからだ。

[page_break:食事も考え、スケールが大きいチームになった]

食事も考え、スケールが大きいチームになった

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インタビューを受ける石川ケニー(明秀学園日立)

 石川は「みんな(体が)細かったけど変わっていった」と成長する様子を振り返る。188センチの大型三塁手・小久保 快栄(2年)は「飛距離が出るようになると、嬉しくなりますし、さらに鍛えたいと思うようになりました。もっと飛ばしたいので、今は腰回りを鍛えています」

 ほとんどの高校生は高校入学まで本格的な筋トレをする経験がないだろう。小久保もその1人で、「最初はやり方も分からなかったですし、全く持ち上げることができなかった」と振り返る。それでも、この2年間で、ベンチプレスは95キロ、デッドリフトは150キロを持ち上げることができるようになった。指導者らによると、試合に出場している選手ほど意識が高く、数値も高い選手が多いという。レギュラーたちは、主体的にパフォーマンスアップに務めているが、チームとしては、試合に出ていない選手たちの意識を高めることが課題となっている。

 選手にとってベンチ入りすることが目標だが、もしそれが叶わなくても、本人が望む限り、野球は続けることができる。野球部の指導者の多くは大学以上でプレーしており、フィジカルを強化した選手と、しなかった選手で明暗が分かれることを知っている。だからこそミーティングで何度も説いているのだ。

 ハードなトレーニングだからこそ、食事にも目を向ける。チーム屈指のスラッガー・武田 一渓内野手(2年)は「食事も気を遣うようになりましたし、タンパク質は1日あたり、どれくらい摂取すればいいか考えるようになりました」と栄養面まで考え、小久保も「三食だけじゃ、練習量に追いつかなくて(体重が)減っていってしまうので、補食だったり、プロテインだったりを多く摂っています」と語る。なるべく早く就寝をして、睡眠時間を確保するようにも努めているという。

 ウエイトトレーニングでは正しいフォームで自分の限界に挑戦する。激しいトレーニングで消費したエネルギーを補うために、食事も自分で考えて栄養を摂取する。シンプルかもしれないが、明秀学園日立の選手たちは、そのことに愚直に取り組んだからこそ、一歩上のパフォーマンスが実現できているのだろう。

 金沢監督は今年のチームをこう評する。

「スケールの大きさでいえば、私が光星(八戸学院光星)の総監督だった時の、北條 史也(現阪神)、田村 龍弘(現ロッテ)がいた代より上です」

 恵まれたポテンシャルを発揮すべく、金沢監督は高度な打撃技術論を選手たちにたたき込んできた。今年の選手たちはどんな成長を遂げてきたのか?それは次回紹介したい。

(取材=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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