目次

[1]驚くほど成長した秋
[2]冬の競争でチームを活性化


 2年連続で秋の北信越大会を制した福井の強豪・敦賀気比。3季連続の甲子園出場はほぼ確実で、センバツでは7年ぶりの優勝を目指している。今回は新チーム結成から、ここまでの振り返りとセンバツに向けた展望を伺った。

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驚くほど成長した秋



上加世田 頼希

 昨夏の甲子園ではベスト8進出。この時、下級生でベンチ入りしていたのは4番三塁手の上加世田 頼希(2年)と控え捕手の渡辺 優斗(2年)の2人だけだった。

 上加世田と渡辺は侍ジャパンU-15代表でバッテリーを組んだ経験もあり、実績は申し分ない。東 哲平監督は甲子園から帰ってきた際に上加世田を主将に指名。「経験も人柄も良いものを持っているので、彼が引っ張ってくれれば」という指揮官の期待だった。

 だが、それ以外の選手は公式戦の経験が皆無で、新チーム結成当初は「不安しかなかったです」と東監督は話す。さらに雨天順延の影響で新チームのスタートが遅れ、練習試合も1試合しか組めなかった。甲子園期間中はコーチが残って1、2年生の練習を見ていたため、その意見を参考にしながらメンバーを組んだという。

 とはいえ、計算が立つのはバッテリーだけ。「経験を積ませてやれなかったので、なかなか県大会は上手く良い試合運びができなかったです」と経験不足が露呈した秋の県大会は準決勝敗退。3位でなんとか北信越大会に進むことはできたが、2019年夏から続いていた県内公式戦の連勝記録が29でストップし、課題の残る結果となった。

 県大会から北信越大会までの3週間は実戦力の向上に着手。練習試合も5試合行うことができ、「課題もたくさん出ましたし、良い期間になったと思います」(東監督)と充実した時間を過ごすことができた。

 特に状態を上げていたのが打線だ。「僕が期待していた以上に北信越大会前から打線は上がっていた」と東監督は戦前から手応えを感じており、実際に北信越大会では4試合で34得点、チーム打率.403の大当たり。中でも1番の浜野 孝教内野手(1年)が打率.533、3番の春山 陽登外野手(2年)が打率.500、1本塁打と結果を残した。

 「打線はしっかり得点を重ねてくれたので、投手も投げやすかったと思います」(東監督)と上加世田も打線の援護に応えるように試合を作る。1回戦と準々決勝は7回コールド勝ちを収め、準決勝の小松大谷(石川)戦は上加世田が打ち込まれたが、打線が奮起して10対8で勝利。「接戦の中で勝ち切れたところが、自分たちの中で強くなれたところ」(上加世田)と苦戦の中にも手応えを感じる勝利だった。

 翌日の決勝では上加世田が完封。星稜(石川)を相手に6対0の完勝で北信越大会を制した。県大会で3位だったことを考えれば、急成長を遂げたと言っていいだろう。「やっぱり、高校生は1試合1試合で力を付けてくる。それが自信になったら、さらにたくましくなってくるので、そういう意味では最高な上がり方をしてくれましたね」と東監督。高校生の成長の早さを体現する戦いぶりだった。

 明治神宮大会では近畿地区代表の大阪桐蔭と対戦。先発の川原 嗣貴投手(2年)に対して3回までに4点を奪ったが、4回からスーパー1年生とも称される前田 悠伍投手が登板してからは打線が沈黙した。上加世田も5回までは粘り強い投球を見せていたが、「大阪桐蔭さんの終盤の集中力というのは、僕たちより一段と上だったのかなと思います」(上加世田)と6回以降に打ち込まれ、4対8で敗戦。「全国でトップレベルの力を持っているチームですし、ウチがどれくらいの立ち位置で、どれだけの力の差があるかを肌で感じられたことはいい経験だと思います」と東監督はこの結果を前向きに捉えている。その中で課題に感じたのは、前田を打ち崩せなかったことだった。

 「右の速球派にはある程度対応できるというのは分かりましたが、左で140キロを超えて、変化球もキレる投手に手も足も出なかった状況なので、あのような投手をどう崩していけるかというのが課題になってくると思います」

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