21世紀枠推薦校・塔南が大阪桐蔭戦で感じたこと【後編】
今秋の近畿大会に出場して、来春のセンバツにおける21世紀枠の京都府推薦校に選ばれた塔南。甲子園出場経験こそないが、府内では安定して上位に進出しており、森脇 亮介投手(西武)や駒月 仁人捕手(元西武)といった選手を輩出している。
この秋は京都大会で龍谷大平安、京都外大西といった強豪校を下して準優勝。優勝した京都国際とも決勝で5対6の接戦を演じた。近畿大会では大阪桐蔭に0対7のコールド負けを喫したが、甲子園でも十分に戦えるだけの力はある。今回は来年に向けての展望を語ってもらった。
基礎的な力のなさを痛感
野原元気
決勝では京都国際に5対6で惜しくも敗れたが、準優勝という結果は大きな成果だった。近畿大会では初戦で優勝候補の大阪桐蔭と対戦。相手が決まった時は「何とも言えない顔をしていました」(野口監督)と選手たちも多少の動揺はあったそうだが、「自分たちの野球をするだけ」とすぐに切り替えることができたという。
しかし、試合は1回裏に5点を失い、立ち上がりから劣勢を強いられる。「大阪桐蔭さんは選球眼が良くて、低めのボールとか高めのボールに手を出してくれなくて、四死球が増えてしまった」と野原。思うような投球をさせてもらえず、ワンサイドゲームに持ち込まれてしまった。
その中でも集中力を切らすことなく、最後まで懸命に戦ったが、0対7で7回コールド負け。それでも「甲子園に出ているチームと対戦できたのは凄く大きな経験だと思う」(辻)とチームにとっては大きな財産となる一戦だった。
大阪桐蔭と対戦して、課題に感じたところは元々の体の力に差があることだったと野口監督は話す。
「バットを振る、球を投げる、足を運ぶ、走る、そういう基礎的な力が、まだまだ我々のチームは足りていないなというのが一番痛感したところですね」
11月からは週に1回、外部のトレーニングジムに通い、一人ひとりの筋力アップに力を入れるようになった。「筋力が付くと自信も出てくるので、この冬の課題として体を鍛えて心の面で成長してほしいと思っています」と指揮官は選手たちの心身の成長に期待している。
21世紀枠推薦校としての責任も胸に
選手を指導する野口知紀監督
そして、もう一つの課題が「言い合えるチーム」を作ることだ。今年のチームは真面目な選手が多い一方、レギュラーでない選手がなかなか一言を発するのを躊躇してしまうことが見受けられたという。この冬に底上げが進み、自分に自信を持てる選手が増えてくれば、野口監督の理想とするチームに近づいてくるはずだ。
競争を活性化させる一環として行っているのがアップの1500m走だ。指導者から特にタイムを指定しているわけではないが、毎日のようにタイムを計ることで、昨日より今日、今日より明日と目標を持たせることで選手の向上心を引き出そうとしている。こうした成果が来年に表れるかにも注目だ。
近畿大会では初戦で敗れてしまったため、一般枠でのセンバツ出場は絶望的となったが、21世紀枠で京都府の推薦校に選ばれたため、甲子園への道はまだ残されている。選ばれたことに嬉しさもあったが、それ以上に責任感が芽生えたと辻は話す。
「京都を代表して選ばれたわけなので、京都の代表として恥ずかしくない行動をして、全国に出ても自分たちの野球ができるように、この冬でより一層成長出来たらいいなと思っています」
21世紀枠の候補という名誉を得たことでチームはより引き締まり、練習の活気も出てきた。甲子園への距離感を肌に感じられたことは大きな財産となっている。今後に向けて野口監督は次のように語ってくれた。
「当たり前のことを当たり前にやったら、こんなことになるんだということを子どもたちが自分たちで経験してくれたのが、本当に良かったと思います。野球の技術力アップはもちろんですけど、野球以外のところでも高校生活を通じて人間として成長してほしいですね。そこの面での成長があったら、子どもたちもまた、さらに甲子園というものに近づいていけると実感していけると思うので、慢心することなく、謙虚に冬は鍛えていきたいなと思っています」
塔南が悲願の甲子園初出場を果たす日はそう遠くないかもしれない。
(取材:馬場 遼)