21世紀枠推薦校屈指の実力校・塔南(京都)はいかにして強豪私学を立て続けに破ったのか?【前編】
今秋の近畿大会に出場して、来春のセンバツにおける21世紀枠の京都府推薦校に選ばれた塔南。甲子園出場経験こそないが、府内では安定して上位に進出しており、森脇 亮介投手(西武)や駒月 仁人捕手(元西武)といった選手を輩出している。
この秋は京都大会で龍谷大平安、京都外大西といった強豪校を下して準優勝。優勝した京都国際とも決勝で5対6の接戦を演じた。今回は秋の大会を振り返る。
旧チームからの4人が中心
1500m走
京都市南区に所在する塔南は1963年に創設された市立校で、京都成章の監督として98年の夏の甲子園準優勝に導いた奥本保昭前監督が2008年に赴任してから急速に力を付けてきた。雨天練習場こそないが、十分な広さの専用グラウンドがあり、公立校の中では比較的恵まれている環境と言えるだろう。
チームを率いるのは昨年就任した野口知紀監督。奥本前監督の京都成章時代の教え子で、95年夏に甲子園初出場を果たした時のメンバーだ。指導の根底には恩師の教えがあると野口監督は話す。
「基本的には野球以外も高校野球だということでやっています。奥本先生とは自分が学生の頃を含めて四半世紀以上一緒にいさせてもらったので、その教えの中心には奥本先生の指導があります」
今年の夏は準々決勝まで勝ち進むも夏の甲子園で4強入りした京都国際に0対4で敗戦した。この試合でスタメンに出場していた2年生は4人いたが、「3年生が抜けるわけですので、全く近畿大会に行けるとは思っていなかったです。どこまで行けるかなということで、心配な点だらけでした」と野口監督は新チームに自信を持っているわけではなかった。
主将になったのは旧チームからベンチ入りしていた捕手の辻 智久(2年)。「責任感がありますし、物事をハッキリ言ってくれるところがあります」(野口監督)と周囲からの信頼も厚く、選手としても4番打者としてチームに欠かせない存在だ。
辻とともにチームの柱となるのがエースの野原 元気(2年)。140キロを超える速球を投げる本格派右腕で、チーム屈指の強打者でもある。以前はクリーンアップを打っていたが、この秋は1番投手としてチームを牽引。チームの起爆剤として野口監督も多大なる期待を寄せている。将来はプロ入りを目指しており、投打で注目の集まる選手ではあるが、「バッティングも好きですけど、ピッチングの方が楽しい」と本人は投手で勝負していきたいと思っているようだ。
そして、旧チームからレギュラーの二塁手・津田 昂典、三塁手・浅沼 海人、遊撃手・髙橋 颯汰(いずれも2年)もチームに欠かせない存在。彼らを中心に秋の大会を戦うことになった。
[page_break:名門からの勝利で自信]名門からの勝利で自信
野原元気
秋の京都大会で大きな山場となったのが、準々決勝の龍谷大平安戦だ。甲子園通算103勝の名門を相手に「変化球が上手く決まっていて、真っすぐがさらに活きていた」と野原が好投を見せて、互角の投手戦を披露。8回まで0対0の展開が続いた。
打線はなかなか龍谷大平安の先発・久門 晨平(2年)を攻略できなかったが、5番・藤井 倖稀(1年)の2点適時二塁打を皮切りに打線が繋がり、一挙6得点。野原はその裏も無失点に抑えて、大きな1勝を挙げた。
「自分たちのやってきたことが間違いではなかったという自信がついたのは間違いないと思います」と野口監督。準決勝でも京都外大西を相手に6対1の完勝を収め、11年ぶりとなる近畿大会の出場を決めた。躍進の要因は当たり前のことを当たり前にするということの積み重ねだったと野口監督は話す。
「私も現役の時に甲子園に行かせて頂いていて、『君たちが思っているほど甲子園に行くということは果てしなく遠いことじゃないんだよ』と話していました。『当たり前のことを毎日当たり前に積み重ねていったら結果的に甲子園の方が近づいてきてくれるから』ということを常に言っていたので、子どもたちがそれを本当に実践してくれて、当たり前のことを積み重ねてくれたことで近畿大会に出場できたことは非常に良かったと思います」
塔南ナインは胸を張って向かった近畿大会で、さらに大きな経験をする。詳細は後編でお届けする。
(取材:馬場 遼)