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3年連続センバツ狙う智辯学園、大器の雰囲気持つ新チーム

2021.09.30

 今夏の甲子園で初の決勝進出を果たした奈良の智辯学園。あと一歩届かなかった全国制覇の夢は、3年生から1、2年生に託される形となった。主力の大半が入れ替わったが、下級生にも力のある選手が数多くいる。3年連続のセンバツ出場を目指す同校の新戦力に迫った。

センバツV右腕「村上に似ている」エース大坪

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近江貫太を指導する小坂将商監督

 夏の甲子園でメンバー入りしていた2年生は投手の藤本 竣介田邉 涼介、二塁手の中陳 六斗の3人。中陳こそ準決勝、決勝でスタメン出場したが、藤本は1回戦でアウトを一つも取れずに降板、田邉に至っては出場なしと、目立った活躍をすることはできなかった。

 投手では西村 王雅小畠 一心、野手では山下 陽輔前川 右京などタレントが大量に抜けた中で始まった新チーム。今年のセンバツでベンチ入りしていた内野手の酒井 優夢(2年)が主将となり、スタートを切った。

「実績もありますし、周りも見れる子」と酒井を評価する小坂将商監督。甲子園を経験した選手として、名実ともにチームを引っ張る役割を指揮官は期待している。

 新チーム結成当初は「雰囲気が悪くて、まとまりがなかった」と酒井は危機感を抱いていたが、一人ひとりにキャプテンシーを持たせることを小坂監督が求めたことで、選手たちに自覚が徐々に芽生え、チームにもだんだんとまとまりが出てきた。

 始動が遅れたこともあり、練習試合は4試合しかこなせずに秋季大会を迎えたが、初戦は一条を相手に10対0の5回コールド勝ちと上々のスタートを切った。

「出来すぎました。練習試合では全然つなぐことができなかったんですけど、大会ではつなぐことができて、勝つことができました」と試合を振り返る酒井。選手全員が力を発揮し、今後につながる戦いをすることができた。

 今年のチームで強みとなりそうなのが投手力だ。春の大会で主戦を任された大坪 廉(2年)と藤本が秋以降は投手陣の軸として活躍することを期待されている。

 エースナンバーを背負う大坪は制球力が高く、ストレートとスライダーのコンビネーションで相手を手玉に取る投手。夏の大会は故障でベンチ入りすることができなかったが、一条戦では5回参考ながら完全試合を成し遂げた。スタミナも十分にあり、「村上 頌樹に似ている」と井元康勝部長も期待を寄せている。

 藤本は左の技巧派投手。甲子園では一つもアウトを取れずに降板したが、それは苦手とするリリーフ登板が原因だったと小坂監督は見ている。適性のある先発で起用されれば、しっかり試合を作ってくれそうだ。

 他にも夏の甲子園でベンチ入りした田邉や「度胸が据わっている」と小坂監督が評価する中山 優月(1年)などが戦力として期待されている。西村、小畠のダブルエースが抜けても質、量ともに申し分ない陣容を整えられていると言っていいだろう。

[page_break:一年生中心の攻撃陣、酒井主将がまとめる]

一年生中心の攻撃陣、酒井主将がまとめる

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酒井優夢主将

 投手は2年生が中心になる一方で、野手は下級生が元気だ。一条戦では1番から4番までを1年生で固めるという大胆な采配を見せた。

 1番を打つ外野手の松本 大輝は2代前の主将だった白石 陸(現近大)を彷彿とさせる左の巧打者。「能力が高くて、パンチ力がある」と小坂監督は評価しており、核弾頭として活躍を見せてくれそうだ。

 2番の川原崎 太一は俊足が持ち味の二塁手、3番捕手の高良 鷹二郎は攻守に能力が高く、これから中心選手になっていきそうな存在だ。4番一塁手の近江 貫太は身長183㎝、体重89㎏と恵まれた体格の持ち主で、OBの岡本 和真(現巨人)に似た雰囲気も感じさせる。長打力には定評があり、打撃練習の最中には小坂監督が熱心に指導している姿が印象的だった。彼が岡本や前川のような存在になることができれば、得点力が大幅に上昇するだろう。

 1年生がチームに活気をもたらしている中で、「2年生のレギュラーになってくる人間がもっとしっかりしてくれば、まとまりが出てきて良いチームになると思います」と小坂監督は2年生の奮起に期待している。

 キーマンとなりそうなのが、一条戦で5番、6番を担った北村 泰都と酒井だ。北村は捕手として今春のセンバツにもベンチ入りする予定だったが、大会前の故障でメンバーから外れていた。新チームでは強打の三塁手としてチームを引っ張る。酒井も小柄ながらパンチ力がある。この二人でどれだけ上位打線の1年生をカバーできるかがポイントになりそうだ。

 一条戦では好機で一本が出なかったが、「練習試合では結果を出してくれたので、次の試合に期待したいと思います」と小坂監督は信頼を置いている。

 レギュラーの大半が抜けた智辯学園だが、能力の高い選手は揃っている。後は公式戦を勝ち上がって経験を積むことができれば、全国でも戦えるチームになれるだろう。「秋は(試合を)やるごとに力が付いてくると思う」と小坂監督は今後の成長を期待している。取材後の25日に行われた橿原学院との3回戦も6対0で勝利。ベスト8進出を決め、近畿大会出場まであと2勝に迫った。

 チームとして最初の目標は近畿大会で結果を残して、来春のセンバツ切符を確実にすることだ。「常に甲子園出場という目標を持って練習をしていけば、一つ一つの相手に向かって行けると思うので、甲子園を大きな目標として捉えていきたいです」と酒井は意気込む。

 チームが変わっても甲子園出場、そして日本一を目指すということに変わりはない。「監督さんを日本一の男にさせたかった。それはできなかったのですが、後輩たちがやってくれるかなと思います」と話す前川ら3年生の想いを背負って、全国制覇という偉業に挑む。

(取材:馬場遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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