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26年ぶりの快挙!偏差値68の進学校・太田(群馬)の強さはノートにあった【後編】

2021.07.07

 7月10日より開幕する群馬大会。シード校は8チームとなっているが、そのうちの5校が公立校。選抜に出場した健大高崎はシード権を掴んだが、前橋育英樹徳、そして桐生第一とした強豪私学はノーシードに回っており、群馬県内は群雄割拠にあるといっていい状態だ。

 そんな群馬県内では偏差値68の進学校として知られ、春は前橋育英からコールドで勝利してベスト4入り。夏をシード校として迎えることで多くの注目を集めているチームが、県立太田だ。後編ではチーム作りと、春季大会を振り返っていく。

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前橋育英にコールド勝ち 県内屈指の進学校・太田(群馬)の大躍進の裏側

チームの今を書き示した『繋がりノート』

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太田が取り入れる『繋がりノート』 (3)

 「選手それぞれの考えを、私と仲間が知る『繋がりノート』というのをずっとやっているんです。選手たちに私の想いを伝えて、信頼関係を築く意味でもやっています」(岡田監督)

 6、7人で1冊のノートを1日交代で記入。その日の練習のテーマやメニューを最初に書き、その後に1日で自分が気づいたこと。そして前日にチームメイトが指摘していたことが今日はどうだったのか。改めて振り返って、仲間同士で1つの課題に対して考えを『繋いで』書いていく。

 最初は書くのが難しかった澤田主将だが、「ノートがあると、目的意識やチームの現状を把握できるので、とても役立っています」と今ではチーム作り。もっと言えばメニューを考える際には欠かせない太田の大事なアイテムだ。

 特に、秋季大会敗戦後を境に、書く量が増え始め、内容も充実してきたと添削する岡田監督。それに比例するように、グラウンドでも細かなところに選手たちが段々気づけるようになってきたという。文字や文章だけではなく、プレーでも選手たちがノートを通じて成長しているのを実感しながら、冬場を過ごしてきた。

 ノートを通じて自問自答し、自分とチームを見つめ続けて成長した太田が迎えた春の大会の初戦は秋に対戦した常磐。秋からの成長を示すには、これ以上ない相手で、「まずは常磐に勝とうと、燃える部分がありました」と澤田主将はチーム全体で常盤へのリベンジに気合が入っていた。

 試合は秋の点数の取り合いから打って変わり投手戦。1点を争う好ゲームが繰り広げられたが、最終回に後攻の太田がサヨナラ勝ちを決める1点をもぎ取って勝利を掴んだ。

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チャレンジャー精神を胸に

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バッティング練習をする太田の選手たち (4)

 この勝利で勢いに乗ったと同時に「『やればできる』と自信を持てました」と澤田主将。続く渋川にも12対0というスコアで勝利して、3回戦の前橋育英戦を迎えた。

 相手は甲子園優勝経験のある強豪だったが、澤田主将は「前橋育英に挑戦できることを楽しんで、しっかり準備しました」と、気持ちでは一歩も引くことなく、ポジティブな発想をした。指揮官の岡田監督は「序盤勝負だと思いましたので、とにかく最少失点で抑えながらどう戦うかでした」と先手必勝の姿勢で試合に臨んだ。

 試合は岡田監督のイメージとは逆で、先取点を許す苦しい展開。しかし「相手は格上。2、3失点は想定内でしたので、沈むことはありませんでした」と自信を失うことなく、澤田主将を中心に前橋育英に食らいつく。

 すると4回に相手にもらった四球にタイムリーが絡み一挙7得点。続く5回も3得点と主導権を完全に握った太田前橋育英をコールドで下したのだ。

 「出来過ぎの試合展開でした」と岡田監督も、このスコアには少し驚きを隠せない様子だった。一方で、「前橋育英さんに勝てたことは嬉しいというよりも、楽しかったです」と澤田主将は振り返った。

 その後、太田は大会を勝ち進み、26年ぶりに4強入り。目標のシード獲得と、快進撃といっていい勝ち上がりだ。だが、この戦績には澤田 大和主将は喜びと同時に悔しさを覚えていた。
 「目標だったシード権を掴むことが出来ましたし、持っている力を十分発揮できたので良かったです。けど、準決勝で負けたことは悔しかったですし、ベスト4の厳しさも知ることが出来ました」

 澤田主将をはじめ、選手たちは満足することなく、大会後も練習を重ね、いよいよ夏の大会を迎えた。7月10日の明和県央との初戦から甲子園を目指す戦いが始まる。澤田主将も岡田監督もともに、チャレンジャー精神で戦うことを誓ったが、それに加えて澤田主将はこんな一言も話していた。

 「負けた時は、『太田は勉強があるから。勉強があるからしょうがない』というのを聞くことがあります。けど、自分はそれが絶対に嫌といいますか、言い訳にはしたくないんです。自分たちは勉強も部活も100%全力でやっているので」

 公立校。進学校なんて関係ない。勝ったチームが強いということを、太田が群馬大会を勝ち上がっていくことで証明してくれることを期待せずにはいられない。

(取材=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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