「攻守ともに凄かったです」初の聖地目指す綾羽が大阪桐蔭から学んだもの【後編】
春季大会で初めて滋賀の頂点に立った綾羽。近畿大会でも大阪桐蔭相手に5対7と善戦し、この夏は甲子園初出場が期待されている。
野球部のグラウンドは草津市の学校から約5キロ離れた栗東市にある。選手たちは授業を終えると、自転車でグラウンドへと向かう。広さは両翼98メートル、センター122メートルと試合をするにも十分な広さだ。
チームを指揮するのはOBでもある32歳の千代純平監督。高校時代は主将として2005年秋の近畿大会に出場し、PL学園の前田健太(ツインズ)と対決した。田中鉄也元監督の下でプレーした3年間は甲子園にこそ出場できなかったが、充実した期間だったと振り返る。
大阪桐蔭戦で大きな収穫
練習中、集合しプレーの確認を行う綾羽ナイン
近畿大会の大阪桐蔭戦では矢野が4回7失点(自責点6)と打ち込まれ、「僕のボールがことごとく通じなかった」と話したが、「県大会とは配球をがらりと変えて、挑戦する気持ちで試合していたので、それなりに手応えを感じられている」と金山は前向きに捉えている。この経験を夏にどう活かすかに注目だ。
攻撃面では1番の中島と3番の金城がミート力の高さに定評がある。その間を打つ上村匠(3年)は大柄で身体能力が高い攻撃的な2番打者だ。彼らでチャンスを作り、勝負強い4番の高山が走者を還すのが得意とする攻撃パターン。繋がりのある打線で、着実に得点を積み重ねていけるのが強みだ。
春の優勝が必ずしも夏の結果に直結するとは限らないが、「実際に県大会を勝って終わる経験をしたことがなかったので、県大会を5連勝できて終えられたことで、より夏の優勝を具体的にイメージできるようになったのは強みだと思います」と千代監督は優勝の価値について話す。春と夏では日程や気候、相手からのマークが変わるとはいえ、優勝までの過程を経験できたのは大きなアドバンテージであると捉えている。
そして、甲子園初出場を見据える中での大阪桐蔭戦は大きな収穫となった。序盤は劣勢に立たされるも5回から登板した野村亮輔(2年)の好投で流れを引き寄せると、9回表に3得点。5対7で惜しくも敗れたが、全国屈指の名門校を相手に健闘を見せた。この試合で千代監督は大阪桐蔭の守備への意識に衝撃を受けたという。
「打力も凄かったんですけど、守備に対しても細かい意識を持っているのをキャッチボールから伝わってきたのが衝撃でした。ベンチの選手も含めて指示を通して動くというのが当たり前のようにできていたので、それはうちももっと詰めていかないといけないと思いました」
さらに中島は「次の塁を狙う姿勢がとても勉強になりました。全力疾走をしてくるので、プレッシャーはありました」と走塁面に脅威を感じていたと話す。どうしても投手の球速や打者のパワーに注目が集まる大阪桐蔭だが、対戦相手にとっては守備や走塁の細かいところに強さの本質を感じたようだ。
[page_break:自信のついた「守備」磨きをかけ初の聖地へ]自信のついた「守備」磨きをかけ初の聖地へ
金城颯把(綾羽)
近畿大会を終えてからは、より念入りに守備の強化を図っている。取材日も通常のシートノックの後に走者一塁のバント処理で二塁をアウトにする練習や走者二、三塁の挟殺プレーの練習など、細かい所まで詰めていこうという姿勢が感じられた。「やってきたことの方向性が間違っていなかったという自信を持てたことが、さらに夏に向けてモチベーション高くやれている要因だと思います」と千代監督。守備を中心とする野球にこだわりを持ち、夏の大会にも挑む構えだ。
2018年に近江のエースとして甲子園に春夏連続出場した金城登耶を兄に持つ金城は「(兄から)甲子園は独特な雰囲気の中で試合ができて、とても良い場所だと聞きました。夏の大会では絶対に甲子園に行けるように大事な場面で打てるようなバッターになりたいです」と意気込む。
ついに初めての甲子園出場が現実味を帯びてきた綾羽。この夏にその切符を掴み取ることができるだろうか。
(取材=馬場 遼)