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春は創部以来初V・綾羽 この夏は初の聖地へ【前編】

2021.07.01

 春季大会で初めて滋賀の頂点に立った綾羽。近畿大会でも大阪桐蔭相手に5対7と善戦し、この夏は甲子園初出場が期待されている。

 野球部のグラウンドは草津市の学校から約5キロ離れた栗東市にある。選手たちは授業を終えると、自転車でグラウンドへと向かう。広さは両翼98メートル、センター122メートルと試合をするにも十分な広さだ。

 チームを指揮するのはOBでもある32歳の千代純平監督。高校時代は主将として2005年秋の近畿大会に出場し、PL学園前田健太(ツインズ)と対決した。田中鉄也元監督の下でプレーした3年間は甲子園にこそ出場できなかったが、充実した期間だったと振り返る。

OBの千代監督 2017年就任から着々と実力つける

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綾羽を率いる千代純平監督

「とにかく猛練習の毎日でした。当時はあまり余裕がなかったのですが、その中で近畿大会や練習試合で甲子園常連校と対戦させてもらって、野球観が広がり、良い経験をさせてもらったと思います」

 卒業後は指導者を志し、滋賀大で教員免許を取得。その後、母校でコーチを務め、2017年春から監督を務めている。

 監督就任当初は、なかなか上位に進出できず、初采配となった春季大会では初戦敗退に終わっている。それでも強豪校と練習試合を重ねることでチームを強化。翌年には春4位、夏準優勝と盛り返した。「当時の選手たちが、よくついてきてくれたと思います」と指揮官は話す。

 この年の躍進を見ていたのが、現在の3年生。主将の高山心(3年)は「自分たちの代で初めての甲子園を掴みたいと思った」と上昇傾向にあった綾羽への進学を決めた。

 一昨年秋には県大会で3位に食い込み、近畿大会に出場。1回戦の履正社戦で高山と中島陸尊(3年)は1年生ながらスタメンに名を連ねていた。試合は一時リードを奪うも、5回と6回に5点ずつ奪われて、4対13の7回コールド負け。

 実力差を思い知らされたが、「速い球に対応しないといけないと思ったので、冬の間にしっかり振ることを意識したことが、それ以降の大会に繋がったと思います」と中島が話すように得られたものは多かったようだ。

[page_break:準決勝の壁破るには「守備」]

準決勝の壁破るには「守備」

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三塁手の高山心主将

 2019年春からは5季連続で4強入りと県内では強豪校としての地位を確立した綾羽だったが、準決勝の壁がなかなか破れなかった。昨秋も準決勝で近江に2対4で敗れ、あと一歩で近畿大会出場を逃している。近江戦での敗戦を機に千代監督はチーム方針や自身の考えを改める決心をした。それが守備を重視するチーム作りへの変換だ。

「まずはチームの隙をなくしていくために守備で主導権を握れるチームを目指そうという話をしました。今までは守備が苦手でもよく振れる選手を起用したり、個人の良いところをとにかく伸ばして、後からそれを形にしようという考え方がありました。長所を伸ばすことはもちろん大事ですし、それは今も変わっていませんが、チームとして考えた時には守備の部分で隙ができると、せっかくの長所も出せないまま試合に負けてしまうということを何回か経験したのです」

 昨秋の近江戦でも4回までに3点のリードを許してしまったが、それは失策でピンチを広げたことが原因だった。そこで千代監督は大胆なコンバートを実施。バッテリーと三塁手の高山、中堅手の金城颯把(3年)以外の守備位置を入れ替えた。

 打撃型の選手が起用されがちな一塁手に二遊間を守れる中原果也(3年)を回し、秋は遊撃手だった中島を二塁手で起用。遊撃手には守備力の高い北出大貴(2年)が台頭したことで、強固な内野陣が形成された。

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この春は成果実り初Vを経験

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エース・矢野航成

 守備重視の選手起用は見事に的中。春の滋賀大会では5試合で4失点の堅守で、1999年の創部以来、初めて県大会での優勝を果たした。「選手も最初は戸惑ったと思いますけど、方針を呑んで一生懸命やってくれました。この春の優勝も守備面で勝ち取れたゲームが多かったので、その成果が一つ出せたのは嬉しく思います」と千代監督にとって自信を深める結果となった。

 高い守備力だけでなく、それを引き出したバッテリーの存在も大きかった。エースの矢野航成(3年)はカーブ、カットボール、ツーシーム、チェンジアップと多彩な変化球を操る右腕。最速は133キロと強豪校のエースとしては球速がある方ではないが、制球力が高く、7回コールド勝ちとなった春の滋賀学園戦ではわずか58球で完封している。

 捕手の金山凌大(3年)も二塁送球で1.87秒を記録したことがある強肩の持ち主。「春季大会が終わってから動作に一番成長が見られる」と千代監督も高く評価する成長株だ。

 実は矢野の父・年啓さんと金山の父・裕政さんも国際情報でバッテリーを組んでおり、親子2代でバッテリーを実現させている。中学までは別々のチームに所属していたが、小学5年生の時に複数校で行う校外学習で知り合い、その事実を知ったという。

 入学当時は二人とも捕手だった。ところが、1年生の秋に打撃投手での投球が評価されて、矢野が投手に転向。昨秋から二人がエースと正捕手となり、チームを支えている。

(取材=馬場 遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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