帝京に大接戦!夏ノーシードでも侮れない西東京の隠れた注目校・聖パウロ【前編】
4月から始まった春季東京都大会だが、例年とは少し形が違う。ブロック予選が新型コロナウイルスによって中止となり、出場校が64チームに絞られた。都内の多くのチームが春を戦うことなく終える形なった。
ただ、なかには春の大会に出場すれば間違いなく躍進が期待されたチームもいる。その筆頭格が聖パウロだった。
帝京との対戦は驚くも気持ちで引いていなかった
帝京相手に1対2。東東京屈指の強豪相手に好ゲームを演じることのできるチームは、都内にそう多くない。そんな好成績を残したのが聖パウロだったのだが、この対戦カードは2019年の秋にも実現している。2年連続での対戦となっているのだ。
「帝京と2年連続対戦する前は、早稲田実と秋は対戦しているんですよ。だからここ数年は秋から都大会に出場することが出来ていないんです」
こう語るのはチームを指揮する勝俣監督だ。2009年より聖パウロの監督としてチームを率いる指揮官だが、チームは全国区の強豪の壁の前に秋は都大会の舞台から遠ざかっているのが現状だ。苦しい状況であることには違いないが、この対戦が決まったときの選手たちの雰囲気は「やってやるぜみたいな感じでした」と勝俣監督も頼もしさを感じていた。
そうした空気感を出していた選手たちは、内心では帝京戦をどのように思っていたのか。
「たしかに決まった瞬間は驚きました。けど、今年の帝京がどんなチームなのか研究するうちに、自分たちとは大きく差はないと感じました。だから『あとはやるだけだ』と思って試合には臨んでいました」(眞野 文太)
「相手が決まったときは1年生時にも対戦していたので、やっぱりビックリはしました。けど、負けるんじゃないかと思うよりも、勝てると思っていました」(深沢龍士)
今年のチームは旧チームからの経験者が多く、特にバッテリーが安定したこともあり、ある程度の守備の方で目途は立っていた。だが、それだけでは帝京と戦うだけの自信は湧いてこない。ここには何が関係しているのか。その答えは、クリーンナップを任されている岩渕 歩の話から答えが出た。
「練習試合で昌平さんとか日大鶴ヶ丘さんとやらせてもらって、勝つことが出来たことで、自信を深めることが出来ました」
元々経験者が残っているだけではなく、度胸のある選手が多いという世代で、「試合を通じて自信を深めることが出来ていました」と勝俣監督も成長を評価している。だからこそ、夏まではその自信を揺るがないものに出来るかどうかは現在の課題だという。
目に見えない意地、覚悟に帝京との差を感じた
確かな自信をもって帝京にぶつかっていった聖パウロ。試合は初回に聖パウロバッテリーのミスから帝京に2点を献上。直後の攻撃で1点を返し、1対2の1点ビハインドのまま試合が進む展開に。聖パウロベンチでは「勝てるんじゃないか」と気持ちは十分できており、いい雰囲気で戦えていたと選手たちは振り返る。
しかし、この1点をひっくり返すことが出来ず、聖パウロは1対2で敗戦。都大会に勝ち進むことなく秋を終えることとなった。2019年の秋は0対7で敗れたところから、1対2と世代が代わったとはいえ、成長を示す戦いだったともいえるが、選手たちの中では課題が多く見つかった一戦だった。
「初回の2失点は力のなさを感じましたし、ああした展開だからこそ、打線でカバーをしてあげないといけないと思うので、打撃強化という明確な課題が見つかりました」(新妻 凜)
「スコアこそ1対2でしたが、1点差という数字以上の違いといいますか、点差以上に大きく足りないものが見えた一戦だったと思います」(秋山 慈丈)
特に秋山の言っていた、点差以上に大きく足りないものについて、勝俣監督も肌で感じている部分だった。
「打たせてもらえなかったというのもありますが、抜けて欲しい打球が抜けない。ランナーを進めさせてもらえない。やりたいことができない。何か覚悟や努力、意地みたいな目に見えないところの違い、強さを感じましたね」
この目に見えない部分こそ、勝俣監督が選手へ指導するうえで最も大事にしている要素である。
「聖パウロに来た時は部員3人から始まって、初心者とかレギュラーではなかった選手もいたので、決して僕の価値観を押し付けることはせず、選手たちの本質を見てあげるようにしました。難しいことですが、そこを常に見てあげるようにしています」
(取材=田中 裕毅)