Column

ユニフォーム一新で秋4強 千葉英和はこの夏も不気味な存在

2021.06.08

 春は千葉学芸が創部初の優勝を決めるなど、今シーズンの戦国千葉はこれまでにない波乱の情勢となっているといっても過言ではない。夏の大会もどんな試合が繰り広げられるか2年分の想いをもって楽しみにしたいが、そのなかでも気にしておきたいのが千葉英和の存在だ。

 鮮やかな黄色のユニフォームが今シーズンから一転してスクールカラーの緑に変更。多くのファンに驚きを与えたが、昨秋の県大会では中央学院などの強豪を破ってベスト4。あと1勝で関東大会出場のところまで勝ち進んだことでも大きな話題となった。

最低限の決め事を作ったことがチーム成長を促進した

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新ユニフォームとなった千葉英和

 選手たちに話を聞いても「秋ベスト4まで勝ち進むなんて想像もできませんでした」と戦っていた本人たちも、大躍進には驚きを感じていた。監督としてチームを指揮する仁井田監督も「県大会に出られるかどうかでした」と新チーム発足時は不安を抱えながらの船出だったことを明かす。

 「夏休みは8月1日から16日までしかない中で、3年生の独自大会への期間もあり、並行して新チームは準備を進めていました。大変な時期でしたが、色んなことに手を出しても時間が足りなかったので、夏休みの前半は徹底して基本となるプレーの確認に時間を費やしてきました」

基本の確認といっても、ひたすらノックやバッティングをだけするのではなく、仁井田監督は実戦練習にも力を入れた。「生きたボールを打つ、捌くなかで成長をしてほしかった」という意図を持ち、少ない練習時間を最大限有効活用。夏休みの後半から練習試合を敢行。10チーム以上と試合を組んで、秋の大会に向けて一気にチームの仕上げに突入した。

 ただ戦い方を含め、仁井田監督は今年のチームの形を見出すのに苦労をしていた。

 「手探り状態でした。どのポジションに誰がベストなのか。どの打順に誰を置くことが一番良いのか。先発投手の起用など、とにかく試験的にオーダーを考えながら戦っていましたね。そうすると、後半から打線のつながりが出てきたので、『この形なら大会もいけるかな』というイメージが湧いてきたんです」

 主力の志村 眞斗も「徐々にチームとして仕上げることが出来ていたと思います」と成長には手ごたえを感じていた。ただ、チームの成長を促進させたのは2つの要素が大きく関わっている。

 1つは最低限の決め事を作ること。チームをまとめる梶尾 風真から「チーム全体に統一感がなかった」という話が出てきたが、柱となるような徹底事項が作れずにスタートしていた。そこで仁井田監督が作った徹底事項が、得点圏を作ることだった。

 「練習試合では得点圏を作ることが課題になっていたんです。それが夏休みの終わりになり始めると、徐々に作れるようになってきたんです。そこでタイムリーが出るかは別問題ですが、大会までの短い時間で難しいところまで選手にやらせるのは難しいと思っていたので、最低でも得点圏を作ることを徹底しようと決めました」

 バントや進塁打と言った1つでも先の塁へ進めるための攻撃をする。千葉英和は打力を武器に秋は勝ち抜いたが、その裏側には得点圏を演出するチーム方針が明確化されていたことが関係していた。

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「逆転できる」という雰囲気作り

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トレーニングに励む千葉英和ナイン

 そして2つ目は常にビハインドから追いかける意識だ。

 「練習試合でも完封負けすることがあったんですけど、選手たちには試合が始まった段階から『常にビハインドの展開だよ。だからどうやって戦おうか』と声をかけてきました。そうやってチームの雰囲気を上げるしかない方向に導いて、選手たちを常に前向きな姿勢を作れるようにしてきました」

 元々、例年以上に明るい雰囲気を持った選手が多い今年のチーム。その良さを武器にするため、そしてチームワークを活かすために仁井田監督は、劣勢の状況からの戦いを意識させ続けた。また富永部長によるサポートをはじめ、選手と指導者間のコミュニケーションも円滑にできたことで、チームが文字通り一丸となって戦う集団として秋季大会を迎えた。

 ブロック予選を危なげなく突破した千葉英和。県大会初戦・富里も12対3と攻撃陣が奮起して2回戦の中央学院戦に駒を進めた。「力の差はわかっていたので、何とか食らいついていきたいという話をしていました」という仁井田監督だが、試合展開は千葉英和にとっては苦しいものに。

 中央学院はプロ注目右腕・細谷 怜央が先発。千葉英和は先に1点を許す展開だったが、打ったヒットは8回まで0本。ノーヒットノーランの展開だった。手も足も出ない状況だったが、「監督が自分たちの気持ちをもう一度あげてくれたので、勝つことが出来ました」と細谷から大記録を阻止するヒットを放った志村が話すように、千葉英和は最終回に2点を奪取。土壇場で勝ち越しに成功して、中央学院から白星を掴んだ。

 「良い打球は飛んでいても、相手野手の正面を突いてしまっていたんです。だから『1本ヒット出たら、もしかしたら流れは変わるかもしれない』と思っていたんですけど、8回までノーヒットノーランで。

 僕らの方が少し暗くなっていたんですけど、選手たちはヒットが出なくても、守備でエラーが出ても明るい雰囲気で。だから期待は十分していたところで、最終回に志村のヒットから逆転ができました」

 その後、3回戦・千葉商大附にも勝利すると、準々決勝・千葉明徳にはサヨナラ勝ちでベスト4進出を決めることになった。仁井田監督は「これまでやってきたことを思い出して冷静に戦えていましたし、これまでと変わらず元気で、よく耐えて逆転してくれました」と戦いを振り返ると、梶尾主将も千葉明徳戦をこのように振り返る。

 「これまで勝ってきて自信を持つことが出来ていましたし、チーム一丸になって今できる100%を実行して戦えたから、サヨナラ勝ちを掴むことが出来たと思います」

 そして、勝てば決勝進出。そして関東大会への出場が決まる準決勝で木更津総合にあたった。試合は千葉英和が先に点数を奪いリードする展開。強豪・木更津総合相手に、主導権を崎に握れたことは大きいように感じられるが、「先制をしたことで気持ちに緩みが出来てしまった」と梶尾主将は分析。仁井田監督も同じことを指摘した。

 「若干ですが『(関東に)いけるかも』と考えてしまったかもしれません。あと1勝で関東大会と言うことで、今までとは違った空気感があって、僕としては感じて欲しかったんですが、それが硬さになってしましましたね」

 これまでは目の前の試合に無欲で挑んだことで勝ち星を掴んでいた千葉英和ナイン。だが、関東大会を意識するがゆえに余計な雑念が混ざり、今まで通りの試合ができず。木更津総合には1対6で敗れると、3位決定戦・専大松戸戦では1対9というスコアで敗退。関東大会の舞台をあと少しで逃した。

 ただ、新チーム発足時のことを考えれば、公式戦の場を通じて経験を積むことが出来たことは大きな成果だった。また、秋から新たな緑のユニフォームで挑み、結果を残せたことは「良いイメージを持たせたいと思っていましたので、結果を残せたことは良かったです」と仁井田監督も胸をなでおろしていた。

 秋ベスト4に入ったことで追いかけられる立場となった千葉英和。志村は「冬場の練習を活かして、秋と同じような結果を残せるように頑張りたい」とコメントすれば、梶尾主将は「今できる100%を徹底してやっていきたい」と意気込みを語り、迎えた春季大会は中央学院と再戦した。

 秋は2対1と接戦を演じることが出来たが、一冬超えた中央学院打線を千葉英和が食い止めることが出来ず、0対11で敗退。悔しい結果となり、来る夏の大会はノーシードで迎えることになった。再び上位進出へ「今できることのベストを尽くせば、しっかりと戦えると思うので、きっちり準備をして迎えたい」と仁井田監督。

 秋みせた躍進の再現へ、緑に変わったユニフォームを身に纏った千葉英和の選手たちが活躍する姿を見せてくれることを期待したい。

(取材=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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