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6度甲子園出場の北大津(滋賀)の現在。今年は滋賀県屈指右腕を擁し、躍進を狙う

2021.04.20

 現在の滋賀県は近江滋賀学園の2強が牽引するが、夏3回、センバツ3回の甲子園出場を果たしている県立校・北大津の復活が大いに期待されている。

 そんな今年の北大津は戦力が揃い、躍進も期待できる顔ぶれとなっている。
指導者、選手に共通する思いは「強豪・北大津復権」だ。

環境面、取り組み面から復活の兆し

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寺嶋監督の話を聞く選手たち

 京都駅からJR湖西線で20分ほどの距離にあるおごと温泉駅。ここが北大津の最寄り駅とな
る。住宅街の中にある北大津高校は運動部が活動する広大なグラウンドがあり、野球部は練習試合もしっかりとできる恵まれた環境にある。

 さらにネット裏の近くにいくと、設備が行き届いていることが分かる。まずネット裏には観覧席が
あり、屋根付きのブルペン、ネット裏の2階建ての小さなプレハブ施設には、2階は応接室、1階は
冷蔵庫、洗濯機など選手にとっては嬉しい設備が多い。手作り感満載の設備。こうした施設には
寄贈されたOBの名前が刻まれている。躍進を遂げた先輩たちが後輩たちのために環境を整え
てあげたい思いが伝わってくる。

 寺嶋監督は「野球がうまくなりたい選手、とことん練習に取り組みたい選手にとっては理想的な環境」と話す。寺嶋監督は膳所高校出身。京都教育大卒業後、愛媛マンダリンパイレーツでプレー。現役時代は内野手として活躍した。かつては上位争いを繰り広げていた北大津だったが、
強豪・北大津を作り上げた宮崎 裕也監督の退任後は勢いを落とし、それに伴い部員も減り、昨年卒業した3年生はわずか2人しかいなかった。

 そんな中、強豪復権のために尽力したのが寺嶋監督をはじめとしたスタッフ陣である。選手との距離感も近く、全体練習後の個人練習で寺嶋監督は打撃投手となり、選手に打撃指導を行い、守備の個人練習では現役時代、内野手として活躍した寺嶋監督が実演し、軽快な守備を見せ、お手本を示している。

 また、上林 裕樹部長が投手を担当し、投手の適正に合わせ、技術指導。各スタッフも選手の技術練習や個人練習に付き添いながら指導を行っている。

 練習試合でも強豪校と練習試合を行える環境にあり、今年の3月では済美高校など四国の強豪校、さらにセンバツ前では中京大中京とも練習試合を行った。

 強豪校と練習試合をしながら、全国レベルの学校はどういうレベルにあるのかを触れることが
できる。選手がその気ならば、浮上できる要素は備わっている。

 そしてキーとなる選手はレベル、意欲ともに高いのだ。

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復活を担う5人のキーマンたち

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上坂真人(北大津)

 その1人がエースの上坂 真人だ。171センチ78キロと恵まれた体格で、風貌からお山の大将という雰囲気を感じさせる。2.3年生で17人しかいなかったチーム構成だったからこそ上坂の存在はとても頼もしい。

 そんな上坂は大津瀬田ボーイズ出身で4番打者として活躍。当時には比叡山の主砲・島口 裕輝、速球派右腕・山田がいた。そんなチームの主力打者として活躍した上坂の前には県内外の強豪から誘いがあり、その中には甲子園でも躍進を遂げた学校があった。それでも上坂にとって北大津は小さい時から憧れていた強豪校だった。

 「小さい時から甲子園に進む北大津に憧れていて、地元なのでよく見ていました。もちろん部員も少なくなっていて、甲子園に進んだ時と比べると力が落ちているのも知っていました。だからこそ自分の力で北大津をもう一度強くしたいと思ったんです」

 意欲を持って入学した上坂だが、独立リーガーとして活躍していた寺嶋監督からすれば、取り組み面、メンタル面でも未熟な選手に映った。最初は「カップ麺を常に食べているような選手でしたね」と振り返る。しかし寺嶋監督の地道な指導により、取り組み面も改善され、今では「大人扱いができる選手となりました」と自立できるまでに成長したと評価する。

 実際に上坂のプレーを見ると豪快な風貌とは思えないほど器用な投球を見せる。140キロ前後の速球は威力があり、左打者の内角にも強く投げられ、多彩な変化球を交える。さらに取材時まで高校通算18本塁打を記録しており、投打の柱だ。

 さらに北大津は好選手が多く揃う。佐野樹は178センチ75キロと均整がとれた体格から120キロ後半の速球と切れ味鋭い変化球を投げ込む右腕で、上林部長からもこの冬にかけて大きく成長した投手と評価する。

 さらに遊撃手とセンターを兼ね、勝負強い打撃を見せる主将の大林 光希、グラブ捌き、身のこなしの良さが光る遊撃手・岸田力斗は県内トップレベルの守備力の高さがあり、強打の捕手・藤沢 晟一朗と経験者が多く、昨秋も優勝した滋賀学園と接戦を演じた。

 そして今春の県大会でも北大津ナインは強さを発揮しており、2回戦の彦根翔西館との一戦では上坂が7回3安打4奪三振無失点、打っては4打数2安打1本塁打と活躍を見せ、7回コールド勝ちを決めた。

 3月の強豪校との練習試合で得た経験をしっかりと公式戦で発揮している北大津の次なる相手は強豪・綾羽だ。北大津がさらなるステップアップへ向けて、負けられない一戦となる。

(取材=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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