復活を目指す伝統校・上宮のキーマンたち【後編】
1993年春優勝、1989年春準優勝など、甲子園で輝かしい実績を残してきた大阪の名門・上宮。しかし、1997年春を最後に甲子園から遠ざかっており、昨秋も5回戦で旋風を巻き起こした大阪山田に4対7で敗れた。
今年は打力がウリのチームで、32年ぶりとなる夏の甲子園出場を目指している。復活を目指す名門の現在地に迫ってみた。
強力な上宮野手陣
金山 朋矢
戦力面に目を移すと、野手の顔ぶれが非常に充実している。主将の金山は50m走が5.8秒の俊足で、高校通算13本塁打とパンチ力もある。打順は主に1番を任されており、春先の練習試合では先頭打者本塁打を放つ場面もあったという。「周りがよく見えて、指示もよく出す」と村田監督の信頼も厚く、プレー、行動の両面でチームを引っ張っている選手だ。
「打順も1番なので、自分が先陣を切って、どれだけ周りを引っ張っていけるかがカギだと思うので、学校生活でも野球でもみんなが前を向けるように引っ張っていきたいと思います」と頼もしい。チームに勢いを与える存在として、今後も活躍を見せてくれそうだ。
打線の中心となるのが4番を打つ大薗。高校通算17本塁打の長距離砲で、「ここ一番の勝負強さは彼が一番」と村田監督が認める強打者だ。
フライボール革命の実践者で、「監督からも自分はホームランを求められていると思う」と本塁打へのこだわりが強い。夏までに通算35本塁打到達を目標としており、今後のアーチ量産に期待がかかる。
正捕手の吉岡 伶(3年)も注目の選手だ。二塁送球で最速1.89秒を記録する強肩と力強い打撃が持ち味で、打順は5番に座ることが多い。「山田戦ではパスボールが負けに繋がってしまった」と秋以降は守備力の向上に力を入れてきた。
今年の上宮は打撃型のチームだが、「守り切って、1対0で勝つくらいの野球をしたいと思います」と守備面でもレベルの高さを見せつけようと意気込んでいる。
他にも川村 勇太、京極 駿、濵口尚真といった2年生も順調に力を伸ばしており、主力選手としての活躍が期待されている。一冬を越えて大幅に成長した選手も多く、レギュラー争いは激しくなりそうだ。
「成功体験を持って大人にならせてあげたい」
伊藤大智
野手陣が強力な一方で、新チーム結成当初から投手力には不安を抱えていた。その中で、秋にエースナンバーを背負ったのが、高山元吉(3年)。スライダーやカットボールを駆使しながら内野ゴロを打たせていくタイプの右投手だ。
この春は両足のシンスプリントでメンバーから外れたが、「気持ちは全く切れておらず、真面目にサポートを頑張ってくれているので、夏の大会では背番号1を獲ってくれることを願っております」と村田監督は復活を待ち望んでいる。
高山の代わりに春の主戦投手として活躍しているのが、2年生の伊藤大智だ。ストレートの最速は128キロと決して速くはないが、「コントロールが良くて、アウトローのキレは非常に良い」と指揮官の評価は高い。夏に高山が復帰して、伊藤と二枚看板で臨むことができれば、タフな夏の大阪大会も十分に乗り切れるだろう。
上宮が最後に甲子園の土を踏んだのは、24年前と現在の選手が生まれる前の出来事である。それでも現代はネット社会で情報を得やすい時代ということもあり、選手たちは過去の実績な把握しているそうだ。大薗も動画サイトで元木 大介(現・巨人ヘッドコーチ)がいた頃の試合映像を見たことがあり、「カッコよくて、憧れのユニフォームでした」と話す。
伝統校であるが故に様々なプレッシャーもあることだろう。村田監督はそうしたものを認識しつつも目線は目の前の選手たちに向けられている。
「OBの方々や学校の期待を胸に精進している次第ですし、伝統を継承することも大切なことなんですけど、今預かっている子どもたちを何とか結果を出させて、成功体験を持って大人にならせてあげたいなと思っている方が強いです」
黒田 博樹(元広島など)ら数々の名選手を輩出し、甲子園でも高校野球ファンの印象に残る戦いを見せてきた上宮。今も選手たちは名門のプライドを背負いながら、懸命に目の前の白球を追っている。2021年は上宮の復活を印象付ける1年になるだろうか。
(記事:馬場遼)