好投手、好打者、強打者揃いの仙台育英。真のウリは?【前編】
今年はエース・伊藤樹、主砲・吉野蓮などタレントを擁して宮城県大会9連覇。そして東北大会も連覇達成。OBには佐藤由規、上林誠知、郡司裕也など数多くのプロ野球選手を輩出。高校野球に携わる人間であれば全員が知っている名門・仙台育英。
須江航監督が2018年1月に着任して今年で4年目。「過去3年間からアップデートしているので、濃い内容ができています」と十分な手ごたえを感じている現在のチームに今回は迫っていく。
日本一からの招待
伊藤樹(仙台育英)
この言葉を掲げ、現在も活動を続ける仙台育英。昨秋は県大会9連覇、東北大会連覇と今年も仙台育英の存在を大きく知らせることとなった。この結果について「選手みんなで励まし合いながら成長できたことが大きかったです」と島貫丞主将は語る。
ただ須江監督の目には新チームの姿はこのように映っていた。
「まず投手力が高いですね。あと走力は全国屈指だと思っています。ですので、打力さえ伸ばしてあげれば得点力が変わっていくシンプルかつトーナメントを勝ち上がるのに最適なチームでした」
投手陣をまとめる伊藤も今年のチームについて「今年は足を使える選手が多いです」と説明する。加えて伊藤、そして吉野からは「この学年は野球の本質を分かっている選手が多い」と思考力の高さも、これまでの学年にはない強みだと実感している。
これらの武器を発揮するべく、秋季大会までの期間は試合をこなしながら守備力と走力を徹底的に磨いていった。選手たちが語っていた野球の本質とはどんなことを指しているのだろうか。その答えは須江監督によって明かされた。
「野球というスポーツの競技性をきちんと考えると、陣取りゲームだと思っています。人がベースという陣を取っていきながら、ホームを取れれば得点になるゲームなので、走力が一番大事な要素になってきます」
先述したが、昨秋9試合で34盗塁を記録しているように、数字面からでも走力の高さが伺える仙台育英。その秘訣として、「リードの距離は1センチ、1ミリまでこだわって練習をしています」と吉野が語るように、それほどまでに須江監督は「走力」を重要視して、野球というスポーツに向き合っている。
長打力=打球速度+飛距離
木村航大(仙台育英)
では須江監督のなかで選手たちにどれほどのスピード感を求めているのか。
「最低基準は一塁駆け抜け3.8秒。求めるものは3.7秒ですね。3.5秒を計測するようならチームでもトップクラスのレベルにありますね」
選手それぞれのスイングが異なるため、公平を期すためにもあえてバットを振ってからスタートをせずに、きちんと構えた状態からスタートを切らせる。しかも主導でタイムを計るのではなく、センサーでタイムが計測できる光電管を使用するこだわりぶり。
他にも盗塁のタイムにも設定タイム3.25秒を設けるなど、選手たちには数字を明確に提示することで指揮官の求めるレベルを伝えている。
だが走力が劣る選手もなかにはいる。そういった選手たちが、残り少ないスタメンの座をかけて勝負する項目が長打力だと須江監督は解説する。
「ウチでは長打力=打球速度+飛距離と定めています。打球速度は速ければ野球の間を抜いてヒットになります。飛距離に関しては、たとえアウトになっても遠くに飛ばせればランナーを進めることが出来ます。なので、この2つの要素を合わせて長打力として、選手たちを比較します」
その他に、相手に陣(ベース)を取らせないための守備範囲、投力といったファクターを見ていきながら、スタメンやベンチ入りの選手たちを絞っていく。これが須江監督のスタイルなのである。
だから選手の育成方針も既に明確だ。須江監督は毎年、毎月の3つの目標を明記した年間スケジュールを選手たちに提示。それを通じて巧い選手ばかりではなく、スケールの大きい選手を育て上げる。つまり、勝利と育成の両立を成り立たせるようなスケジュールを組んでいるのだ。
こうしたスケジュールや数字を測ることに「自分のレベルがわかって何を伸ばせばいいのか。取り組みが変わります」と主砲・吉野は実感。主将の島貫もチームをまとめる上では効果があることを語っていた。
「この時期に何を伸ばせばいいのか。目標を選手間で話し合って確認しながら練習が出来るので、テーマ性をもって練習ができています」
(取材=田中 裕毅)
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