6年連続甲子園出場を狙う花咲徳栄。選手の進化を支える独自のアイテムとは
センバツ甲子園出場32校が決まったが、3000校以上の学校が夏へ向けてスタートを切っている。その中で楽しみな学校なのが、花咲徳栄だ。2015年から続く6大会連続の夏の甲子園出場を目指す花咲徳栄は、140キロ台の速球を投げる主力投手が5名おり、さらに打線も巧打者、強打者も揃い、スキがないチーム構成となっている。
花咲徳栄の恐ろしさといえば、夏にかけてさらに最強チームに仕上がるということだ。長年、花咲徳栄を支えるアイテム。そしてその真相に迫る。
なぜ花咲徳栄の選手たちは足袋をはくのか?
浜岡陸主将(花咲徳栄)
「選手が一番伸びる時期といえば、この12月から2月。だから選手たちには『一冬超えて成長した』と実感してもらいたい。そういう練習のプログラムを作るのが指導者の役割だと思っています」
と語るのが花咲徳栄を全国トップクラスの名門へ育てた岩井隆監督だ。1992年に花咲徳栄のコーチに就任し、2001年に監督に就任。2015年から続く6年連続で甲子園に出場。まさに一冬超えて夏に強い選手、チームを作り上げている。
では何があるのか。そのヒントは足元にあった。
選手たちの練習を見ると、スパイクをはいていないことに気づく。花咲徳栄の選手たちは足袋をはいているのだ。
花咲徳栄の選手たちが履く足袋(花咲徳栄)
オフ限定で12月~2月の3か月間で、雨などでグラウンドが使えない日以外は足袋を履いたまま、トレーニング、投球練習、打撃練習、守備練習といった技術練習をこなす。
なぜ足袋で練習するようになったのか?それは岩井監督が足袋をはいて練習した経験者だからだ。
桐光学園出身の岩井監督は現役時代、遊撃手として活躍。その時、師匠として慕う稲垣 人司監督の勧めで桐光学園では同時期に足袋をはいて、岩井監督も効果を実感したという。
その後、稲垣氏は花咲徳栄の監督に就任し、継続して足袋を導入し、現在に行きついている。一見、古典的なトレーニング。近年はトレーナー主導でメニューを組むチームがある中で、ある意味、斬新的だ。実際に花咲徳栄はウエイトトレーニングが取り組めるウエイトルームもあり、多くの強豪校でアスレティックトレーナーをしている方からサポートを受けるなど、花咲徳栄のトレーニングは多岐にわたる。
その中でも岩井監督が足袋をはいてトレーニングする理由は効率性だ。最後の夏にかけて選手たちの技量がピークに持っていくためには、計画的な練習計画、絶対的な量が必要となる。昨秋は選手たちのミート力を高めるために、徹底とした打撃練習を行っていた。
岩井監督も長い指導者生活で、いろいろな練習を試してきた。その中で足袋を履きながら普段の練習をすることで、技術力向上をしながら、足の指を鍛え、踏ん張る力を身に着けることが選手たちのポテンシャルを引き出すうえで、効率性が高いと考え、オフ期間に限定して取り組んでいる。
では選手たちはどう感じているのか。その効果とさらに注意点についても説明をしていきたい。
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富田隼吾(花咲徳栄)
今年の守備の要であり、堅守を誇る遊撃手・浜岡陸は効果を実感している。
「この冬でスムーズに足が運べるようになったと思います。軽いのもそうですし、薄いので裸足で走っている感覚です」
ただ最初は地面を強く前方への打球処理には苦労したようだ。
「とにかくどうすればうまく動かせるのか、苦労しました」
そこで足の指をどう踏ん張ればいいのか、地面にかむ感覚を養っていったところ、次第に動けるようになったようだ。
また4番・富田隼吾も打撃の時に効果を実感している。
「このままでやると最初は滑ります。自分は軸足で踏ん張って、その力を使って回転を与えるタイプなので、滑って苦労しました。それでも指で土をかむ感覚でいくと、振れることができました。たまにシューズを履いて練習をするのですが、強いスイングができます」
そして身体能力の高さはチームトップクラスの外野手・飛川は「一塁の駆け抜けでは、これがすべてではないですが、コンマ何秒かは速くなりましたし、スパイクをはいてみると、本当に体のキレが出てきたことを実感します」
効果てきめんな足袋練習がオフ限定なのは、故障のリスクがあるからだ。スパイクと比べてフィット感がないため、足の骨折を招くケースがある。そのため足袋の下にあるソックスを二重に履いたり、テーピングをしたりしているようだ。
はっきりいえば、高負荷なトレーニングになるため、誰もがお勧めできるメニューではない。それでも花咲徳栄の選手たちは上達のために、故障を防ぎながら、パフォーマンスアップしてきたのはこれまでの歴史が証明している。
意欲的に自分の課題に向き合い練習してきた選手たちを見ると、今年の花咲徳栄は怖い。そう実感できるものがあった。
花咲徳栄の選手たちがが打撃、守備、投球で大事にしていることはテーマ別でコラムでお届けします。お楽しみに!
(取材=河嶋 宗一)
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