なぜ県8強・神戸弘陵(兵庫)はライバル・報徳学園にリベンジ出来たのか【後編】
甲子園のお膝元であり、全国でも有数の激戦区である兵庫県。昨秋の県大会では神戸国際大附が頂点に立ち、近畿大会ベスト8まで勝ち進んだ。他にも明石商や東洋大姫路など実力校が揃う地区だが、そのなかの1つである報徳学園を破ったのが神戸弘陵だった。
旧チームは野島 勇太を擁していたが、これまでにも飯田 優弥などプロ野球選手を輩出している実力校だが、いかにしてライバル・報徳学園を破ったのか。
後編では県大会の歩みを中心に振り返っていく。
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報徳学園に勝つために神戸弘陵(兵庫)が始めた日本一の下克上【前編】
すべての歯車がかみ合った県大会での快進撃
エースの時澤 健斗
そして迎えた県大会の初戦・赤穂戦では4対0で勝利。幸先よくスタートを切ると、「抽選が決まった段階で『ここが勝負だぞ』と言い続けてきました」という2回戦で報徳学園と激突した。秋にリベンジを誓っていた神戸弘陵にとっては念願の一戦。練習試合の悔しさを晴らすチャンスがやってきたのだ。
「試合前には『お前らならできるぞ。勝つぞ』と言っていただいて、チーム全員が勝つつもりで試合に臨みました。試合中にも声が絶えなかったので、とてもいい雰囲気で戦えていました」(林 天翔)
試合は1点を争う展開となったが、エース・時澤健斗が報徳学園の久野 悠斗との投げ合いを制して3対2。「時澤が粘り強く投げてくれて、500球連続ティーが効果を発揮しました」と林主将も笑顔を浮かべる勝利で神戸弘陵はベスト16に進出した。
すると続く東洋大姫路との一戦では左のエース・山河斗真の好投があり、延長の末に2対0で勝利。ベスト8まで勝ち進み、近畿大会の扉がもう少しまで迫っていたが、神戸国際大付の前には1対6で敗れた。
「守り勝つチームを目指してきたのですが、神戸国際大付戦では5つのエラーが出ましたし、打線も1点しか取れなかったので、悔しいです」(林主将)
だが先輩たちと同じベスト8まで勝ち上がれたことも踏まえて時澤は「ピンチを切り抜けて接戦を勝つことが出来たのはチームにとって大きかったと思います」と手ごたえを感じている。
個性を掛け合わせて再び頂点へ
グラウンドに掲げられた『執念』の2文字
ただ報徳学園との練習試合をきっかけに「練習に取り組む姿勢など大きく変わりました」とチームが成長したことを改めて語った林主将。岡本監督も、「『報徳に勝たないと上には行けない』とずっと言い続けてきたので、あの敗戦が大きかったです」と振り返った。
そんな岡本監督の指導は、選手たちに対してあまり型には込むような練習をさせないのが特徴的だ。
「自分が大学時代にそうやっていたこともありますが、人それぞれ動き方が違うので、型にはめ込むことはしません。結果として雑に見えてしまうかもしれませんが、それぞれが試行錯誤して見つけた動きやすいフォームなら忘れないので」
固定概念にとらわれずに前向きに様々なことに挑戦していく姿勢。それが神戸弘陵を強くして、秋8強まで導いたが、春以降は追われる立場となる。林主将は、「ベスト8では悔しい思いをしたので、課題を克服して春と夏は優勝を狙いたいです」と意気込みを語った。
時澤、そして山河も春と夏に向けて「しっかり勝って優勝を狙いたいです」と確かな目標を語った。指揮官である岡本監督は「スピード系のトレーニングを増やしながら、春以降も投手を中心に勝負所で自分たちの野球が出来るようにしたい」とコメントを残した。
激戦区・兵庫の頂点へ、春以降に神戸弘陵がどのような野球を見せてくれるのか楽しみにしたい。
(取材=田中 裕毅)