4度目の甲子園へ。中国8強・岡山学芸館(岡山)の上位進出のキーワードは『チーム力』【後編】
2019年の夏の甲子園出場し、隣県の広島代表・広島商を下すなどベスト16進出。これまでに春夏合わせて3度の甲子園出場実績を持っているのが、岡山学芸館の現在だ。
今年のチームはプロ注目・仲村竜がいるなど実力者が揃うチームに仕上がっており、中国地区大会はベスト8まで勝ち進んだ。ここに至るまでにどのような道のりを歩んできたのか。
後編では今年のチームの歩みについて迫っていく。
前編はこちらから!
甲子園3度出場の新鋭・岡山学芸館はいかにして台頭してきたのか【前編】
中国地区大会優勝の目標を掲げて新チーム発足
岡山学芸館の練習模様
数値化という目に見える結果を出し続けることで、選手たちを常に成長させ続けてきた佐藤 貴博監督。ただ、今年のチームは今までにない手ごたえを感じながらスタートを切った。
「計算できる投手が揃っていたことが一番大きいですね。そして打力があったので、例年のチームと比較してもトップの実力はありました。だから目標には“中国地区大会優勝”を掲げましたが、十分可能だと思いました」
その代わりに、毎年自信を持っていた守備は課題を感じていた佐藤監督。秋の大会は打ち勝つケースが多かっただけに、「守備がしっかりしていれば優勝できていたかもしれない」と悔しさを滲ませる。しかし、それほど打力は高く、自信を持っていた裏返しとも考えられる。
ではどういった取り組みを通じて、打力強化に繋げたのか。それはバスター打ちに答えがあった。
「前のチームから出た反省で、ボールの見送り方や捉え方を鍛えるために10分間バスター打ちを入れるようにしました。そうするとポイントまで最短距離までバットが出せるようになりますし、バットを引く動作に合わせて軸足にきちんと重心を乗せられることで、泳ぐことが減って低めのボール球を見極めることが出来るようになりました」
空振りを誘うボールに手を出さない。それでワンバウンドを投げれば1つ先の塁を狙える可能性が増える。そうしたバッテリーへのプレッシャーをかける意味でも、バスター打ちを取り入れたが、それが結果として打力強化に繋がったのだ。
スコアを見ても、予選2試合と県大会2回戦までは2桁得点をマーク。準々決勝も7対3と興譲館を下してベスト4まで勝ち上がっていた。
[page_break:チーム一丸となり再び聖地へ]チーム一丸となり再び聖地へ
岡山学芸館の練習模様
ただここからが甘くなかった。準決勝の創志学園戦は2対0とリードしている展開から逆転を許して敗戦。「継投のタイミングを改めて学ぶことが出来ました」と佐藤監督は振り返るが、3位決定戦で倉敷工を9対7で下して何とか中国地区大会へ進んだ。
初戦の石見智翠館には11対7の乱打戦に持ち込んで勝利したものの、準々決勝・下関国際には1対5で敗戦。武器だった打線を封じられる形となった。
「負けた2試合とも打線のつながりに欠ける内容となってしまいました。だからこそ、どれだけ相手のことを思ったり、人のことを考えてあげられるかがプレーにもつながることを感じました」(酒井 尋如主将)
佐藤監督もグラウンド以外の時間が大事だと感じているが、それは酒井主将とは違う意味でポイントに置いている。
「ウチは総合力で戦うチームなので、全員野球で戦う雰囲気が大事ですが、それはグラウンド以外の家や学校での時間の方が長いので、そっちでどれだけ考えて過ごせるかがポイントだと思っています」
酒井主将は新チームスタート時に「次はお前らだ。甲子園は任せたぞ」という一言を先輩方からもらったとのこと。その約束を果たすため、そして2年ぶりの甲子園への課題は明確になっている。
「春、そして夏を戦う体力づくりが大切だと思いますが、あとは守備でのミスを減らすことが大事だと思います」
そして佐藤監督は春への意気込みでこのような言葉を残した。
「対応力は欲しいと思っています。ただスタメン9人、もしくはベンチやスタンド含めて全員で相手投手をどうやって攻略するのか。だから時には自分が犠牲になっても良いと思えるような選手たちを育てたいと思います」
夏を見据えて常にチームを作り続けように佐藤監督は意識されているとのことだが、今年はどのような成果を上げるのか。岡山の新鋭は今もなお夏に向けて準備を続ける。
(取材=田中 裕毅)