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ライト65メートルの河川敷・東京(東京)は目標と実戦意識で甲子園を目指す!

2020.12.23

 都内のチームはグラウンドが確保できず、練習のやりくりに苦戦をするチームが多い。そんななかでも都立小山台のように、短時間で限られた敷地を最大限活用して結果を残しているチームもいる。多摩川の河川敷にグラウンドを持つ東京高校もそんな学校の1つだ。

夏への長期目標と1か月ごとの中間目標

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東京高校の選手たち

 陸上選手・ケンブリッジ飛鳥さんをOBに持つなどスポーツが盛んな東京。野球部も今回の東東京大会はベスト16進出。確かな足跡を残している。だが大田区のグラウンドに足を運ぶと意外な環境だった。

 校庭ではテニス部が練習をしており、野球部が練習するスペースがない。その代わりに近くの河川敷にグラウンドがあるものの、長方形となっており形はいびつ。さらにライトは65メートルしかなく、普段の体育の授業から使う敷地のため、練習前の整備は欠かせない。

 また学校の敷地はグラウンド部分だけのため、他は東京都の土地。そのため一般の方々が通り、バッティング練習のときは周りに選手が立たないといけない。テントなども立てることが出来ないなど、厳しい環境だ。

 そんななかでも東京は今夏の東東京大会でベスト16進出を果たした。このことを指揮官の松下監督は「秋の悔しさと自粛期間の選手とのコミュニケーションが繋がったと思います」と分析する。

 ただスタート時は苦労した。能力としては決して高くなく、試合では思うような展開にすることが出来ない。それでも投手力と打力を磨き、夏の大会でベスト8に入る目標に向かって、コツコツ練習を重ねてきた。

 「やるときに集中することができ、地道に自主練習を続けることが出来る選手ばかりでしたので、期待はしていました」

 ただ初戦の桐朋戦に2対5で敗戦。結果を残すことはできなかった。目指す夏の大会ベスト8に向けて冬場は体力強化のためのトレーニングを軸に、土台となる部分の積み上げ、打力強化に努めた。

 しかし冬場は試合が出来ない分、モチベーションを維持するのが難しい季節。そこで東京を支えるのが、月ごとに各選手が目標を立てることだ。

 「野球のことや自身の人生のことなど1か月の目標を中間目標として作り、そこに向かって頑張れるようにしています。また目標を達成することで、それぞれが自信を付けられると思うんです」

[page_break:練習環境の差に負けない実戦意識で再び勝ち上がる!]

練習環境の差に負けない実戦意識で再び勝ち上がる!

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アップをする東京の選手たち

  実際に今年のチームをまとめる田口主将は「目標があると高い意識をもって練習に取り組めます」とコメントをすれば、ピッチャー兼キャッチャーの重役を担う大場はこのように語る。

 「目標に向かって努力が出来るだけではなく、達成できた時には自信を深められるので試合でもチャレンジ出来るので、モチベーションがかなり変わってくると思います」

 それと同時に限られた環境だからこそ、きっちり実戦を意識して1つ1つの練習に打ち込む。多くの学校が大事にするところだが、「出来る環境でやるしかないのですし、広いグラウンドを持っているチームと差が出来る」という危機感をもって東京も徹底して取り組むようにしてチームを作り上げた。

 実際に取材当日はキャッチボールの中に実戦を想定した5つのメニューが組み込まれていた。
1.外野の距離でゴロを捕球してからワンバウンドで投げる。
2.外野の距離でフライを捕球してからワンバウンドで投げる
3.塁間でゴロを捕球してから投げる
4.ショーバンを捕球してから投げる
5.逆シングルを捕球してから投げる

 これは「野球は様々な場面があるため、やったことのない動きも出てくるため、少ない練習時間でそれらに対応できるようにやっています」とのことだが、こうして限られた時間と環境でも東京は実戦力を磨いている。

 そして自粛期間を経て、7月に独自大会が開幕。戦っていく中でチームの結束が固まり、気がつけばベスト16まで勝ち残った。目標のベスト8はあと少しで逃す結果となったが、松下監督が取り組んできたことが結実した。

 そして現在のチームが始まったが、「すぐに決まりました」と田口主将が語った目標は「甲子園出場」となった。例年であれば3、4日かけて決める目標だが、今年は即決。それだけ目指すべきところは明確となっていたが、現実は甘くなかった。

 例年以上に実戦を増やして挑んだ秋の初戦で城西大城西の前に5対13で敗戦。大場は「本番に力を発揮できず、投手力に課題が残りました」と語れば、田口主将は野手陣の課題をこのように語る。

 「城西大城西との体格差はあまりありませんでしたが、スイングに差がありました。また勝負所でミスが続いて大量失点に繋がり、流れを譲ってしまいました」

 松下監督も「試合で流れを掴めていませんでした」と同じように課題を感じている。勝負所でも落ち着いてプレーをするためにも、どれだけ普段の練習からきちんと実戦を想定できるかが大事なカギを握っている。

 春以降の巻き返しへ。選手中心にチームを作りながら、さらに高みを目指していくが、「まずは1人1人が体を大きくすること。そして課題を克服することで違うチームが作れると思います」と松下監督は期待を膨らましている。

 田口は「体を大きくして速球に力負けしないスイング。徹底された守備、1点でも多く奪う走力を磨いていきたいです」と意気込みを残した。もう一度、夏に結果を残すべく勝負の冬は既に始まっている。

(取材=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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