なぜ白鴎大足利は打力向上にこだわるのか?【後編】
旧校名の足利学園時代に2度、白鴎大足利になってからも2度と計4度の甲子園出場の実績を持つ白鴎大足利。北浦 竜次投手(日本ハム)や大下 誠一郎選手(オリックス)といったプロ野球選手も輩出しており、栃木県内では常に上位進出を狙える位置につけている。
だが夏はここまで作新学院に9年連続での甲子園出場を許しており、この秋も準々決勝で青藍 泰斗に1対3で敗れるなどあと一歩のところで壁を破ることが出来ていない。後編の今回は、打撃力に力を入れる背景やチームの主力選手を紹介していく。
前編はこちらから!
4度甲子園に出場した白鴎大足利(栃木)打ち勝つべく取り組む5つのバッティング練習【前編】
全国レベルを見据えた打撃中心のチーム作り
中沢 匠磨(白鴎大足利)
秋季大会で浮き彫りとなった得点力不足を解消するため、「ボールを飛ばす力」と「ボールを捉える力」の向上を目指す白鴎大足利。だが藤田監督は、以前から打撃力を中心としたチーム作りを目指していると言い、その中で工夫した打撃練習法を考案してきた。
打撃力を重視するようになった理由は2つある。1つ目は、守備力を中心とした野球を展開する作新学院に対抗するため、そして2つ目が全国でも勝てるチーム作りをするためだ。
「選手はみんな打倒・作新学院と言いますが、作新学院さんの方は常に全国を見ています。我々も全国を見ていかないと、作新学院さんを倒すことはできないと私は思っています。
例えば、東海大相模さんなどの全国レベルのチームに勝つにはどうしたら良いか考えると、あの打線を0点に抑えるのは不可能に近いので打撃力無しでは勝てません。東海大相模さんと練習試合をさせていただいた時も、プロ入りした投手でも5点以内に抑えたことはないので、6点以上を取れる打線がないと勝てないと思います。そこまで追い求めないと勝てないと思いましたし、逆にそこまでやることができれば作新学院さんとも勝負できると思っています」
バッティングを行う上で、藤田監督が大事するポイントの一つに「開きを抑える」ことがある。練習の中でも「開きを抑える」ための工夫がいくつもあった。
ティー打撃は軸足をタイヤに置いた状態で行うメニューがあり、これは前に重心が乗ることで上体が開きづらくなり、股関節の内側に体重が乗る感覚を養っている。
また、反対に踏み込みの足をタイヤに置いた状態でのティー打撃も行っており、こうすることで体重移動は出来なくなるが、前に少しでも体重を乗せようとする感覚を意識させている。
この秋は3試合で10得点と課題が残った白鴎大足利。一冬越えて、伝統の打撃力を取り戻すことができるか注目だ。
[page_break:中沢、磯を中心にまずに春の飛躍を目指す]中沢、磯を中心にまずに春の飛躍を目指す
グラウンドに挨拶する白鴎大足利の選手たち
春の躍進に向けて中心となるのは、主将の中沢 匠磨だ。本来であれば4番でエースの実力を持つが、この秋は肩の痛みで代打のみでの出場だった。投手としては最速142キロの力のある直球を投げ込み、アベレージも130キロ後半を記録する。また打撃でもチーム1の長打力を持ち、まさに大黒柱と言える存在だ。
中沢は不完全燃焼だった秋の悔しさを糧に、まずは春季大会で夏への足掛かりを作りたいと意気込む。
「自分が投げれなかった不甲斐なさをしっかりと感じ、この冬で球速だけでなく体の面でも一回りも二回りも成長したいと思います。今は悔しさを春に取り返したい一心で、一生懸命トレーニングなどに力を入れています」
藤田監督も、春以降は中沢が中心となってチームを引っ張っていくことに期待している。現在も無理はさせずに、寒い日はノースローで調整させるなど、夏に影響が出ないことを第一に考えている。
「無理をすれば秋も投げることができたと思いますが、夏に影響が出ればその方がかわいそうなので我慢させました。今のうちにトレーニングやケアに専念して、夏に満足にプレーできるように調整しています。来年には雑誌にも載るようになると思いますよ」
また、唯一前チームから試合に出場している磯 卓真選手も注目の選手だ。50メートル走が6秒台前半の俊足が武器で、守備でも前チームでは外野、新チームではセカンドを守るなどユーティリティ性も高い。シュアな打撃も魅力で、打順は2番や3番に座りチャンスメイクにポイントゲッターにとマルチに活躍を見せる。
「先輩たちの代から甲子園に行きたい気持ちが強くあり、自分たちの代になって経験者が少ない中で自分がもっと引っ張っていかないといけないと思っていました。自分がダメだとチームが迷ってしまうので、自分が矢印となって引っ張っていくこと意識して秋は戦いました」
中澤、磯を中心に、2014年春以来となる甲子園出場を目指す白鴎大足利。栃木県は作新学院だけでなく、潜在能力の高い青藍 泰斗や秋に決勝進出を果たした石橋に國學院栃木など例年になくレベルが高い。その中でどんな成長、戦いを見せるのか注目していきたい。
(取材=栗崎 祐太朗)