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浦和学院、花咲徳栄らへ挑戦する夏4強・正智深谷(埼玉)が磨くもの

2020.12.12

 2020年は今までにないイレギュラーな一年だったからこそ、結果を残したチームは記憶に刻まれるものになるだろう。それは埼玉の正智深谷も同じだ。今夏の独自大会では上尾東農大三と言ったチームが所属する北部地区を勝ち抜く。

 準決勝では狭山ヶ丘の前に敗れたが、4強に入りメットライフドームでプレーした。調整が難しい中で結果を残した正智深谷とはどういったチームなのか。

チーム作りは第2段階へ

浦和学院、花咲徳栄らへ挑戦する夏4強・正智深谷(埼玉)が磨くもの | 高校野球ドットコム
正智深谷の走塁練習の様子

  取材当日の正智深谷のグラウンドに足を運ぶと、メインとして取り組んでいたのはケースバッティング。ランナーを置いた状況で練習をしていく多くの学校でも取り組まれているメニューだ。しかし、正智深谷は少し違う。

 ホームからファーストにはカラーコーンが2つ置かれ、ラインが引かれている。また二塁と三塁の間の走路にもラインを引いている。走塁に対して高い意識をもって取り組んでいることがよくわかる。

 「理屈はわかっていますが、口で伝えてもなかなか覚えきれないですし、プレーをしていく中で忘れてしまうこともあります。ですので、道具を使って出来るだけわかりやすくしたうえで、反復練習をすることが大事だと思っています」

 そう答えるのはチームの指揮を執る田中監督だ。そもそも正智深谷のなかでは、毎年強化するものの順序は決まっている。まずは守備。もともと田中監督が目指すものは守備のチームでもあり、守備の強化からチーム作りを始める。そこが出来上がったうえで2番目は走塁だ。

 打力は簡単に身につかず成長に時間がかかるため、継続的に取り組む必要があると田中監督は考えている。その代わりに走塁を強化していくことで、点数を取る手段や引き出しを増やそうとしている。だから2番目は走塁なのだ。

 またこの夏はベスト4にまで勝ち進んだゆえに、新チームのスタートは遅れてしまった。ただ下級生を清水部長に任せ、ひたすら守備力を磨いてもらったおかげで、守備には目途が立ったこともあり、走力アップに重点を置くことができている。

 では正智深谷ではどういったことに注意を置いて練習をしているのか。まずは走路から、4番の山田 智也に話を聞いた。

 「ホームと一塁間に置かれたコーンは、駆け抜けるのであればコーンの間をそのまま走って駆け抜けます。ただ、途中で外野まで転がったことがわかれば途中から膨らみ、最初から外野に飛ぶことがわかっていれば、大きく膨らむようにします」

 二塁と三塁の間にあるラインに関しても「三塁で膨らまないように走路を書いています」と徹底して速く、最短で回れるようにしている。この取り組みを通じて「速さはだいぶ違うと思います」と山田は感じており、効果は出ている。

[page_break:守備力を武器に春以降に上位進出目指す]

守備力を武器に春以降に上位進出目指す

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田中監督の話に耳を傾ける正智深谷ナイン

 また耳を傾けると「左肩」という声が聞こえてくる。このことについて、再び山田に話を聞かせてもらった。

 「『左肩』というのは前進守備をしているショートの左肩に右足を揃えてあげることを言っていて、そうしてあげることで、しっかりとリードをとれるので、1本でホームに返りやすくしています」

 そして気になることがもう1つ。それは二塁ランナーが極端に右足を大きく上げることだ。これについて田中監督に解説をしてもらうと、このように語る。

 「高く上げてあげることで、空中でゴーなのか。それともバックするかの判断を出来るように時間を作っています」

 こうした取り組みを経て、「次の塁を狙う意識が強くなりました」と大谷 悠斗が語るように次第にチーム内に走塁意識が浸透してきた。さきほどのコーンに然り、具体性をもって理屈をきちんと選手たちがわかるように伝えて練習をする。そこが正智深谷のスタイルではないだろうか。

 そんな正智深谷だが、「甲子園がなくなってどうなるか」という不安を抱えながら3年生とともに自粛明けから練習を再開してベスト4進出。そこから新チームが始まったために大会までの準備は短かった。

 主将は捕手としてチームを支える田村 偉楓となったが、「打力が低かったので、捕れるアウトをしっかりとろう」という守備のチームを目指して練習を重ねた。それに伴った守備力強化はもちろん、バッテリーやポジショニングの部分も力を入れてきた。

 特にポジショニングに関しては「ライトの山田を軸に連携を取るようにしています」とセカンドを守る岡 圭吾、そしてセンターの坂本 航輝が語るように連動しながら守備体系を敷けるようになってきた。

 しかし県大会の初戦で正智深谷昌平と対戦し、1対12で敗戦。夏の勢いそのまま秋を勝ち切ることが出来なかった。今回敗れた昌平を始め、浦和学院花咲徳栄と言った県内の強豪、上位校を倒さなければ正智深谷の甲子園の道は開けない。

 その壁を超えるために、必要なことは何なのか。田村主将の答えは守備力だった。

 「ある程度打たれることは仕方がないと思うので、余計な四球は出さないこと。そして打ち取った当たりをどれだけしっかりアウトにできるかだと思います。そのうえで、攻撃で掴んだ1点をキチンと守りたいと思います」

 だからこそ現時点で大切なのは走力で攻撃の幅を広げること。そして長いオフが明けた時に攻撃力も加われば、上位校とも十分戦えるだけの戦力は整う。再び上位進出を果たすためにも、正智深谷はオフシーズンに力を付けてさらなるレベルアップを図る。

(取材=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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