東海大菅生ら打倒私学に燃える都立の雄・日野を支える競争意識
「入学する時は都立で強いといえば日野というイメージがあったので決めました」(木下 孔晴)
数多くの都立高がある中で毎年注目を集める都立日野。東東京の都立小山台、都立城東らとともに度の大会でも期待を寄せられ、今秋の都大会はベスト16まで勝ち進んだ。関東地の前に1対4で敗れ去ったものの、今大会も確かな爪痕を残した。
来春、そして来夏も確実にマークされる都立日野だが、なぜ毎年結果を残し続けることが出来るのだろうか。
根底にあるのは競争意識
ノックを受ける都立日野ナイン
[stadium]市営立川球場[/stadium]が近くにある都立日野は、普段の練習であればサッカー部や女子ソフトボール部も一緒にグラウンドを使うような環境で選手たちは日々練習に打ち込む。西東京には優勝した東海大菅生や準優勝・日大三、そして国士舘など強豪私学と呼ばれるチームがひしめく激戦区だ。
そんななかで都立日野が結果を残せるのはただ1つ。それは競争意識だ。
「うちはずっと底上げで選手たちを育ててきました。激しいレギュラー争いで毎年チーム力を高めていますので、今の選手たちにも『今のメンバーがそのまま夏のメンバーだと思わないでね』と伝えています」
チームを率いる嶋田雅之監督は決して決めつけをするのではなく、調子の良い選手を優先的に起用する。当たり前のことかもしれないが、そこを嶋田監督は徹底して行い、試合の中で見つけた課題を練習で克服していくことで成長を促している。
そうした試合を通じて生まれる内発的なものだけではなく、外発的な働きかけもある。マネージャーが作業される小部屋には数字がずらりと並んだ表が掲示されている。中身を見ると、身長や体重に加えて防御率など様々な数値をマネージャーが計算して表にまとめている。
「自分の成長を数字として出ているので実感がわいてきて、モチベーションが変わりますし、チームメイトの数字も見られるので、感じるものがあります」(島 叡司)
内発、そして外発的に競争意識が生まれるようにしている都立日野。では、実際に選手たちの中ではどのように感じているのか。
「自分はライトのスタメンとして守っていますが、先輩の方が自分より守備が良いので、バッティングで結果を残した時は、『負けない』と思って競争意識は強くなります」(廣岡 太平)
「1桁の背番号をもらっても試合に出られるわけではないので、そこから競争意識が生まれますし、実際に相手チームを見て『負けないようにうまくなろう』と考えるので、そこでも競争意識が生まれています」(樋口 恵斗)
先輩の背中を見て学び、強豪私学を破る力を付ける
エース・木下 孔晴
他にも島からは「センスの良い1年生が大勢いるので、そこでは危機感と競争意識があります」と頼もしいチームメイトに強い刺激を受けている模様。ただ入学時から競争が出来るワケではない。練習を重ねていくうちに力がついていき、次第に競争できるようになっていると嶋田監督は感じている。
やはり日々の練習をどう過ごすのかがポイントになる。その点に関しては「しっかりと練習をする伝統がありますので、毎年チームを作れます」と嶋田監督は語っている。その想いは選手たちに質問をしてもわかってきた。
「過去に夏の大会で準優勝やベスト4に入ったりしていますので、恥じないプレーをしないといけないと思っています」(樋口主将)
「1つ上の先輩方がいるときから、先輩にも負けないつもりで練習をやってきました」(木下)
競争意識、そして徹底した練習が都立日野を支え、毎年チームを作り上げてきた。だからこそ、今年のチームは「期待感はあまりなかった」というスタートだったとのこと。
それは選手たちも同じだ。旧チームからの経験者である樋口主将は「先輩たちとは声掛けから違いましたが、主将として声かけたり、ミーティングを重ねて力がつきました」とコメント。
他にも木下は「経験者が少ないので不安がありました」と語れば、島は「打力はありましたが、他は不安でした」とそれぞれ感じるところがあった。
それでも、実戦を常に意識してチームを鍛え上げて秋季大会に突入。初戦の都立城東との好ゲームを1対0で制すると、選手たちの中で自信がつき秋の大会ベスト16まで勝ち進んだ。
これまでと比較すると高い吸収力が光ったこともあり、成長スピードは速かった。だが、関東一の厚い壁の前に敗れ去った。春の大会はシード校としてスタートするが、現時点では体力強化に打ち込み、チームの底上げに時間を割いている。
「相手を圧倒できるようなチームになって強豪私学にも勝って、優勝を目指してやっていきたいです」と最後に意気込みを語った樋口主将。強豪私学の壁を壊し、聖地・甲子園への道を切り開けるか。都立日野は勝負の冬にすべてをかける。
(取材=田中 裕毅)