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テーマは「自治・自律」。千葉商大付が行う一人一人に責任を持たせる練習とは?

2020.12.10

 秋季千葉県大会でベスト16に進出した千葉商大付。秋の16強はこれで4年連続となり、夏も2018年にベスト8、2019年、2020年と2年連続でベスト16と堅実に実績を残してる。チーム内では「今年もベスト16の壁を破れなかった」の声もあるが、強豪がひしめく千葉県でこれだけ安定した実績を残し続ける点は見過ごすことはできない。

 さらに今年のチームは得点力不足だったこれまでのチームと違い、5試合で36得点と打線に力があり更なる上位進出へ期待の持てるチームだ。そんな今年の千葉商大付のここまでのチーム作りと春に向けた取り組みに迫った。

経験不足が否めない中でも4年連続のベスト16

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千葉商大付が行うダイナミックストレッチ

 千葉商大付が、夏の千葉県独自大会を終えたのは8月10日。そしてそこから、秋季千葉県大会地区予選を迎えたのは8月22日と、新チームの準備期間は2週間も無い状況であった。加えて前チームは3年生中心の構成だったこともあり、公式戦を経験した2年生もおらず大きな不安を抱える中でのスタートだった。

 「秋のブロック予選までは、時間も少なくチームを軌道に乗せるまでが大変でした。3年生チームに求めていたことを、全て新チームにも求めてしまっていた自分に気がつくまで、空回りの連続だったと思います。新チームの選手たちと向き合えるようになって、少し落ち着きました。負けの連続が気が付かせてくれました。それでも、ブロック予選を勝ち抜けるのか不安で仕方なかったです」

 そう語るのは、チームを率いる吉原 拓監督だ。秋はこれまで3年連続でベスト16の成績を残していたことから、最低でも「16強」のラインは死守しなければという気持ちがあり、選手と共に吉原監督にも焦りがあった。

 砂川 優大主将も、当時の不安な心境を明かす。

 「前チームでは2年生は誰もベンチ入りしてない状態で、活動自粛期間もあり練習がなかなか積めていない不安もありました。力不足をすごく感じて、練習試合でも負けが続いてチームの雰囲気もなかなか上がりませんでした」

 実際、大会に入ってもなかなか思うような戦いは出来なかった。だが、何とか1点差ゲームを粘り強く勝ち抜き地区予選1回戦の国分戦を突破すると、2回戦の昭和学院戦も苦しみながらも5対2で勝利。本番で何とか2勝を挙げて、千葉県大会本戦へ駒を進めたことでチームに安堵と自信が生まれた。

 「県大会に行けないのではないか、このまま勝てないのではないかと、正直私も不安に感じていました。その不安の中で2試合を何とか接戦で勝利できて、そこからチームが一気に伸びたように感じます。県大会まで1ヶ月空いたのですが、その期間はすごく選手たちは充実していましたね。もう恐れるものはないといった感じで」

[page_break:「自治・自律」をテーマに3つのチームに分けて冬を過ごす]

「自治・自律」をテーマに3つのチームに分けて冬を過ごす

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砂川 優大主将と増田 涼人選手(千葉商大付)

 地区予選を勝ち抜いたことで勢いに乗った千葉商大付は、千葉県大会でも1回戦、2回戦と突破して4年連続のベスト16入りを果たす。準々決勝を懸けた千葉英和との3回戦は、取られては取り返しての壮絶なシーソーゲームとなったが、結果は惜しくも6対9で敗戦。打力に手応えを感じる一方で、守備面に課題を残して秋を終えた。

 「細かいミスが絡んで大量失点に繋がりました。この冬で基礎を一からしっかり固めて細かい部分を徹底してやっていきたいです。また打線も連打が続いて点が取れましたが、打てない時はとことん打てなかったり、何としても出塁しようという意識もまだ足りないように感じています。すべての面でレベルアップしていきたいです」(砂川主将)

 取材に伺ったのは11月上旬。練習は技術練習と平行して、オフシーズンを見据えたトレーニングにも力が入っており、その運営方法にも大きな特徴があった。1、2年生を合わせた48人の部員を3チームに編成して、グランド練習、トレーニング、課題練習の3つの練習を曜日ごとにローテーションで回していく。主将とは別に各チームにはリーダーがおり、そのリーダーを中心に1日の練習メニューはすべて選手たちで決定していくのだ。

 このような取り組みを行う背景には、チームのテーマである「自治・自律」があると吉原監督は説明する。

 「私が先頭に立って走り続けるよりも、選手たち同士でやっていった方が最終的にはチームが活性化して効果があると思っています。ただ、48名では一人一人の責任が小さくなってしまうので、16名の小さな組織に分けて各チームに自治を持たせることにいました。もちろん最終判断は私たち大人がやりますが、メンバー16人で意見を出し合ったり、YouTubeで見た練習を導入したり、失敗してもいいので選手たちに決定権を持たせるようにしました。

 そうすることで、選手たち一人一人に覚悟が出てきて、その3チームがまた1つのチームになったときに2倍にも3倍にも化学反応を起こすんじゃないかと。この3チーム制の練習が、ここからどこまで機能するのか楽しみです」

 軸となる選手に焦点を当てると、4番で捕手の増田 涼人選手が打線の中心となる。活動自粛期間が明けた7月から、突如打撃力が開花したという増田選手。7月以降から5本塁打を放っており急成長を見せている。

 急成長の要因を増田選手は「元々構える時にバットを立てるようにしていましたが、始めからバットを寝かせるようにするとスムーズに出るようになりました」とフォーム修正があったことを明かす。また春に向けては「崩されてもしっかり飛ばせるバッターになりたいので、足腰を重点的に鍛えたいと思います」と語り、さらなる成長を誓った。

 また1番打者として打線を牽引する續丈選手も、シュアな打撃で打線の火付け役を担う中心選手だ。續選手については砂川主将も「足が速くてチャンスを作るという点で、チームに勢いをつけてくれる存在」と話し信頼は厚い。

 まずは春季大会で、千葉商大付の選手たちがどこまで成長した姿を見せるのか注目だ。

(取材=栗崎 祐太朗

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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