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山梨の勢力図に変化。関東ベスト4の東海大甲府の2020年

2020.12.05

 高校野球は勢力図が毎年変わっていく。2021年、山梨県をリードする名門として注目が集まるのは東海大甲府だろう。2020年は山梨独自大会、秋季県大会で優勝を果たし、山梨学院優勢で動いていた山梨の高校球界の潮目が変わった1年だった。そんな東海大甲府に迫っていく。

ついに打倒・山梨学院を果たす!

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選手に話をする村中監督(東海大甲府)

 打倒・山梨学院

 東海大甲府がここ5年間、ずっと掲げてきた目標だ。2016年夏の山梨大会決勝。当時のエース・菊地 大輝(国際武道大)、福武 修(立命館大)など投打に逸材を揃えて臨んだが、試合に敗れた。

●2016年
第98回全国高等学校野球選手権山梨大会 決勝 山梨学院 12-5 東海大甲府

●2017年
第99回全国高等学校野球選手権山梨大会 決勝 山梨学院 14-3 東海大甲府

●2019年
第101回 全国高等学校野球選手権 山梨大会 決勝 山梨学院 5-4 東海大甲府

 2016年を含めて、夏は3連敗。近年は山梨学院が山梨のトップをいく形となった。

 2020年。コロナ禍で長期間の活動自粛があっても、その思いは変わらなかった。オンラインミーティングで、独自大会優勝をすることを決意した。

 そして山梨独自大会決勝戦でプロ志望だった渡部 海夢の決勝本塁打で夏では5年ぶりに山梨学院との直接対決に勝利し、優勝を果たした。

 この優勝はチームにとって大きなものだった。村中監督は「夏の優勝は新チームにとってものすごい影響力があった。3年生の練習している姿、それ以外の姿を見ている。秋につなげたことは大きかったです。」と振り返る。

 また、三浦 諒太主将は「3年生から色々学んだこともありますし、山梨学院に勝っていただいたことで良い流れを逃すわけにはいかないので、僕たちも良い流れを作ることを意識しました」

[page_break:先輩から後輩へ。受け継がれる技術と熱い思い]

先輩から後輩へ。受け継がれる技術と熱い思い

 

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左から猪ノ口絢太、木下凌佑、久井竣也(東海大甲府)

 今年の新チームは渡部のようなスラッガーはいない。1点を守り切る野球を心掛けた。前チームから登板をしている139キロ左腕・若山 恵斗、さらにリードが光る主将の三浦のバッテリーは強力で、そして三浦が絶賛する遊撃・中澤 空芽、三塁・後藤 紘和の守備力は特に高いものがあり、特に中澤は関東大会でも好守備を連発し、大会注目の遊撃手として注目を浴びた。

 また、関東大会ではしぶとい攻撃が目立ったが、県大会5試合で43得点と打撃面の活躍が光った。打撃の成長にはプロ注目選手の渡部の教えが大きい。三浦主将は渡部に感謝の意を述べた。

 「県大会の試合前、渡部さんは結構お忙しい中、自分のLINEに打撃の心構え、試合前の気持ちの入れ替え方などを伝えてくれて、実際にみんなに伝えたら、めちゃめちゃ打ってくれます。本当に勝ちにつながった言葉だと思います。バッティングケージにて技術的な一言についてアドバイスをいただけて、打撃の内容もよくなりました。今年のチームは経験がない選手がほとんどですし、心構えの部分で勉強になったと思います」

 渡部が後輩たちへ指導することを進言したのは村中監督だった。

 「人に教えることは難しいですが、どうすれば理解をしてもらえるかを言葉で表現する。それを学ぶことで、自分に返ってくる。なので渡部に任せました」

 渡部の打撃技術論を聞くと、実に明快で、後輩たちが信頼するのも理解できる。

 そんな渡部のアドバイスのもと成長したのが、1年生で活躍する俊足巧打のセンター猪ノ口 絢太は、俊足で、肩も強く、長打力があり、村中監督も「渡部以上の選手になるかもしれない」と高く評価する。

 長打力には光るものがあるレフト・木下 凌佑、パワーはチームでもトップクラスのものがある、一塁・久井 竣也と楽しみな選手が多い。

 関東大会前で、三浦は「基本的に守備からのチームですので、守備から打撃に流れを作る。今年は大砲はいないので、全国制覇を通して頑張っていきたい」と意気込んでいたが、準々決勝の東海大相模戦では、パワーヒッターの久井が適時二塁打を放ち、逆転サヨナラ勝ちを決め、ベスト4入り。5年ぶりの選抜へ前進した。

 村中監督は今年のチームについて「全国でも十分戦えるチーム」と高く評価する。だが、エース若山が登板しなかった準決勝の常総学院戦ではコールド負け。若山以外の投手陣の底上げが大きな課題となった。

 関東大会に出たから見えた課題を克服し、一冬超えて、山梨学院を寄せ付けないチームになって見せる。

(取材=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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