21世紀枠推薦校!平日2時間練習の石橋(栃木)はなぜ作新学院を破ることができたのか?【前編】
栃木の高校野球を牽引するチームといえば作新学院を思い浮かべる人が多いだろう。過去には甲子園優勝やプロ野球選手も輩出する高校野球界の名門校の1つ。その作新学院を秋季県大会で破ったのが、公立校・石橋だ。
4年ぶりとなる関東大会出場を決め、初戦の東海大相模に敗れたものの、12日に栃木県の21世紀枠の推薦校に選出された。初の甲子園出場に胸が膨らむ石橋の現在を知るべく、グラウンドへ足を運んだ。
平日2時間、ネット越しでは他部活という環境
ライト側ではサッカー部が練習を行なっている石橋高校グラウンド
JR石橋駅から徒歩11分と離れた場所に学校を構える石橋。偏差値は県内のなかで比較すると高い数字を誇っており、県内有数の進学校という位置づけになる。まさに文武両道と言っていい結果を野球部は残した。
そんな野球部の練習場所は校庭の一部。取材当日はサッカー部、そしてハンドボール部も練習しており、野球が使える範囲はレフト90メートル、ライト60メートル程度。ネットで仕切りは作っているが、練習場所は隣り合わせという状態になっている。
また練習時間にも制限がある。石橋の場合、授業は7限まで設けられており、練習開始は16:50頃からになる。そして19時までには練習終了となっているため、放課後は2時間程度しか練習ができない状況。
朝練として30、40分ほどバッティング練習をして補っているものの、土曜日にも課外授業があるなど周りの学校に比べれば練習量では劣ってしまう。こうした練習環境のなかで結果を残せたことが栃木県の21世紀枠の推薦校選出の大きな要因の1つだが、指揮を執る福田博之監督は前向きに捉えている。
「自分たちよりも制限されているチームもありますので、仕方ないです。ただ限られた範囲で工夫をすればいいと思いますし、限られているからこそ、いい方向に進んでいると思います」
今年のチームをまとめる小林到主将に話を聞いても、この環境だからこそできていることがあることを感じ取っている。
「長い時間で多くのメニューをやるよりも、短い時間でも少ないメニューで集中して質を高めていく。そこが秋の結果に繋がった1つの要因だと思います」
福田監督は「まだ甘い部分がありますね」と選手たちにはより高いものを求めている。この環境だからこそ、磨かれたものがあった。それは暴投、特に高めに投げてしまったことによる暴投が減らせることだ。
石橋が守備で乱れないために意識すること
守備練習の様子
「キャッチボールでも暴投するとサッカー部に迷惑かけるので、低く強いボールを投げることは言われています」
外野を守る石川慶悟が語ったコメントだ。キャッチボール、そしてシートノックを見ていても高めへの暴投が少なく、代わりに低くボールを投げる意識が見られた石橋の練習。元々福田監督が常に選手たちに低めに送球することの大切さは伝えていた。
「エラーの中でも一番怖いのが暴投です。打球をはじくだけなら親類は防げますが、暴投は余計な親類に繋がりかねません。なので、『とにかく低く強いボールを投げることを意識しなさいと』と気を付けるように伝えています」
小林主将にも同じことを聞くと、「高いボールよりも、低く来たボールの方が取れる可能性があるので意識しています」と語る。監督の指導、そしてグラウンドを共有していたことで、石橋の守備は磨かれていったのだ。
ただ低く投げるためには、そこまでの一連の動作も関係してくる。福田監督も「足がしっかり運べないとスローイングには繋がりません」と一連の動きの重要性を語る。
では、どういった意識をもってスローイングまで繋げているのか。内野は、旧チームから出場する齋藤陽介、そして外野は石川に解説してもらった。
■内野
・打球の質や個人の感覚次第だが、ボールに対しては出来るだけ右から膨らんで回り込む
・イレギュラーで打球を逸らすことを防ぐために、打球に対して正面に入る
・ステップは投げたい方向に対して真っすぐ前へステップを踏む
・ステップが増えると、上体が上がりやすくなるため、できるだけ1回でスローする
■外野
・後ろからきっちりチャージをかけて勢いを作る
・投げる際はカットマンの頭の高さを狙って投げる
・どれだけ素早く正確に投げるか。質を大事にして投げ込む
特別なことではなく基本となることだが、この意識を徹底的に持って練習に取り組むことで石橋は守備力を鍛え上げた。ただ齋藤は「新チームスタート時はノックに時間がかかってしまい、『1回戦勝てるどうか』という感じでした」と振り返る。
ではいかにして石橋は栃木県大会準優勝、そして21世紀枠の推薦校に選出されるまでのチームを作ったのか。
後編はこちらから!
作新学院を破った石橋(栃木)が21世紀枠の推薦校に選出されるまで【後編】
(記事=田中 裕毅)