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東東京大会屈指の実力校・都立城東は毎年結果残せるチームを作れるわけ

2020.11.23

 秋季東京都大会で存在感を示した都立校と言えば、帝京を破った都立小山台の印象が強い方が多いだろう。日大三相手にも0対1と好ゲームを見せ、春も躍進が期待される。

 その都立小山台と同じ東東京で、指折りの都立校と言えば都立城東を忘れてはならない。夏の東東京大会ではベスト8進出。甲子園にも出場経験を持つ都立校は毎年注目される存在だが、なぜ結果を残し続けられるのだろうか。

理想は冷静に勢いを出したい

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都立城東野球部を訪問

 江東区にある学校へ取材で向かうと、当日は他の部活動と校庭を半分ずつにして練習スタート。時間が経ってから全面を使って練習ができたが、19時には完全下校のため、練習できるのは3時間程度。都立城東は時間も場所も制限があるなかで、甲子園を目指して日々練習を行う。

 チームをまとめる高垣翼主将も「時間を無駄にしないように動いています」と限られた環境を選手たちは理解している。だからこそ、効率よく練習することは都立城東では当たり前となっている。

 取材日は1班15分に分かれて徹底した時間管理のなかで練習が進んだ。交代の合間もてきぱき動いており、練習の雰囲気は良いように感じたが、「やり方や取り組み方はまだまだだと思います」と内田稔監督は評価する。

 そんな内田監督はチームの仕上がりをこのように語っていた。

 「まだチームとしては成熟していないです。選手間のかける声やプレーの前後、プレー中の気づきがまだです。観察力や洞察力、考えたり伝えたりする力もまだまだです」

 2つ、3つ先のプレーまで考えて動けるようになって欲しいことを願っている内田監督。そのために野球以外の時間、つまり学校や自宅でどれだけ周りに気配りが出来るのか。普段の生活への指導も力を入れている。それは観察力や洞察力の基礎となる、客観視や冷静さを養うためだ。

 「勢いだけだと一過性のものになりますが、冷静に戦えれば一定の力を発揮できます。どうしても野球の特性上、動かない時間が多くて心が揺らぎやすいです。だから弱いチームが強いチームに勝つ野球の醍醐味があるのですが、冷静さをもって勢いを出せるのが一番だと思うんです」

 だからこそ、選手それぞれが周りへの気配り、大人な対応ができるような冷静さを持てるように内田監督は指導をしている。

[page_break:大事なことは冷静に客観的に]

大事なことは冷静に客観的に

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練習を見つめる内田稔監督

  実際に取材時、内田監督の様子を見ていると、あまり選手たちに指導をするのではなく、見守る時間が多い。代わりに選手たちが高い意識をもって、互いに厳しい声を掛け合っているのが印象的だった。

 指導者であれば選手たちに声をかけたくなるが、このようにしているのも理由がある。

 「誰が見てもわかるようなことへ指導するのは、誰でも出来ることです。ですが、指導者がすべきことは本人も気づかないようなミスに対して声をかけてあげること。カットの位置がずれているなど、わかりにくいことを気づかせることで、選手の中の引き出しを増やせればと考えています」

 しかし選手間が高い意識をもって厳しく声を掛け合うことは簡単ではない。妥協をしたくなる瞬間もあるが、都立城東の練習には見えなかった。その点について高垣主将はこのように語る。

 「夏の大会が終わってから(林)平太郎から『厳しくあたっていこう』ということで厳しく接するようにしています。関係があるので言いにくいところもあると思いますが、個人の上達のために指摘し合うようにしています」

 昨年はエース・林平太郎、主砲・千野亜真汰など実力者を擁して、秋はベスト4まで勝ち上がった。「手ごたえはなかったですが、大会を勝ち進むごとに経験を積んで成長できました」と内田監督は振り返る。

 選手個人の筋力と技術を高めながら冬場を過ごし、内田監督も手ごたえを感じながら春に向けて準備を進めてきたところで練習自粛。練習を再開しても「維持は難しかったです」と仕上がりは不十分のまま夏の大会を迎える。

 初戦の都立鷺宮を7対0で勝利すると、都立王子総合、東京と接戦を制して準々決勝まで勝ち上がった。ベスト8で激突したのは関東一。エース・林を先発のマウンドに送るも、「仕上がっていましたね」という関東一打線の前に12失点。打線も関東一の投手陣を前に2点しか取れず、5回コールドで敗戦。

 頂点まであと僅かで敗れた都立城東は秋に向けて再始動。「旧チームを経験したので、選手間の連携やスピード感は比較すると、違いがありました」と高垣主将は苦戦した。

 それでも副将などを中心に連携をとって秋季大会の初戦・都立日野と対戦。林と都立日野木下孔晴の投げ合いとなるが、結果は0対1で敗戦。都大会への切符を掴めなかった。

 春は再びブロックから始まり、どこに入ろうと注目されるであろう。しかし都立城東は毎年注目される存在だ。プレッシャーがある中で、結果を残し続けているが、内田監督は「あまりプレッシャーはないです」と語る。

 「ただ野球をやっているだけですし、注目は周り環境とかの外発的なモノだと思うんです。ですので、まずは自分たちの野球をやろうと。それで結果が残らなかったとしても冷静に、客観的に振り返って出直そうと」

 あくまでも冷静に、客観的に。こうした考え方、見方をできるから都立城東は結果を残しているのではないだろうか。秋の敗戦を冷静に振り返り、春に成長した姿を見せてくれることを期待したい。

(記事=田中 裕毅)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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