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修徳中学のエッセンスを注入し、修徳が目指すは8年ぶりの甲子園【後編】

2020.11.29

 これまで計8度の甲子園出場実績を誇り、高橋尚成氏(元巨人など)や中日ドラゴンズの三ツ俣大樹選手など計13名のプロ野球選手も輩出する東東京の名門・修徳高校。

 2018年冬に前任の阿保暢彦監督(松山城南監督)から引き継ぎ、これまでコーチ、部長としてチームを支えた荒井高志氏が監督に就任し、間もなく新体制となって3年目を迎える。
 後編の今回は躍進への鍵を握る主力選手を紹介し、また荒井監督が修徳中学から学んだことを紹介していく。

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もう一度緻密な「修徳野球」を。8年ぶりの夏の甲子園出場を狙う「0勝監督」の挑戦【前編】

精神的支柱の主将・鈴木、そして投打の大黒柱・床枝魁斗

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エースの床枝魁斗(修徳)

 明確な課題意識を持って再スタートした修徳だが、春の飛躍へのキーマンとなるのは主将の鈴木悠太だ。荒井監督も「試合で勝つための無形の力を理解している」と全幅の信頼を寄せており、チームの精神的な支柱である。

 チームの現状について鈴木主将は「Aチームに入っただけで満足してしまい、チーム内の基準で満足してしまっている選手がいる」と強い危機感を見せており、練習中は誰よりも大きな声で叱咤激励をチームメイトに飛ばす。

 秋季大会ではすべての面で早稲田実業に劣っていたと振り返り、冬の期間では心身共にチームの底上げしていきたいと強い意気込みを語る。

早稲田実業さんの方が技術的に上で、シンプルに技術の差で負けたかなと思います。
 甲子園のチャンスはもう夏しかありません。精神的にきつい練習であったりしんどい時期もあると思いますが、秋の悔しさがあったから最後強かったねと思えるように、夏にいい思いをする未来を思い描いて乗り越えていきたいと思います」

 また試合の中で大黒柱となるのは、4番でエースの床枝魁斗だ。
 179センチ84キロと恵まれた体格から、最速143キロの直球を誇る本格派右腕の床枝。球歴を振り返ると、小学校時代は中野リトルで全国大会にも出場したが、練馬北リトルシニア時代は投手ではなく野手。決して大きな実績があるわけでは無かったが、修徳に入学後に再び投手として頭角を現す。右肩上がりの成長を続けて、都内でも屈指の右腕に成長を遂げた。

 荒井監督は床枝について「何事も一生懸命に取り組むし、自分の課題も理解してる」と評価するが、チームがさらに上へ上がるためにはエースとして背中で引っ張る姿勢を見せて欲しいと精神的な成長を求める。

 「自分の背中で引っ張ろうとしているのですが、まだまだ出来ていないところがあります。甲子園に出ているチームの背番号1は味方のエラーで崩れたりしませんし、甲子園基準で考えるとまだまだ色んな面で足りないです。日頃から、責任から逃げること無く練習にも取り組んで欲しいなと思っています」

 また1年生ながら1番打者を任され、好投手・田和廉早稲田実業)から4打数2安打2盗塁の活躍を見せた佐藤大空も、成長著しい打者だ。リトルシニアの強豪・江戸川中央シニア時代は怪我で思うようにプレーが出来なかったが、高校ではようやく満足にプレーできるようになる。

 パワフル過ぎるスイングには時折荒井監督も苦笑を浮かべるが、明るいキャラクターも含めてチームの中心選手になりつつある。他にも1年時から、床枝、鈴木とともに出場した遊撃手・間島玉喜など能力が高い選手が多い。

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修徳中学から学んだ細かい野球

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主将の鈴木悠太(修徳)

 状況を読んで、相手を見て戦う野球を目指す修徳・荒井監督であるが、そのために必要となるのはきめ細かいプレーを徹底していくこと、そして相手のプレーの細かい点にも気付く感性を養うことだ。
 荒井監督はそういった細かい野球を学ぶため、修徳中学の練習や試合を見て参考にしているという。

「修徳中の野球は大変緻密です。山崎剛史監督から多くのことを学ばせてもらっていて、中学のエキスを高校でも活かしたいと考えています。野球に対する考え方や状況に応じたプレーなどを取り入れたり、キャッチボールでも色んな動きを入れてやっています」

 実際、修徳の練習でもキャッチボールではただボールを投げ合うだけでなく、様々な動きを取り入れていた。ショートスローや連携を意識したキャッチボール、様々な体勢からのスローなど、何種類もの動きを普段のキャッチボールから取り入れることで、選手たちの引き出しが増えていくという。

 「様々な面で中学のやり方を取り入れることで、中学と高校を繋げたいという思いもあります。修徳中から上がってきた生徒を更に成長させて、そして高校から入ってきた選手と融合して、緻密さと強さを兼ね備えたチームを作る。それが将来の展望の一つです」

 細かいプレーの徹底、また細かい点に目をやる意識は、チームにはまだ完全に浸透していないと荒井監督は話すが、それでも少しずつ変化を感じ取っている。

「この秋は3対2で勝つと選手には言ってきましたが、春以降も基本的に変わらないと思います。守りから作っていく意識で、その上で打撃も強化していく。細かい部分を詰めていって、打線の力強さが加わってくるのが完成形です。今やろうとしてることに道筋はできているので、まずはこの11月の期間にじっくり鍛えていきます」

 荒井監督の目ははっきりと春の躍進を捉えている。生まれ変わった修徳が、どんな野球を見せるのか今からとても楽しみだ。

(記事=栗崎 祐太朗

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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