地域に根差した三島南が急成長した背景と強さを支える指導方針【後編】
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21世紀枠推薦校に選出!創部100年を迎える伝統校・三島南が静岡を破り4強入りするまで【前編】
前身の三島商時代から数えて、昨年創立100年を迎えた三島南。2年後に創部した野球部は、2021(令和3)年、つまりこの秋のチームが創部100周年目のメンバーということになる。
そんなチームが、この秋は県大会では県内1の名門静岡を下すなどしてベスト4に進出した。惜しくも東海地区大会進出はならなかったものの、新たな歴史と伝統を築いていこうという三島南を訪ねた。
今回は、後編をお届けする。
三南の野球を貫けた秋季大会
注意事項を指示する稲木監督
主将として2年生12人、1年生15人、マネージャー4人というチームをまとめていく伊藤 侍玄主将は、「主将としての自覚を持ち続け、きびきびした行動をとり、野球以外の面でも指示したりできることを目標としていきたい」という思いだ。
しかし、秋季大会に関しては、「チームとしては三南の野球をすることができたと思う」としながらも、自分自身のプレーに関しては反省だらけだったという。
「目標としていたことがまったく達成できなかった。プレーでチームを引っ張りたかったのだけれども、いつもの打撃の調子を持ってくることができなかった」
そう悔いていた。それでも、主将としては静高戦の前などは、「自分たちは運がいい」ということを口に出して言い聞かせて、名前負けしないで運や流れを引っ張ってくることを心掛け、結果としてそれは実現した。
今のチームを伊藤君はこう分析する。
「波に乗れば得点を取れたり、まとまった守備が出来るけれども、一つのエラーで流れを失ったり、0点の攻撃が続いてしまったりすることもあり、まだまだ安定していない。ただ、調子のいい時の自分たちのチームは誰にも止められないと思うので、この冬の練習でしっかりと追い込んで、勢いをつけて来年に臨んで結果を出せるようにしていきたい」
そのためには、「とにかく皆からはどれだけ嫌われても、トレーニングや練習をするときには先頭に立ち、プレーではなく気持ちの面でチームとしてのパワーアップさせたい」という気持ちで取り組んでいくという。
これは、「持っているものを100%出す」「本質を掴んだ行動をする」という稲木監督が掲げているチームの目標とも一致していく。
躍進見せた三島南の根底にあるもの
ガッツポーズの三島南の選手たち
稲木監督は、自身の指導方針としては、「選手の主体性を伸ばすこと」をもっとも大切にしているという。つまり、やらされる野球ではなく、自分から行動して進んで行う野球である。
その考え方の基本は、「You can take a horse to water but you can’t make him drink.(馬を水のある所へ連れて行っても水を飲ませることは出来ない)」というアドラー心理学の考え方が基本になっている。
つまり、「自分にやる気がないものに対して、どんなに指導してもだめだ」ということ。いかに、自主的に向っていかれるのか、そういう自覚を持って挑めるのかということである。
環境作りということで言えば、「指導者としては、環境を整えることに特化すること」だと言う。だから、ペンキ塗やネット補修もゲージ作りも自分でやってきた。
こうしたことを内発的動機付けとして選手たちにも再認識させているという姿勢である。赴任してきた当初は、ただ広いだけで小学校のソフトボール程度のバックネットしかなかったというグラウンドが、グラウンドの黒土も含めて徐々に整えられてきている。
三島南野球部としては1921年の創部から数えて100年目の年を迎える。
そんな節目のチームが、秋季県大会では準々決勝で甲子園常連の静岡に3-1で競り勝ち、62年ぶりの準決勝進出を果した。準決勝、3位決定戦と敗退したことで、残念ながら東海地区大会の出場はならなかった。
しかし、ベスト4進出校の残り3校は、常葉大菊川、藤枝明誠、加藤学園と県外選手を多く抱える私立高校だった。そうした強豪校に伍して、戦えたことは大きな自信にもなっているはずだ。
「静岡県東部の地元出身者のみの普通高校が、野球振興等の活動をしながら戦っている姿は地域住民から多くの激励をいただきました」
確かな手ごたえは感じている。
また、地域活動としても、保育園児や小学生を対象とした“野球体験会”なども実施して、野球の普及活動にも貢献している。そうした活動も地元メディアや関係者などからも評価されてきている。
こうして、地場に根差した高校野球のあるべき姿として、今後の三島南の動向と活躍は、もっと注目していっていい存在となっていくであろう。
(記事=手束 仁)
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