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9年ぶりの近畿大会優勝を果たした智辯学園の猛打を支える実戦的打撃練習

2020.11.08

 2011年以来となる近畿大会優勝を果たした智辯学園。投打ともに総合力の高さが目につくが、やはり長年の伝統といえば、超強力打線である。近畿大会ではチーム打率.353、3本塁打、28得点と強打を発揮。しかも相手はどこも好投手を揃えるチームである。今回はレベルが高い投手たちを打ち砕く智辯学園の打撃練習に迫ってみた。

選手の勝負強さを鍛える1球バッティング

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智辯学園の打撃練習の様子

 9月初旬、打撃練習に参加した選手たちは次々とライナー性の打球を飛ばしていた。智辯学園の選手たちは打撃練習の取り組みが非常にいい。

 まず最初に行っているのがバントだ。レギュラー選手たちはしっかりと投球の勢いを殺し、三塁方向、一塁方向へ転がしている。これは打者の打撃技術を鍛えるのと、戦略的なものがある。まず打撃技術が高い選手ほど犠打がうまく、4番打者・前川 右京はバントが実に上手い。こういうところからミートセンスの高さが伺える。

 さらに近畿大会でも話題にもあがった「1球バッティング」。
普段は3球~5球打ってから交代するのに対し、1球だけ打って交代するものである。打者も、打撃投手も緊張ものだ。それでも智辯学園の打者たちは次々と快音を飛ばしていく。主将の山下 陽輔はこう語る。

 「試合でしたら、何球もないので。1球で仕留めないといけません」
どんな場面でも1球で仕留める技術を身に着け、勝負強い打者へ成長していく。その成果は近畿大会決勝に現れ、山下、前川の2人が揃って本塁打を放った。山下は当時、足を痛めていて、練習をしていなかったが、前川は1球しかない状況の中で次々と長打性の打球を連発をしていた。

 また、ライナー性の打球や逆方向への打球が多かったのは、大会ならでは事情がある。
「大会前なので、逆方向への打球などチーム打撃を徹底して行っています。冬の練習や大会が終わった後の打撃練習では体を大きく使って飛ばすことを意識しています」

 1つ1つの打撃練習にも意図がこめられていた。

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待ち時間も無駄にしない

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小坂 将商監督の指導を受ける選手

 また見逃せないポイントがもう1つある。打撃ゲージの横には多くの選手が真剣な眼差しで素振りを行っている。ある選手は仲間に打撃フォームを見てもらいながら。前川は近畿最多打点(8)を記録した三垣 飛馬と話し込んで打撃について語り合う。

 待ち時間を無駄にしないように意識している姿が見える。山下はこの時間こそ大事だと語る。

 「野球の練習は待ち時間が長いので、それをどれだけ有意義にできるかが大切で、ほかのチームと差をつけるために大切です」

 特別なことはではないことかもしれない。しかし1つの時間を無駄にせず、毎日を歩んできた智辯学園は一歩先を行く強力打線を作り上げているのだろう。そして智辯学園にしかない強みといえば、岡本和真(巨人)をはじめ数多くのスラッガーを育てた小坂 将商監督がマンツーマンの指導をする。打撃練習中も多くの選手へ指導をしており、取材日では前川のスイング軌道を見ながら、徹底的に教えこんでいた。

 高校時代からスラッガーとして活躍した小坂監督の指導はわかりやすいと評判だ。山下は小坂監督の指導があって伸びたと語る。

 「小坂監督は自分が思っていなかったことを指導してくれて、自分もよくなっていますし、精神的なこともみてくださっているだなと思います」

 長年、智辯学園が追い込まれた時に異常な強さを見せるのは、日々、追い込まれた状況の中で打撃練習をしていたからだろう。

 19時前に全体練習が終わっても、個人練習で黙々と打ち続ける智辯学園ナイン。まず目標としていた近畿大会優勝を達成し、次はセンバツ優勝へ向けて、さらなるレベルアップを目指す。

(記事=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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