Column

城西大城西(東京)2度の甲子園出場経験の古豪が復活の兆しを見せるまで【前編】

2020.10.13

 帝京の劇的なサヨナラ勝利で幕を下ろした東東京大会の激戦から早くも2か月が過ぎた。その大会で昨夏に続いてベスト16まで進出を果たしたのが城西大城西だ。

 過去には甲子園に2度出場した経験を持ち、OBには元プロ野球選手で盗塁王3度受賞の実績を持つ高橋慶彦らがいる。

 毎年東東京の中でも注目されるなど実績は十分だが、2017年は夏3回戦、2018年は夏2回戦と早期敗退となる時期があった。そんなチームの立て直しを図ったのが現在、監督してチームを率いて2年目となった山崎警監督だった。

強敵との戦いで今の自分たちを知るところから始める

城西大城西(東京)2度の甲子園出場経験の古豪が復活の兆しを見せるまで【前編】 | 高校野球ドットコム
城西大城西の選手たち

 現役時代は川越商から神奈川大、そして西濃運輸でプレー。指導者としては神奈川大学や市立川越。さらには飯能南富士見ふじみ野といった埼玉県内の公立校で選手たちの指導にあたってきた。

 それだけの実績をもって古豪・城西大城西の復活を学校から託された山崎監督。4月に就任し、夏の大会で結果を残すべく、山崎監督がチームに就任してからまず取り組んだことは強豪校との練習試合。これまでに培ってきた人脈を活かしながら試合を組んでいったが、対戦相手は花咲徳栄浦和学院。さらには健大高崎といった全国でも名の知れたチームばかりだった。

 「強いところが自分たち相手に本気で試合をするとどうなるのか。それを選手たちに肌で感じて欲しかったんです。だから5月から強豪校と試合をやっていきました」

 最初のうちは2桁失点をするような試合もあった。また選手起用でも、当時の3年生メインで戦っていたことに納得がいかず苦情の声が山崎監督の耳にも届いていた。それでも我慢して戦い続けていくと、次第に点差は縮まっていったという。

 「自分たちと同じくらいの実力のチームと戦って勝敗に一喜一憂するのではなく、強いところとやって自分たちとはどれだけ違うのか。これを知ることで自分たちの本当の実力を知ることが出来るんです」

 負けを通じて実力を知り、自分たちの戦い方を見出す。これが就任してわずか3か月後で夏の大会16強進出を達成した山崎監督のスピード改革だった。

[page_break:成功体験を積み重ねながら基本を固めていく]

成功体験を積み重ねながら基本を固めていく

城西大城西(東京)2度の甲子園出場経験の古豪が復活の兆しを見せるまで【前編】 | 高校野球ドットコム
練習中の様子

 そして本格的に1から指導が出来る新チームでは、夏のベスト16を経験し、強豪校とはどんなチームなのか。それを心得ている選手たちを中心に据えながら、練習をスタートさせた。

 グラウンドは学校から電車で1時間ほど離れた荒川の河川敷にある城西大城西。周りには錦城学園など多くのチームのグラウンドがある中で、トレーニング器具やブルペンもあり、夜間は照明を付ければバッティング練習ができる充実の環境。

 この中で練習を日々繰り返すが、大事にするのが基本をしっかりと叩き込むこと。全員がノックを受けることで、選手それぞれがチーム内における自身の能力を知る。つまり自分を知ると言うことも、城西大城西にとっては大事なファクターだ。

 チームをまとめる主将・渡邉寮に話を聞いても、全体で練習をすることで、自身の能力を知る場になっていることを感じている。「ノックであれば各ポジション、バッティングであれば打順によって練習から選手間で指摘をすることで、チームの中における自分の役割がわかってきます」

 チームの主軸を担っている2年生・加藤聖大も自分たちの実力を知るのに、練習は鍵になっているようだ。「練習試合で自分たちの実力がわかるので、そこで欠けている部分に気づけるので、それをいかに伸ばすのか。主体的にやらないと解決はしないので、チームメイトにも厳しく声をかけています」

 理解したうえで、選手に合わせて捕球してからのステップや、捕る位置といった細かな基礎から練習をしていくこともある。そこで成功を重ねていき、自信を深めながら基本を固めていく。

 「自主練習をする時間はできないのですが、ノックなどの時間を多く使って、選手たちそれぞれで考えて取り組んで新たな発見をしてくれたら嬉しいですね」(山崎監督)

 加藤も、山崎監督の細かな基礎を固めていく練習方法に効果を感じていた。「特に冬場に取り組むのですが、捕球態勢の状態で動いたり、外野手であれば目線を切って落下地点までダッシュをするなど基本的なことですが活きていると感じています」

 こうしてチームメイト、そして対戦相手を通じて、選手それぞれが自分を知り、基本に立ち返って成功体験を積み重ねる。これが、城西大城西に山崎監督が就任して2年間で夏ベスト16に勝ち上がり続けられる大きな要因になっているのだ。

 前編はここまで!後編では新チームにスポットを当てていきます!後編もお楽しみに!

城西大城西(東京)2度の甲子園出場経験の古豪が復活の兆しを見せるまで【前編】 | 高校野球ドットコム後編はこちらから!
城西大城西(東京)実践を通じて成長してきた新チームで再び頂点を目指す!【後編】

(記事=田中 裕毅)

関連記事
梅野隆太郎以来の「打てる捕手」。福岡工大城東・誉田貴之は自己否定と戦い続けてドラフト候補に
【日程・結果一覧】九州地区高等学校野球大会 福岡大会
阪神タイガーズの正捕手に座る梅野隆太郎!恩師が語るその進学秘話

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.18

【神奈川】保土ヶ谷球場では慶應義塾、横浜が登場!東海大相模は桐蔭学園と対戦!<春季県大会4回戦組み合わせ>

2024.04.18

強豪校を次々抑えて一躍プロ注目の存在に! 永見光太郎(東京)の将来性を分析する<高校野球ドットコム注目選手ファイル・ コム注>

2024.04.18

首都二部・明星大に帝京のリードオフマン、東海大菅生技巧派左腕などが入部!注目は184センチ102キロの大型スラッガー!

2024.04.18

【春季埼玉県大会】ニュースタイルに挑戦中の好投手・中村謙吾擁する熊谷商がコールド発進!

2024.04.18

【岡山】センバツ出場の創志学園は2回戦から登場! 2回戦で昨年夏の決勝戦と同じカードが実現の可能性も!<春季県大会地区予選組み合わせ>

2024.04.14

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.15

四国IL・愛媛の羽野紀希が157キロを記録! 昨年は指名漏れを味わった右腕が急成長!

2024.04.17

仙台育英に”強気の”完投勝利したサウスポーに強力ライバル現る! 「心の緩みがあった」秋の悔しさでチーム内競争激化!【野球部訪問・東陵編②】

2024.04.15

【春季和歌山大会】日高が桐蔭に7回コールド勝ち!敗れた桐蔭にも期待の2年生右腕が現る

2024.04.16

【春季埼玉県大会】2回に一挙8得点!川口が浦和麗明をコールドで退けて県大会へ!

2024.04.09

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.14

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.03.23

【春季東京大会】予選突破48校が出そろう! 都大会初戦で國學院久我山と共栄学園など好カード