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真の強豪を目指す報徳学園。投打ともにタレント揃いの今年のチームの課題とは

2020.09.12

 夏15回、優勝1回、センバツ21回 優勝2回と輝かしい実績を誇る報徳学園。今年の報徳学園は近畿圏内ではトップクラスの戦力を誇ると評判だ。そんな報徳学園の強さの秘密と課題に迫る。

報徳学園の強さを支える濃密な練習

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チームの4番・湯水海

 まず報徳学園の強さを支えるのは、豊富な練習量だ。そのために、指導陣が工夫を凝らしている。
 野手では宮﨑翔コーチ、投手では東海大でコーチとして指導をしていた礒野剛徳部長の下、様々なメニューが組まれている。

 報徳学園のグラウンドは軟式野球部、サッカー部、ラグビー部と共用。ただ、グラウンド以外にも陸上トラックやグラウンドの周りの練習スペースとなる場所があり、選手たちはそこでも工夫する姿勢が見て取れた。

 練習が始まった16時頃はシート打撃を行っていた。シート打撃では、ベンチ入りしていない投手たちが登板していたが、それでも投げ込むボールは速く、報徳学園以外のチームであれば、公式戦でも登板できるような実力があった。

 そういう投手たちにも次々と快音を響かせたと思いきや、今度は夏までエースだった坂口翔颯が登板。坂口の快速球に始めは空振りを繰り返しながらも徐々に適応し、快音を響かせていた。実戦さながらの練習で勝負強さを養う。シート打撃が終わると、4か所のフリー打撃に入る。

 その合間、控え選手は砂場でトレーニング、グラウンドの隅で素振り、陸上トラックで投手はランメニュー、体幹トレーニングとまんべんなく練習を行う。

 日が沈むと、選手たちは外野ではなく、バックネット裏に向かって打ち続ける。また鳥かごの中ではチームの4番・湯水海が黙々とマシンに向かって打ち続ける。

 そして外野を見渡すと選手が内野手たちのノックの雨を浴びせ、黙々と捕球する。

 さらに投球練習では多くの投手がブルペン入りし、礒野部長とマンツーマンで投球フォーム、ボールの軌道、配球を確かめていく。

 多くの選手がとことん練習を積む。これが報徳学園のスタイルだ。こうした練習の背景に大角健二監督はこう説明する。
 「クラブ活動は学生にとって一番自分を表現できるやりがいがあるところですので、モチベーションを高めてもらわないと学校生活にも支障をきたすと思いますし、イキイキとやってもらいたいと思います。なるべく選手たちには満足できるよう、こちらは場を提供できればと考えています」

 こうした練習環境が報徳学園の強さを生んでいるといえるだろう。

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140キロ超えの投手2名、スタメン野手もタレント揃いの課題は

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練習後にストレッチを行う選手たち

 そして今年のチームについて触れると、「能力は去年よりあります。ただ、去年の3年生と今の2年生が試合をしたら、圧倒的に今の3年生が強い。それだけ3年生は実戦に強いですが、今の2年生たちはそれを出す精神的な強さがない。そこが課題だと思っています」と精神面を課題に掲げる。

 練習試合でも大差で負けることもあるという。選手の取り組みを見ると、非常にまじめに取り組み、指導者から聞いても今年の主力選手は練習をしっかりとやって伸びてきた印象だ。
 だが、それだけで勝てるわけではない。どんな場面でも動じないメンタルが大事となる。

 そこで大角監督がこだわったのが主将の存在だ。そこで、センター・宮浦翔輝を主将に据えた。
「このチームに足りないところを持っている選手ですね。一直線に突き進む実直さや熱さがある。いろいろ考えんでしまい、いい子が多いので、理屈ではなく、背中で引っ張れる宮浦にいたしました。ここまで彼の味が出ているかなと思います」

 今年の戦力は冒頭で説明したように近畿地区でもトップレベルのものがある。
 まず、身長185センチで、最速143キロを誇る大型左腕・久野悠斗。変化球の切れ味も素晴らしく、うまくいけばドラフト候補になる可能性を持った逸材だ。

 近年の報徳学園ではなかなかいない大型投手であり、取り組む姿勢も良く、磯野部長とは技術的なことについて話し合う。
 その内容を聞いていても、とても高度で意識の高さを感じる。

 さらに最速143キロを誇る大型右腕・森新之助、そして秋の地区予選でも完封した最速139キロ右腕・向高滉人はチームで一番防御率も良く、投手としてのセンスの高さを感じさせる。右スリークォーターから最速138キロのボールを投げ込む田村剛平は、報徳学園中の出身でこの2年間でメキメキと成長した選手だ。

 そんな投手陣をまとめる久野は「究極の目標である防御率0.00の投手陣を目指していきたい」と自覚たっぷり。

 野手では、1年生からレギュラーを経験し、対応力が高い打撃力はチームでもトップクラスの巧打者・下井田悠人、シャープなスイングを見せ、鋭い打球を飛ばす左打者・4番・湯水海(ゆすい)が中心。またパンチ力のある打撃とキャッチングの良さが光る好捕手・南條碧斗は、リード面においても大角監督からも高く評価されている。

 そして一塁・捕手を兼任する花田大雅は一目で覚えられるがっちりした体型のスラッガーで、大角監督が「模範的なスイングができる」と評するように、構えから力みがなく、トップに入ってからインパクトを迎えるまでの無駄のないスイング軌道が魅力だ。下半身を使ったスイングと技術にはトップレベルのものがあり、体格に似合わず身軽な動きを見せる。他では俊敏な動きを見せる遊撃手・田中隼人、俊足巧打の外野手である主将の宮浦など粒ぞろいの布陣だ。

 日本一を目指すために宮浦主将はこう意気込んだ。
 「日本一にふさわしい取り組み、練習をして、その目標に近づいていきたいと思います」

 そんな報徳学園神戸弘陵神港学園神戸国際大附が同ブロックという熾烈なブロックに入った。ただ、新チームがスタートした時点からそういう実力校と当たっても勝ち抜ける実力を身に着けるために練習を積んできた。

 真の強豪を目指して、報徳学園の挑戦が始まる。

(記事=河嶋宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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