強い公立校を実現していく市立川越 「愛される野球部」を目指して【後編】
誰もが経験したことのない特別な夏を経験することになった2020年夏の高校野球。埼玉県で公立の雄として毎年好チームを作り上げていき浦和学院、春日部共栄、花咲徳栄、聖望学園といった甲子園で実績のある私学の強豪校を脅かしてきた市立川越も、“特別な夏”は同じだった。
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強い公立校を実現していく市立川越 新たな思いでスタートした新チーム【前編】
「愛される野球部」を目指して
前身の川越商時代から、地場に密着した公立校ということで人気校でもあった。
だから、1989(平成元)年に悲願の初出場を果たした時も、多くの地元住民からの支援もあった。
新井監督が就任してからはさらに、「ウチは、オールウェルカムだから、見に来てくれる人は自由にどうぞという感じですよ」と言うように、グラウンド脇の出入り口も常時開放している。こうして地域の人も出入りしやすい環境も設けている。
また、そんな土地柄やフレンドリーさもあって、選手たちも兄弟での入部が続いているというケースが多いのも特徴だ。兄弟で同じチームで継続していくということは、親としても、学校に対する印象が悪くないということの証でもある。チームの特徴や良さが語り継がれているということにもなっているということの表れでもあるといえよう。
兄が5年上にいて、その兄は現在、トレーナーのアシスタントとして学校にも出入りしているという中山雄仁君は、「中学生の時に兄の試合を見に行った時に、明るくて元気なチームだし、自分も是非、ここでやってみたいと思った」というのが市立川越を目指した動機だった。新チームでは主に一塁手としての役割が多くなるというが、「自分としては声を出して、チームを引っ張っていくのが役割だと思っている」ということで、より積極的に元気のよさを示していきたいという。
[page_break:OBの縁、地域の応援も力にかえて]OBの縁、地域の応援も力にかえて
左から古賀功汰、中山雄仁、高橋翔太
姉がこの春に卒業していったマネージャーだったという高橋翔太君は、新チームでは打順としては4番で、投手としては終盤に抑えとして外野からマウンドに立つケースが増えていきそうな存在だ。「姉からは、そんなに野球部の話を聞いたことはなかったんですけれども、試合は見ていました。それで、ここでやってみようという気持ちになりました」
地域の人たちから、多く声を掛けられることも、選手たちの励みになっているようだ。
遊撃手でリードオフマンでとして攻守において、チームの中心選手として期待されている古賀功汰君は、「公立校で、私学に勝てて甲子園へ行ける学校としてはここしかないかなと思った」という思いで市立川越進学を決めた。チームの雰囲気に関しては、「OBの方や、地元の人からもよく声を掛けられますし、アドバイスをいただくこともあります。そうしたことも参考になるし、励みにもなります」と、地場に根付いた学校という伝統を継承していく思いも強い。
そんな古賀君は、新チームでの自分の役割に関してはこう言っている。
「自分は、足があると思っているので、塁に出てかき回していくということも大事だと思とています。チームとしては、やはり秋は守りが大事なので、もっと守りの精度を高めていかなくてはいけないと思う」
2014(平成26)年に市立川越が埼玉大会決勝に進出したことも古賀君にとっては、強く印象に残っていたという。その時のチームに、少しでも近づいていきたいという思いで練習に取り組んでいる。
「どこの学校もそうだと思うけれども、今年のチームはスタートが遅れているので、その分チームとしての伸びしろは大きいと思うよ。だから、逆にウチなんかも、案外チャンスがあるんじゃないかと思っているんだけれどもね」
新井監督も、今の状況の中で、どうやってチーム力を上げていくのかということに取り組みながらも少しずつチームとしてのまとまりを作っていこうと考えている。
(取材=手束 仁)
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