東東京で台頭した新勢力・共栄学園。「終盤の強さ」を携えて夏は大物食い目指す
近年、東京で新進気鋭のチームとして注目を浴びるのが共栄学園だ。
2017年の第99回全国高校野球選手権東東京大会ではベスト8に進出し、昨年の秋季東京都大会でもベスト8に進出。2回戦では成立学園、3回戦では堀越を撃破するなど、着実に実績を積んでいる。
原田健輔監督も「予想以上に多くの部員がいて期待も大きい世代」と話す今年のチームだが、夏への思いに迫った。
秋はベスト8進出も大きな課題にぶつかる
昨秋はベスト8に進出した共栄学園
今年の3年生の選手たちは、3年前の夏の選手権東東京大会ベスト8を見て、共栄学園への進学を決めた選手たちだ。
エースの清水一眞や主将の岩元大威といった主力選手は、口を揃えて「ここなら上を目指せると思った」と話し、上位進出を目指して30名を超える選手たちが入部。
岩元や清水、そして堤桂介といった選手が1年時から実戦経験を積み、新チーム結成時から多くの選手が手応えを掴んでいた。
「一つ上の代から出ている選手が多く、秋は頑張れば上位までいけるなと感じていました。
夏の練習試合でも経験のある選手が中心となって戦い、勢いがあったと思います」(エース・清水)
実際、秋季大会では選手たちはしっかりと実力を発揮し、ベスト8まで進出する。
ブロック予選を突破し、東京都大会1回戦でも都立南平を8対1で下すと、2回戦では甲子園出場実績もある成立学園を12対2と圧倒する。
シード権を懸けた3回戦では、実力校の堀越を相手に序盤から優位に試合を進め、4対2と接戦をものにした。
原田監督の話を聞く選手たち
2017年夏以来となるベスト8に進出し、躍進の秋となった共栄学園だが、それでも原田監督は「まだ冷静に戦うことができていない」と厳しい口調だ。
というのも、準々決勝の都立城東戦での負け方が、あまりにも悔いの残るものであったからだ。
準々決勝の都立城東戦は、4点の先行を許す苦しい展開であったが、8回裏の集中打で共栄学園は一気に同点に追いつく。誰もが逆転勝利を確信する追い上げであったが、その直後の9回表に2本のタイムリーであっさり3点を勝ち越され、共栄学園は4対7で敗戦。
原田監督は、大会で勝ち進む中での経験値に差があったと反省する。
「あの試合が、この代の全てだなと思いました。それまでの試合はすべて先制点を挙げて勝ってきたのですが、準々決勝では先制点を取られてしまい焦ってしました。
終盤に相手投手が変わったところに追いつきましたが、そこでまた浮足立ってしまったように思います。
最後の最後まで、試合が終わるまでは冷静に戦っていきたいなと学んだ試合でした」
終盤に試合をひっくり返す力強さを求めて
エースの清水一眞
準々決勝での敗戦を経て原田監督は、冬場のトレーニングでは体力、筋力の向上以上に、精神的な成長を選手に求めた。
目指したのは、劣勢の場面でも最後までに冷静に戦い、終盤に試合をひっくり返すことができるチームだ。
「秋に負けたことを教訓に、終盤の3イニングで3点差で負けていてもひっくり返せるチームになろうと話しました。
慌てない冷静さを保って、試合が終わるまで諦めずに戦えるチームを目指して、そしてそれを野球以外の部分でも意識して、野球に繋げていこうと言ってきました」
また共栄学園の練習では、ウォーミングアップでの入念な準備が非常に印象的であった。
10分近く時間を懸けてじっくりと股関節の柔軟を行い、またキャッチボールを行う際にも肩甲骨のストレッチや半身でのスローイング、ステップを交えたスローを行い、様々な動きをアップの中で取り入れている。
細部へのこだわりを感じる練習であるが、これについて岩元主将は次のように説明する。
股割りの様子
「冬の間に腰を痛める選手が多くいたので、股関節を柔らかくして怪我をしない体づくりをするために股関節の柔軟に時間を取っています。
またキャッチボールの前も、10種類ほどの動きがあるのですが、肩甲骨を使ってしっかり投げれるようにしたり、肩周りの柔軟性を養うことを目的にしています」
終盤に強い精神的な強さと、練習前の徹底した準備で虎視眈々と上位進出を狙う共栄学園。
東東京大会では岩倉や二松学舎大附、都立小山台など、強豪がひしめくブロックに入ったが、選手たちには気負いも焦りもない。
岩元主将が「秋は悔しい思いをしたので、一戦一戦戦って成長を見せることができる大会にしたい」と語れば、エースの清水も「まずは初戦、そして2回戦で勝つことを考えていき、もしかすると3回戦では(2年前の秋に敗れた)二松学舎大附と対戦する可能性もあります。その時は絶対に勝ちたいです」と強い意気込みを口にする。
二松学舎大附だけでなく、関東一や帝京など、長年強豪校に揺らぎがない東東京。
その中で新たに台頭した新勢力・共栄学園が、この夏どんな戦いを見せるのか注目だ。
(取材=栗崎祐太朗)
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