目次

[1]秋の躍進を生んだ徹底力
[2]交流試合の話を聞いて鳥肌が止まらなかった

 「自分の中では打倒・健大高崎、打倒・前橋育英とずっと考えていました。そこを倒さないと甲子園は絶対無理だと思っていたので」

 今秋のドラフト候補にも名前が挙がる、桐生第一の速球派右腕・蓼原 慎仁は力のこもった口調でそう語った。
 近年は、健大高崎前橋育英の「2強」を前に桐生第一は後塵を拝していたが、昨年は秋季群馬大会を13年ぶりに制して、秋季関東大会でもベスト4に進出。「2強時代」の終止符を強く印象づけた。

 選抜甲子園の中止を経て、チームは今どんな心境で夏に向かっているのだろうか。

秋の躍進を生んだ徹底力


 「正直、今年はちょっと厳しいなと思っていました。攻撃では機動力を使っていきたいなと思っていましたが、なかなかハマらず厳しい船出でしたね」

 昨秋は大きく躍進した桐生第一だが、新チーム結成当初は勝ち進むイメージはなかなか持てなかったと振り返る今泉壮介監督。力のある選手も少なく、チームとしても徹底力を欠いており、右腕の蓼原も秋季大会の序盤は苦戦が続いたと明かす。

 「秋季大会が始まった時は、本当に力が無くて勝てないチームでした。監督からは、徹底することの大切さを言われ続けて、とても苦しい時期でした」

 徹底すること。
 夏から秋にかけて、今泉監督が何度も言い続けてきた言葉だ。

 例え個々の能力が劣っていても、一人一人が自分の役割を徹底することでチームとして大きな力を発揮することができる。そのことを選手たちが理解できれば、必ず勝ち進んでいけると今泉監督は信じていた。



提携するジムでTRXを行う選手たち

 「個々の能力はなかったのですが、逆に能力を活かして形にとらわれず選手に合った作戦でいこうと考えました。そこをしっかりと選手も理解でき始めたことが、勝ち進むことができた要因かなと思っています」

 今泉監督の指導を受けて、主将の廣瀬 智也も徹底力の向上をチームメイトに呼びかけ続けた。

 「一人一人の役割、例えばバントする選手はバントする、チャンスでランナーを還す役割の選手はしっかり返す、そういった一人一人の役割をしっかり徹底してやっていこうと自分もみんなに言い続けました。言われたことを徹底することができたことが、秋に勝てた一番の要因だったと思います」

 元々、投手陣は速球派の蓼原、技巧派左腕の宮下 宝と力のある投手が2枚いた。
 打線が機能し始めたことで投打が噛み合うようになり、徐々にチームの状態は徐々に上がっていった。

 迎えた決勝では、県内で夏4連覇を果たしていた前橋育英を4対1で下して、13年ぶりに秋季群馬県大会を優勝。秋季関東大会でもベスト4に進出して、「徹底できるチーム」を見事体現してみせたのだった。