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9年ぶりの甲子園を狙う帝京。復活の予兆を見せた裏側に迫る

2020.04.04

 昨年、9年ぶりの都大会決勝進出を決めた帝京。惜しくもセンバツ出場を逃したとはいえ、無事に開幕する状況になれば、優勝候補に上がるチームであることは間違いない。まだ活気ある練習をしていた時、前田三夫監督、選手たちは何を語ったのか。

主将の加田の存在がチームを変えた

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加田拓哉主将(帝京)

 毎年、甲子園出場を狙える位置にあり、1年間を過ごす帝京。惜しい戦いが続いているが、昨秋の戦いぶりは甲子園を狙えると思わせる戦いだった。まずそれができたのは、新チーム始まってから改革が大きい。

 前チームは一発を打てる選手がいなかったため、守備中心のチームを形成した帝京。しかし夏では完封負けを喫し、改めて打撃を見直した。
 前田監督は「選手の理解度に合わせて、感覚的に指導したり、動作を踏み込んで指導したり、いろいろ行いました」
 また主将に加田拓哉が就任したことも大きかった。中学時代から主将を務めていたが、チームを引っ張ることは嫌いだという。
「なるべく避けたかったです。けど…やるからには中途半端は嫌なのでチームを引っ張ろうと思いました」
 まず大阪出身の加田が帝京に入学して感じたのは、選手の気質がおとなしく、加田から言わせれば「男らしくない」と感じたようだ。それでも何かあれば選手に強く指摘するようにして、馴れ合いは許さなかった。そういう取り組みにより、練習から緊張感が漂うようになった。

 前田監督は加田のキャプテンシーを高く評価している。
「良い働きをしています。今まで加田みたいなキャプテンはなかなかいません。
悪いものは悪いと、そのメリハリがついていますし、最近の主将では一番。甲子園に出場した時の主将を見ているようです。
 選手の行動を変えるには、指導者よりも同級生からの指摘が一番だと思うんです。だけれど気持ちが優しいのか、傷つくことを恐れて、指摘はなかなか難しい。加田はそれができる。私が言いたいことは全部いってくれますし、頼もしいですよ。今までの主将は悪いわけではありませんが、どこか物足りなさがあった。加田は本当にいいです」

 数多くの学校の主将を接してきたが、加田はやんちゃな気質が見えて、衝突も恐れない強いところも持っている。嫌われ役を率先してできる加田の存在が帝京を変えたのだった。

[page_break:秋の気持ちを忘れずに練習、夏の大会に取り組んでほしい]

秋の気持ちを忘れずに練習、夏の大会に取り組んでほしい

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トレーニング中の帝京の選手

 昨秋は関東一日大三東海大菅生など全国レベルの強豪校が入ったブロックに入ったが、これまで取り組んできた打撃強化を実を結ぶ。

一次予選 代表決定戦 聖パウロ学園 7vs0
本塁打:武者
都大会1回戦 法政大高 15vs3
本塁打:加田、武藤
都大会2回戦 早大学院 7vs0
本塁打:新垣、 御代川
都大会3回戦 関東一 9vs7
本塁打:小松
都大会準々決勝 日大三 2vs1
都大会準決勝 創価 3vs2
本塁打:武者、加田
都大会決勝 国士舘 0vs6

惜しくも決勝戦では完封負けを喫したが、秋6試合で合計8本塁打。特に準決勝の創価戦では都内屈指の好投手・森畑侑大から2本塁打を放ったことは大きな価値がある。決勝戦の国士舘戦の完封負けについて前田監督は「加田を中心に意識高く取り組んでいたので、任せていました。ただ準決勝と決勝とでは試合が始まるまでの流れがいつもと違いますし、試合前から緊張しすぎていましたね。いわゆる硬い動きのまま試合が終わってしまいました。あれは監督の責任です」と悔やんだ。

 大会が終わって前田監督は「センバツはない」と選手に伝え、夏を見据えて取り組んできた。加田はこの冬のテーマとして「引き出しを増やす」ことだった。
「一昨年と違い全国が見えてきましたし、練習のモチベーションは格段に違いました。全国を意識すると、色々と足りないところがあり、チームとして引き出しを増やすことを心がけました」

 野手は打撃、守備などそれぞれの課題に向き合い、投手は変化球を増やしたり、球速を高めたりなど、スキルアップに努めた。

 このオフは成果が見えた打撃陣に加えて投手陣の底上げも不可欠だった。秋季大会で粘り強い投球を続けた大型左腕・田代涼太、安定感抜群の柳沼勇輝、140キロ近い速球を投げ込む武者倫太郎の新3年生の3人が投手陣の中心。新2年の187センチの大型右腕・植草 翔太、130キロ後半の速球を投げ込む野宮夢咲など楽しみな逸材が多いという。

 前田監督としては春季大会を通じて、新2年の投手が戦力として出てくることを期待していたが、大会が中止となり、まずは活動再開を待つ状況だ。

 取材した1月、前田監督は選手たちの前向きに取り組む姿勢を評価していた。
「練習においても走り込み、トレーニングなどやらせていますけど、自ら前向きに取り組んでいますし、身体が大きくなっている様子も伺えます。秋の大会は頑張りましたし、秋での試合での姿勢は本当に良かったので、あの気持ちを忘れずにいったら、ある程度やれると思います」

 

 ぜひ無事に活動と大会が開催できる状況にまでに収束したときは、秋から成長した姿を見せてほしい。

(文・河嶋宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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