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意外と見落とされがちな投手のフィールディング。プロ志望投手必見の興南の超効率的な守備練習!【後編】

2020.03.11

 夏にかけて、急速に力をつける興南。そこには計画的な取り組みが成長につながっていた。後編では、興南のウリである緻密な守備を築き上げる効率的な内容について迫っていきます。

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一瞬の気のゆるみを逃さない興南の練習

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マウンドに3人が揃って守備練習をする興南

 現在、練習時間を短縮している興南。それだけに中身の濃い、一瞬たりとも気の抜けないグラウンドとなっている。

 アップが終わったナインが次の練習に移ろうとしたときだった。我喜屋優監督は、ナインの僅かな隙を逃さない。「もっと早く(次の動作に移るよう)出来るだろ!」前もって、全員がシューズをどこに置いておいたら効率がいいか。それを話してみんなを元に戻し、もう一度次の動作に移る直前だった。

 「誰だ!シューズを石の上に置いているヤツは!」親から買ってもらったスパイク。実際、石の上に置いただけでは歯が欠けることはないだろう。しかし、そういう心構えではチャレンジャーとして臨むべくもない。全員に緊張感が漂うほどの凄みが、我喜屋優監督から溢れていた。

 ただ緊張感があるだけではない。それは走塁練習のこと。我喜屋監督が両手を広げ、腕を下ろす具合によってバックかゴーかの走塁。部員数の多い興南は、レフト線に13人が並び一斉に練習。中には監督に引っ掛けられて遅れる部員も出たが。
 「しっかり!〇〇(名前)一人で行け行け!(笑)」

 一人の選手を周りが囲みながら掛け声を掛けるシーンと言えば想像がつくだろうか?我喜屋優監督も乗る。その一人に対し両腕を広げる。上手くバックかゴーが出来てのち、最後のスライディングで、周りから「ナイス!」と拍手が起こっていた。

[page_break:魂知和野球に込められた超効率的練習]

魂知和野球に込められた超効率的練習

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キャッチボールをする興南の選手

 守備練習では「知恵と工夫の興南」が垣間見られる。まずキャッチボールからすぐさまに持ち替えたりするなど、非常に実戦的な内容。

 そしてノックでは数多くのボールを受けるために、ダイヤモンドを最大限に使う。捕手側に我喜屋優監督と砂川太副部長が立つ。一・二塁間を監督が、三遊間を副部長が務め交互にノック。さらにもう一人のノッカーを二塁ベースに回し、投手陣のノックと、ほぼ同時に三箇所のバックホーム練習が行われた。余りの投手陣はレフト線際でこれまたノックを受ける。その奥、レフトポール際からは、真栄田聡部長が外野手にノックをしている。

 また投内連携では、さらに効率の良さが出ていた。通常は転がった打球に対して、一塁、二塁、三塁へと投げていくが、興南の場合、マウンド上に投手が3人集まり、ホーム、二塁ベース、三塁ベースに立った選手がボールを転がし、通常の投内連携のように打球を処理する。

 たとえば二塁ベース方向に向かってダッシュした選手が打球を処理した場合、通常ならば三塁へ投げる動きが一塁ベースへ投げることになる。

 さらにマウンド上に4人集まって、勢いが弱い打球に対して捕球し、そのままベース方向に向かってグラブトス。これはスクイズ処理の練習だ。さらにベースカバーの練習も同時に3人行う。これなら限られた短い時間でも中身の濃い練習となる。

 興南の投手といえば、島袋を筆頭にフィールディングが素晴らしい投手は多い。あまり語られていないが、NPBのスカウト、NPBのコーチは投手の守備力をかなり重視しており、そこで即戦力なのか、否かを判断している。投手の守備力を鍛えるには絶好の練習といっていいだろう。
 その言葉を見て、思わず言葉が漏れた。「監督、素晴らしい練習です。これなら大所帯のチームも管理出来ますね。」

 我喜屋優監督「まだまだ。指導者とは、寝ても覚めても、もっと良い練習方法が無いかどうかを探るものはだよ。」

 興南独特の言葉である「魂知和」(こん・ち・わ)。魂の野球、知的な野球、そして仲間との和。指揮官自らが魂知和の先頭に立ち、月日を経たナインが魂知和野球を極めていく。興南の強さがここにある。

(取材=當山 雅道/構成=河嶋 宗一

 

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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